そこは水の中だった。見えるものすべてが、ぼんやりと輪郭を滲ませて、遠いのか近いのか、よくわからない。触ろうと手を延ばしても、その感触は何かに隔てられたかのように曖昧で、聞こえてくる音もあやふやだった。私の身体は芯を定めることが出来ず、一歩を踏み出す足元さえ不確かで、息をすることも苦しかった。

 正真正銘、そこは水の中だ。仄暗い夜の水底。光は無いわけではないけどとても遠くて、どんなに藻掻いても手を延ばしても、届くとは思えない。そこに私は居た。

 

 お願い、誰か、私に触って。こんなに曖昧じゃなく、もっとくっきりと、はっきりと、感触が残るように。私に聞こえる声で喋って。手を取って、手を引いて、ここから連れ出して――

 

 結婚したのは、27歳の4月だった。話自体はその半年くらい前からあって、書類を出して引っ越すだけのことは、何時でも可能だったんだけど、当時私は、あるファッション雑誌と年間の専属契約をしていて、それが有効なうちは、独身で居なくてはいけなかったから。それで、年度が改まり、契約が切れたので結婚した。

 その生活は半年しか持たず、私が28歳になる前に、夫は家を出てしまった。離婚が成立したのは、秋の終りだった。

 浮気をされたとか、暴力を振るわれたとか。そういう、傍目に分り易い事情があったわけではない。ただ、彼は私のことを分らないと言い、耐え難そうにこちらを見ていた。でも私は応えることが出来なくて、罵り合いはやがて冷え切り、重苦しい沈黙が辛くなって、関係が破綻した。

 破綻した?いいや、そうじゃない。最初から、本当は、関係なんて何も無かった。彼のことを好きだったか、と訊かれたら、肯定出来ない。どんな人だった、と問われても、もう思い出せない。それどころじゃない。顔も、名前も、何もかも――もう、記憶の中から消えようとしている。

 確かに、彼は私のことを好きだと言ってくれたのに。半年とはいえ一緒に暮らしていた、夫であり初めての男性だったのに――道ですれ違っても、きっともう気がつくことは無いだろう。

 私にとってはそういう人だった。

 

 結婚したい、と言った時、事務所の人間たちは、驚きもしたが、しめたと手を打ってもくれた。確かに私は、有名なファッション雑誌の専属モデルとして、寝る暇も無いほど多忙な日々を送っていたけれど、それは永遠に続けられる仕事ではない。雑誌には対象年齢があり、私は、まだ若干余裕はあるとはいえ、そろそろ読者層から外れることを想定しなければいけない年齢だったから。その後、単純にもうすこし上の年代向けの雑誌に移行するか、それとも別方向を向くのか――考える時期にはなっていた。

 ともかくこれで、私は強制的に、独身女性を対象としている、その雑誌の専属からは外れる。その代り、ミセス向けの雑誌に顔を出せるようになるし、先々子供を持つことがあれば、ママタレントとしての仕事もある。下手な恋愛は商品価値を下げるけれど、上手な結婚は仕事を広げるチャンスと考えられていた。

 相手が芸能人ではなく、広告写真のカメラマンだったという事実も、スキャンダルにはならない、賢い選択だと思われたようだった。

 それなのに、説明しても誰にも分って貰えないような理由で、あっという間に離婚してしまった私に、事務所は心底、愛想を尽かせたようだった。せっかく、しばらくはゆっくり新しい生活に慣れさせようと、気を使って仕事をセーブして、年明け辺りから、新しいジャンルの仕事を死ぬほど用意していたのに。

 イメージが傷ついたという理由で、それらの話はあらかた無かったことになり、私は療養という名目で、暮れまで家に籠もっていた。独身時代から住んでいた、参宮橋のマンションは、間取りに余裕があったので、一時は夫婦の家になったのだけど、結局また、私独りのものになった。

 薄暗い部屋の中は、いつもシンと静まり返って、水の底に沈んだようだった。

 あまりに寂しくて買ってきた、鉢植えのクリスマスローズは、まるでその部屋の静けさに耐えかねたように、1週間ほどで枯れてしまった。枯れてしまってから、殆ど日に当ててやらなかったことを思い出した。

 

 久しぶりに家を出たのは、12月の中過ぎだった。年明けから契約することになっている、誰も知らないような小さなブランドの忘年会に、顔を出して来いと言われた。何でも、私の離婚が表沙汰になった直後に「今なら、河村あすかを買い叩けるかなと思って」と、先方から事務所にコンタクトしてきたらしい。

「本当なら、貴女はこんな、小さな仕事をするモデルじゃないのよ」

マネージャーは不愉快そうにそう言ったが、ほかに無いのだから仕方ない。多分彼女は言外に、こんなに落ちぶれて、という、私に対する苦情を言っていたのだ。

 忘年会の会場は、新宿の中華料理店で、小さな会社だというのに、けっこうな人数が集まっていた。

「河村あすかさんですよね。すみませんね、こんな、年末の慌しい時に来ていただいて。『beauty : stupid』の佐藤です」

デザイナーの男性に挨拶をされた時、もしかしたらこの人は、とても商売が下手なんじゃないかな、と思った。何しろ彼は、自らがブランドの広告塔である、という自覚もへったくれも無い、どこにでも売っていそうなスーツを着ていたから。

「これは、イヤミじゃなくて言いますけど、河村さんと仕事が出来て光栄です。小さな会社ですから、色々不便をかけますけど、いい仕事をしましょう」

推定商売下手のデザイナーは、どうやら推定じゃなくて確定らしい、と思わせる実直さで、余計なことまで言いながら、手を差し伸べてくれた。握ったその手の体温を、私は感じることが出来なかったけれど、彼はそんなこと、思いもよらなかっただろう。私を連れて店内を回り、スタッフのみんなに紹介してくれた。

 そうして店内をぐるっと一周した時だった。ドアが開いて、また新しいゲストが入ってきた。真っ黒な長髪の男の子。まだ若い。22,3歳だろうか。着ている黒いスーツは、このブランドのものだった。ただ立たせているだけで、立派なディスプレイになれる、綺麗な子だった。

「ああ、来た来た。紹介します。うちで衣装を作ってくれてる、Devil May CareのSIN君。SIN、こちら、来年からイメージキャラクターをやって下さる、モデルの河村あすかさん」

SINと呼ばれた男の子は、彫りの深いシャープな顔に、これといった表情を浮かべることもないままに、どうも、と無愛想な挨拶をした。

 音楽には疎い方だけど、事前に渡された資料の中に、このブランドがロックバンドのDevil May Careに衣装を提供しているという記述があったのは覚えていた。私は彼らの音楽を聴いたことは無いけれど、去年あたりのデビューで、一時、爆発的に売れていたことは知っている。

「今日は、他のメンバーはどうしたの?」

「新曲のキャンペーンで、交代で地方に出てるんで。今、俺しか都内に居ないんですよ」

デザイナーの佐藤さんは、慣れた調子で、その極度に無愛想な男の子をあしらっていた。でも、その子の発する鋭すぎる空気感は、明らかに、場において異質だった。

 多分そのせいだ。その夜、気がつくと、私の目は彼を追いかけていた。何故なら私も、彼とは別の意味で異質で、その場に融けることの出来ない存在だったから。小さな会社のものらしい、穏やかで家庭的な空気が、きっとそこには流れていたんだろうけれど、私は感じなかったから――だから、その場でもう1人だけ、その空気に和していない、彼の存在に敏感だった。

 彼は、驚くくらい早いピッチで、お酒を飲み続けていた。多分、碌に食べないまま。面白くも無い、という顔をして、時々話しかけてくるスタッフたちに、適当な返事をしながら。そういうお酒の飲み方をする人を、1人だけ知っていた。別れた夫が、別れる直前に、時々そうしていた。それを思い出して、自分でもすこし驚いた。まだあの人のことを、すこしは記憶していた、という現実に。でも、多分それは、今、目の前に居る男の子と、あの時のあの人が、似たような辛さで繋がっているからだ。遣り場の無い、苛立ちと怒り。とても若い感情ではあったけど、目の前の男の子も、その同じものを、背負っているように見えた。

 「そういう飲み方をすると、悪酔いするわよ」

気がつけば私は、SINと呼ばれた男の子の隣に腰掛けていた。

「何が辛くて、そんなに飲むの」

「…別に」

そんな私のお節介を、彼は、ただ一言で却下する。そしてまた、グラスを空けた。

「美味しいの?」

「美味しいですよ」

それなのに、まだ話しかけてしまったのは、何故なのか。当然のように、つっけんどんに突き返される。私は、自分でもグラスを傾けながら、次の言葉を捜したけれど、とうとう何も見つからなかった。グラスに残った杏露酒は妙に甘くて、喉にすこし、べたついた感触を残した。

 

 一次会が終り、二次会はどうしようか、という話になった時に、数人のスタッフが、自分たちはこれで、と言ったので、私もそこでお暇させて貰うことにした。

「事務所の方かどなたか、迎えに来てくれます?」

「いえ、自宅までそんなに遠くないですから。タクシーを呼びます」

佐藤さんに、そういう当たり前の気遣いをして貰えたのが、妙に嬉しかった。とは言ってもその嬉しさは、ずっと昔に感じていた同じ感情よりは、ずっと曖昧でぼやけたものに過ぎないけれど。でも、ゼロではなくて、確かにあった。

 それから、帰宅するスタッフたちは駅へと向かい、二次会組は、再び夜の街へ。最後に残った私が、タクシー乗り場まで行こうとすると――もう1人だけ、そこに残っている人に気がついた。あの若い男の子だった。

「貴方も帰るの?」

覗き込んだその顔は、夜目にもはっきりと蒼白で、明らかな飲み過ぎだった。

「家は何処なの。私、タクシーを呼ぶけど、そんなに遠くないなら、乗せていこうか。それとも誰かを待っているの?」

彼は何も言わない。ただ、凄く寒そうに、マフラーに顔を埋めて、それで一緒に、表情を隠していた。だけど、闇に溶けてしまいそうなその姿は、見ているこっちが辛くなるくらい寒そうで、とても放っておく気にはなれない。

「何とか言いなさいよ。じゃないと私も帰れない」

そこまで言った時、彼はやっと、マフラーから顔を上げた。

「何で、そんなにお節介なんですか」

白くなった唇が、精一杯の虚勢を吐き出す。

「立っているのもやっとなくせに、まだ強がるのね。でも、倒れそうなのは見れば分るから」

だけど、その必死な見栄には、覚えがある。デビューして間が無い頃、私もそうだった。誰にも食い殺されないように、壁を作ることに懸命だった時期があった。

 開かない扉を前にして、コツはただひとつ、辛抱強く叩いてみること。ただし、力は込めないで。間合いも意外と重要だ。延々叩き続けても、効果は薄い。こういうことは、業界に入るずっと前、客商売をしていた実家で覚えた。

「それで、」

すこしだけ間を取ってから、もう一度、尋ねてみる。

「家は何処」

「…東北沢」

ではそれは、私の家からはすこし先へ行くことになる。送っていけと言われたら、もちろん不可能な距離ではないにしても。

「だけど、帰りたくなくて」

それから彼は、ぽつりとそう呟いた。その夜交わした短い会話の中で、やっと見つけた、上っ面でない言葉が、それだった。

「最低な気分の夜に、独りの部屋に帰るのって、最悪でしょ」

そして、宴会の後とは思えない台詞を、彼は吐いたけど、最低な気分なのは、宴会の前から、多分そうだったんだろう。そういう飲み方だ、あれは。

「そうね…それなのに、二軒目に行く気力も無いなんて、なお最悪ね」

10時の新宿は、まだ明るいけど十分に寒くもあって、立ち尽くした2人の間には、水に似た静かな空気が流れていた。

「それじゃ、うちにいらっしゃい。参宮橋だから、終電にはまだちょっと余裕があるでしょ。お茶飲んでいきなさいよ」

唐突に、私はそう言って、彼を驚かせた。この時間帯の提案としては、確かに、かなり大胆だと思う。案の定、彼は目を丸くして、訝し気にこちらを見返した。

「何で、そういう展開になるんですか」

腑抜けてしまうと、声にはまだ、意外な幼さが残っている。

「さっき貴方が言ったじゃない。私も独りで最悪なの」

口をつく言葉はさらさらと滑らかで、まるで自分で言っているのじゃないみたいだった。それよりは、嫌に成る程繰り返し読んだ台本を、知らない間に暗誦しているみたいな調子だ。理屈なんか無い。ただ、そうしてしまっただけ。

 彼は、しばらく呆気に取られた顔をしていたけど、やがてゆっくりと頷くと、意外と悪びれた様子も無く、私についてきた。

 

 水底の部屋に人が入るのは、かなり久しぶりのことだった。けれども彼は、不思議なことに、クリスマスローズを枯らしてしまった部屋の静けさに、不思議なくらい馴染んでいて、リビングのソファに沈むと、濃く淹れた緑茶を黙って啜った。そして、ようやく寒さから解放された声で、半ば以上独り言のように呟いた。

「なるほど、これは最悪だな」と。

 その反応が面白かったので、何がそんなに最悪なのかしら、と訊くと、彼は即答で応えた。

「綺麗な部屋だから」

それでも私が、よくわからない、という顔をすると、彼は初めて、表情を和らげた。

「救いようもないくらい汚い部屋の方が、自分を貶て憐れむのには、向いてると思う。この部屋は綺麗に片付きすぎてて、隙が無いから…だから、逃げ込む場所も無い」

それは、正直言って私にはよく分らない理屈だったけど、夫が出て行った後、私が意固地になってこの部屋を掃除し、整理整頓したのは事実だった。それは、あの人の痕跡を消そうとか、そういう生易しい努力ではなくて、まるでただ自分を追い詰めるために、そうしているようだった。実際、そんなことをしなくても、私はあの人の顔なんて覚えていやしないのに。

一度磨き始めたら一分の曇りも許せず、磨ききった後は、汚してしまわないように神経を張り詰める。そうするだけで疲れてしまって、外へ出る気力は尽き果て、完璧に片付いた部屋の真ん中で、身動きが取れなくなった。

 ただ、そうしている間だけは、何も考えずに済んだから――私は一心不乱になって部屋を片付け、磨きたてて、牢獄を作り上げた。そしてそこに、いつしか水が溜まっていった。

「自分で自分を閉じ込めるために作った、丁寧な牢獄…そんな部屋に見えるんだけど」

そして、今しがた、初めてこの部屋に来たくせに、すらすらそんなことを喋る彼は、まるで最初からこの部屋に置いてあった家具のひとつのように、水底の景色に馴染んでいる。

「…なんで、そんなことが分るの」

「簡単だよ。俺の部屋もそうだから」

そう言って、彼は深い溜息をついた。

「帰るんじゃなくて、閉じ籠もるための部屋…作りこめば作りこんだぶんだけ出られなくなる。でも、出られなくなったら、もうお終いなんだ――」

 それから私は、しばらくの間彼の言葉の続きを待っていたんだけど、何も無かった。どうしたのかと思って顔を覗き込んだら、彼は、子供のような顔をして寝ていた。そうやって見ると、その顔立ちにはまだ、幾分の少年ぽさが残っている。そういえば、まだ若い子なんだったな、と思った。

 水底には、静かな空気が満ちている。牢獄と呼ばれたその場所に、今は2人、囚われ人の私と、闖入者である彼が居た。起こして帰すことは簡単だったけれど、その寝顔があまりに穏やかだったので、そうはしないで、毛布をかけてやった。

 夜の孤独のどん底を、彼の存在が、ほんのすこしだけ薄めてくれた。

 

 久しぶりに、ゆったりと眠りの底に沈むことが出来た翌朝、目が覚めたのは6時だった。結局あの後、私自身もすることが無くて早々に横になったので、随分、人間らしい時間に寝て起きたことになる。リビングのソファでは、彼が昨日と同じ姿勢のままで眠っていた。今日、どんなスケジュールを組んでいるか分らないから、早めに起こした方がいいだろう。

 そう思いながら、とりあえず朝食の用意をしていたら、後ろから声をかけられた。

「味噌汁に何入れたの」

手元のことをしていたから、でもあるんだけど、足音も無く近寄られたので、声を聞くまでまったく気がつかなくて、かなり驚いた。

「…おはよう」

「おはようございます」

とりあえず挨拶をすると、返す声からはもう、アルコールの臭いはしなかった。

「二日酔い、してない?胃は動くかしら」

「…多分」

寝起きにしてははっきりした声で、彼は言い、まな板の上を覗き込むと、思い切り顔を顰めた。

「豆腐、キライなんだけどな」

その、思い切り幼い響きの一言に、私は思わず吹き出してしまった。

「お豆腐の苦手な人って、珍しいわね。あと、ネギとワカメとお揚げも入るけど、大丈夫?」

「…海草もイヤだ」

そう言った横顔は、昨晩夜の静けさを見つめていた、妙に大人びた眼差しとはまったく違った、子供っぽい表情を浮かべている。

「好き嫌い、多い方なの?」

「うん、かなり多い」

そう言ってから、しまった、子供みたいなこと言っちゃった、という感じで、彼は顔を覆った。

「とりあえず、シャワー使ってきたら。そこの奥の突き当たりだから」

その様子が妙に可愛らしかったんだけど、一生懸命格好をつけているのも知っていたから、気の毒になってしまって、とりあえずそう言ってみた。

 さしあたって彼は、バスルームで昨日の汗とアルコールの残りを落とした後、かなり苦労して、私が作った朝食を食べてくれた。豆腐よりはワカメの方が駄目だったと見えて、味噌汁の中からワカメを一切れ一切れつまみ出しては、お皿の隅に積み上げている様子は、本当に子供同然で、私は笑いを堪えるのに必死だったんだけど。

 そうして彼が出て行ったのは、8時過ぎのことだった。仕事は昼からだけど、一度家に帰るから、と言って。

「迷惑かけてすいませんでした」

最後になって、彼はそんな、しおらしいことを言った。朝の光の下で見るその顔は、まだ本当に若くて、何処かに甘さを残している感じがした。

「気にしないで。お蔭で昨夜は最悪にならずに済んだし、久しぶりに人と朝ご飯を食べられたし。またいらっしゃい」

そんな彼の若さに触れていると、何だか自分が急におばさんになったような気がして、内心ですこし焦ってしまった。そして、また何処かで刷り込まれた台詞を喋るみたいに、自動的にそう言っていた。

 彼は、すこし照れたような、ばつの悪い顔をして、ほんのかすかに笑うと、頭を下げて、帰っていった。

 再び戻った水底の部屋は、朝の光に照らされていたのに、がらんと広くて、やはり丁寧な牢獄のようだった。

 その言葉があまりにリアルで不気味だったので、枯らしてしまったらその時はその時、と思い切って、山茶花を買ってきた。玄関のチェストの上に活けながら思ったのは、花を絶やしたことの無い部屋だったのに、随分長い間、それを忘れていた、ということだった。


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