閉じた瞼の裏に、無数の光が明滅するのが見えた。

天翔ける時間は、長かったとも、短かったとも言えるだろう。すべては感覚的なもので、実際のところどうなのかは、分らないのだけれど。

「着いたよ」

まだ聞きなれない、掠れた声に促されて、目を開ける。そこは光溢れる森の中で、地上のそれとは違う鳥の声が、遠く近く聞こえる。樹木は決して密集しているわけではなく、遥か遠く上から光は降り注いで十分に明るいのだが、どんなに目を凝らしても、空らしきもの、太陽などは見えなかった。

 まず最初にしなければならないのは、ポップとメルルの間のテレパシーが通じるかどうか、確かめることだ。これが通じないとなったら、最初から計画を立て直さなければならないのだから。

 ポップは軽くひとつ頷くと、目を閉じて、いつものように呼びかけを心の奥に放った。

『メルル。メルル、聞こえるか?』

一瞬の間。

『ポップさん。無事に天界に辿り着いたんですね』

けれども返事は、決して待たせすぎなかった。互いに地上に居る時よりも、やや時間がかかってしまうのは、やはり時空を超えているからだろうか。

『ああ、誰一人迷子にならずに、ちゃんと着いたぜ。じゃあ、状況が変わったらまた連絡する』

『お気をつけて』

短い会話を終えて、開いた目の中に――ポップは、新たな人影を捉えた。

 光り零れ落ちるような金髪を足元まで垂らし、触れたら消えてしまいそうに白い肌と、真実を照らす月の鏡に似た、銀色の瞳。けれどもその面差しは柔らかで、知る人が見れば、ダイの母ソアラと似た印象を抱いたかもしれない。

「おかえりなさい、ダイ」

印象を裏切らない、穏やかな声音で、その女性は言った。どうやらこれが、ダイの言う天界の精霊セフィラのようだった。

「そして、ポップ、マァム、ヒュンケル――ようこそ、天界へ」

精霊セフィラは、違えることなくそれぞれの瞳を見据えながら、使徒たちの名を呼んだ。

 まずは、ダイからセフィラに、地上での顛末が語られる。するとセフィラは、深く頷いて、再びポップたち三人を見た。

「ダイから、すべてを聞いたのですね」

「ああ。この世界の秘密を、一通りな」

「ではもう一度、私の口から説明しましょう。それほど時間は取らせません」

柔和な印象に比して、セフィラの言葉運びは簡潔であり、何よりも理知的な印象を聞くものに与える。そして、その口からもう一度、ダイが昨晩教えたのと同じ、世界の成り立ちとその裏側に潜む悪意の存在が語られた。

 「魔神バルトロスを倒す力は、ダイが持つ竜の騎士の力、そして天界の秘宝である、人・魔・竜の三つのオーブです」

要するに、かつて神々が同じ光の下に生きることを願った、三つの種族の力を、束ねなければならないということだ。

 ならば、それは何処にとポップが言い募ろうとした時、セフィラはふと、表情を和らげて、彼の先走りを制した。そして、一同の一番奥へと視線を向ける。

「マァム」

銀の瞳が、曇った表情を照らし出す。そう、マァムは朝からずっと黙りこくったままで、天界へ来てからも俯き加減にしていた。気づいていないのはダイだけだろう。

「そう、貴女の心配ももっともですね。では、まず先にそれを解決しましょう。ヒュンケル、こちらへいらっしゃい」

セフィラは穏やかに微笑んで、ヒュンケルを手招いた。言われるままにヒュンケルが進み出ると、両腕を差し伸べて、掌をその胸に当てる。

「激しい戦いを切り抜けてきたのですね。もう大丈夫ですよ」

その言葉とともに、掌から光が溢れ、ゆっくりと広がって、ヒュンケルの全身を包んでいった。回復呪文の黄金の光ではなく、セフィラの瞳と同じ、銀色の光だ。

 まるで全身を血液が巡るように、光はヒュンケルの身体を一巡し、やがてゆっくりと薄れて、消えていった。ダイは、それが何であるか分っているようだが、ポップとマァムは、不安そうにヒュンケルの顔を覗き込む。そんな様子を、セフィラは微笑んで見ている。

「何が起こったかは、ヒュンケル自身が一番、よく分っているようですよ」

 当のヒュンケルはと言えば、驚いた時の癖で、切れ長の眼を見開いたまま、拳を何度も握ったりほどいたりしている。ややあって、注意深くゆっくりと、腕や脚を動かし――呆然と言った。

「痛みが、消えている…」

「本当に?!」

マァムの声は、殆ど悲鳴に近かった。

「では、これを」

そう言って、セフィラが差し出した手には、いつの間にか、銀色に光る槍が握られていた。まだ信じられないという顔ながら、ヒュンケルはその槍を受け取り、幾つかの型をこなして見せた。初歩的な動きだが、速さ、重さ、鋭さのすべてが、最高レベルで揃えられた、見事なものだった。到底今朝までの、傷ついた体の動きではない。それは間違いなく、二年前の戦いで、常に最も危険な位置に立ち続けた、熟練の戦士の動きだった。

 「…ヒュンケル?」

心配そうに、マァムがその顔を覗き込む。返ってきたのは、力強い微笑と頷き。

「大丈夫だ。実戦の勘を取り戻すには、多少時間がかかるかもしれんが…何の痛みも無い」

そうは言いつつも、二年ぶりに蘇った全盛期の力に、まだ慣れない様子は見て取れる。

「本当か!そいつぁ良かった。期待させて貰うぜ!」

力一杯にヒュンケルの背中を叩きながら、ポップが歓声を上げる。これも、今朝までは決してやってはいけないことだった。だが今、その背は、揺るがない。二年前と同じ、強い背中だ。時々、ものを背負い込みすぎながらも、決して折れることは無い。

「言われるまでも無い」

返した口元には、見慣れたふてぶてしい笑みが浮かんでいる。その表情、ヒムに言わせれば「オレは最強なんだよ」と書いてある顔が、ポップを安心させた。「噛み付き甲斐のある兄貴」の帰還は、彼にとって心底、嬉しいことだから。

 ヒュンケルは改めてセフィラの方に向き直ると、深々と頭を垂れた。

「感謝する」

「そうでなくては、今まで得てきた力はもちろん、これから手に入れる力も、使うことが出来ませんからね。礼には及びません」

これから手に入れる力、即ち、三つのオーブだ。

 重要ではあるが本筋から離れていた時間はあっという間に過ぎ去り、話題は速やかに本題に至る。セフィラが言うには、オーブはこの天界の、水晶の洞窟という場所に封印されているという。

「水晶の洞窟って、あそこ?」

するとダイが、素っ頓狂な声を上げた。

「行ったことがあるのか?」

「だって、おれ、ずっとそこで修行してたんだ」

ポップの問いかけに、ダイが釈然としない様子で答える。そんな二人に視線を投げかけられて、セフィラは悪戯っぽい表情で、言った。

「水晶の洞窟は、三つのオーブを封印する、天界唯一のダンジョンです。内部には、オーブを得ようとする者を試すために、様々なトラップやモンスターが配されています。でも、オーブに選ばれない者には、決して道が開くことは無い…永久に、堂々巡りを繰り返さなければなりません。でも、その環境が、修行にはぴったりでしょう?」

そしてセフィラは、森の奥を指差した。その示す先には、木立の切れ間があり、その更に向こうに、ぽっかりと口を広げる、洞窟があった。その名の通り、透き通った水晶で出来た洞窟――

「あれが、その入り口です。一見、一本道に見えますが、もしもオーブが招いたらなら、それぞれの前に、それぞれのオーブへと続く道が開かれるでしょう」

「…じゃあ、もし、開かれなかったら?」

その時、マァムの口から、酷く後ろ向きな言葉が零れた。ダイも、ポップも、そしてヒュンケルも、そのことがあまりにも意外で、一瞬、反応することが出来なかった。唯一セフィラだけが、穏やかに落ち着き払った表情を崩さない。

「大丈夫です、マァム。勇者の家庭教師は、決して誤った者を選ばない。そして、輝聖石の輝きを呼び覚ました姿を、私もちゃんと見てきました。貴女なら、心配要りませんよ」

「でも、レオナだって…」

マァムは更に言い募ろうとしたが、セフィラはそこでかぶりを振って、それ以上の言葉を制した。

「彼女はパプニカの女王。陣頭に立って戦うよりほかに、すべきことがあるのです。何よりも、マァム、行ってみれば分ります。もしも私を信じられないなら、貴女の師と、仲間たちと、愛する人と――何よりも、大魔王バーンとの戦いを生き抜いた、自分自身を信じなさい」

マァムは、まだ何か言いたそうにはしていたが、流石にそれ以上、何も言おうとはしなかった。

 決して時間に追われているわけではないが、無駄にしていい時間でもない。ポップの目が、洞窟の入り口を見据える。

「それじゃ、一丁やってくるぜ」

ごく軽く、けれども確かな力を込めて。そう言い切った十七歳の横顔は、きりりと引き締まって、随分大人びて見える。

「ねえセフィラ、おれはどうすればいいの?」

それにつられて、背筋を正したダイが、ほぼ正面にある、セフィラの顔を見る。

「おやおやダイ、貴方があそこですべきことは、もう終っているのですよ。みんなが待てないのですか?」

「うーん…みんなが頑張ってる時に、一人だけ何もしてないのは、何だか苦手だな…体力だって万全なんだし、もうちょっと修行してくるよ。おれも洞窟に入っていいでしょう?」

ダイらしい考え方というべきかのか、アバンの使徒らしい考え方というべきなのか。誰からとも無く、笑みが零れる。

「もちろん構いませんよ。それでは行ってらっしゃい」

 結局、真っ先に駆け出したのはダイだった。ポップがそれに続く。半歩遅れて歩き出そうとした時――ヒュンケルは、はたと振り向いた。

「マァム、どうした」

そこにあるのは、輝きを失った瞳と、蒼白な顔、力ない佇まい。彼の、見たことの無い姿をしたマァムだった。その唇は、何か言いたそうに震えはしたが、言葉を紡ぐことはない。

「何か、気にかかることがあるのか」

問いかけるまでもない。それは明らかだった。けれどもマァムは、むきになったようにかぶりを振って、それを振り払うと、何も言わずに駆け出してしまった。

 ダイとポップの姿は、疾うに洞窟の中へと消えている。その奥は、がらんどうの闇に似て、近寄っても中の様子を伺うことさえ出来ない。その暗さを前にして、マァムはもう一度、立ち竦んでしまった。

「待てマァム。何をそんなに恐れている」

震える肩に、背後から伸ばされた手が触れる。それは、本当なら誰よりも近くに感じていたい、大切な人の体温だったのに、まるで氷が触れたかのように、マァムは背筋を強張らせた。

「触らないで!」

細い悲鳴。けれどもその鋭さは、投げかけられた者ではなく、放ったものを傷つける。

「…ごめんなさい、私、どうかしてる……でも怖いの。どうしようもないくらい――怖いの」

言葉が形になるそばから、涙が零れて溢れ、白い頬を濡らす。それを拭いたいと思っているのに、ヒュンケルにはどうしても、指を伸ばすことが出来なかった。

 「…昨夜から、ずっとそうだな。何をそんなに恐れるんだ」

やっとのことで吐き出した台詞が、重く、足元にわだかまる。その重さに耐えかねたように、マァムは顔を背けた。

「戦うことそのものが」

そして、今度は涙に濡れたままの瞳で、がらんどうの闇を見据える。

「でも行くわ。ここに立っていても、何にもならないことだけは確かだもの」

一瞬、柔らかい髪が風にはためいて、怯えた笑顔が振り返る。

「気をつけてね、ヒュンケル」

その言葉だけを残して、マァムの姿は闇に溶けていった。

 独り残されたヒュンケルは、ただ呟くしかない。

「お前も、無事に戻ってくれ、マァム――」

贈れなかった言葉だけが、洞窟の前に木霊した。

 

 一足先に洞窟に入ったポップだったが、その道筋は順調だった。途中には、モンスターも出るしトラップもあるが、ご丁寧にも、彼を陥れるというより、徐々に実戦勘を取り戻せるように配されている。確かに、反射神経は鈍っていたし、魔法力の増幅にも、以前よりすこし、時間がかかるようになっていた。無論、基礎的な修行は怠っていなかったが、それだけでは、最盛期の力は維持出来ない。だが、力は消えたわけではなく、忘れていただけだ。思い出せば、また使えるようになる。

 そんな具合で、ほぼ調子を取り戻したかと、思った時だ。ポップは自分が、今までと違った場所に辿り着いたことに気付いた。これまでは、ひたすら変化の無い、一本道の通路だったのだが、今立っているこの場所は、広々とした空間で、行き止まりになっている。向こう側の壁には、何か緑色の、光るもの。それがオーブに相違ない。

 だが、それが容易く手に入るわけがない。きっと何か、最後の関門が待ち受けているに違いない。そう思って、警戒を走らせた瞬間。信じ難い人物が、ポップの眼前に現れた。もう一人の自分――より正確を期するなら、大魔王バーンと戦った、十五歳の頃の自分が、そこには立っていた。今の自分よりも、背はすこし低い。トレードマークの黄色いバンダナと、旅人の服。そして、その胸には、あらゆる呪文を跳ね返す、シャハルの鏡が仕込まれている。微妙な膨らみの加減で、見て取れた。

 もう一人のポップは、さして迷った形跡も無く、真っ直ぐに両腕を突き出すと、メドローアの光の矢を引き絞って見せた。その作戦の正しさを、ポップは理解している。ポップほどの魔法使いであれば、メラゾーマやベギラマなど、普通の呪文ではあっさりと相殺されてしまい、勝負にもならない。唯一、捌ききれない力を持つのは、メドローアだけだ。無論これも、一撃なら抑えきれるが、魔法力が万全の状態ならば、三発は放てる。連発でもされたら、耐え切れない。

 けれども、矢は引き絞られたまま、放たれる気配はまだ無い。恐らくもう一人のポップは、自分が行動に出るのを待っているのだ。ルーラで回避されては、魔法力の大いなる無駄遣いになってしまう。行動に出た瞬間を狙えば、まだしも命中させやすい。我がことながら、小賢しい。ポップは奥歯を噛んだ。

 魔法力の増幅や体のキレは、全盛期に戻っているとしよう。それでやっと、目の前の、もう一人の自分と互角になる。二年分の差を勝機に繋げられるとしたら、やはり、頭の中身で勝負するしか無いか――いや。もうひとつだけ、武器に出来るものがある。二年前の自分は、知るよしも無かったものが。その瞬間に、ポップの心は定まった。

 躊躇うことなく、自らも光の矢を引き絞る。それでいい、という風に、もう一人の自分が笑った。

「伊達に二年、余計に生きてるわけじゃねえってことを、見せてやるぜ。かかって来な!」

挑発の意味も込めて、威勢良く言い放つ。それと同時に、メドローアを放った。光が手を離れた瞬間に、ルーラで飛び立つ。ここまでは、恐らく向こうも考えている。自分が放ったものでも、相手のそれでも、どちらでもいい。その中に、相手を叩き落とせばすべてが終る。ルーラの速さは同じだ。ぶつかる場所は、ちょうど二人が立っていた、真ん中にあたる。

 もう一人の自分は、予想した通り、呪文で相手を撃墜する戦法に出てきた。とにかく、二つの消滅の力がぶつかり合い、互いを打ち消しあうまでの、短い時間が勝負だ。放たれたのは、破壊力の集束された、見事なイオラ。当たったら、ただでは済まない。だがポップは、この時敢えて、下方向、メドローアの弾道ぎりぎりに進路を取って、回避した。相殺することも出来たが、それでは間に合わない。ルーラに加速をつけて、もう一人の自分の真下まで移動し、動きを止めないで、そのまま拳の一撃を食らわせる。そして、呆気に取られ、体勢を崩した瞬間を狙い、今まさにぶつかり合おうとしている閃光に、蹴落とした。

 「苦手だったんだよなぁ、こういうの…」

呟きながら、ポップは、こみ上げる懐かしさを噛み締めた。魔法力の勝負の最中に、頭突きや蹴りを食らわされて、あえなく敗北――それは、かつて師マトリフから、よく受けた仕打ちだった。その時、勝負を分けるのは、魔法力や知性の冴えではなく、意地悪さだ。十五歳の自分には無くて、十七歳の今ならば、確実にかつてより優れているもの――思い当たるのは、これだけだ。

 二年前の自分は、無い勇気を振り絞って、仲間と正義を一途に信じていた。でも今は、違う。それだけではどうにもならないことを、知ってしまった。そして、それでも自分が戦い続けなければならないことを。そんな時、信じる気持ちだけで支えきれない自分を助けるのは、生存本能や小賢しさ、エゴのようなものだと、思っている。それに振り回されてはいけないが、否定することもあるまい。そう、思う。

 そこでポップは、我に返った。最終目的は、もう一人の自分を倒すことではなくて、オーブを手に入れることだ。奥の壁に、歩み寄る、透明な水晶の中に、緑色の宝玉が埋め込まれているのが、見て取れた。

 『ポップ、よくここまで来ましたね』

セフィラの声だった。

「ここは、まだ序の口なんだろう?そんな所で、へたばるわけにゃいかないんでね」

軽い諧謔を込めて、笑う。かつての「逃げ出し野郎」も、ふてぶてしくなったものだ。

『ポップ、そこにあるのは、三つのオーブのうちひとつ、魔のオーブです。この言葉は、必ずしも貴方に似つかわしくはありませんが、力の上では、相応しいでしょう?』

「なんだそりゃ?」

セフィラの回りくどい言い回しに、ポップは首を傾げたが、セフィラは静かに微笑った。

『貴方が、誰よりも人間らしいからです。弱く愚かで、強いエゴを持ち――善く、強くあろうと必死になって、今の己を築いてきた。それが、人間のあるべき、最も美しい姿です』

「…そんな、大層なもんじゃねえよ」

こそばゆい思いで、ポップはかぶりを振った。

「それよりも、オーブだろ?大魔道士ポップには、一番相応しいオーブだ」

水晶の中の緑の宝玉がまばゆい光を放ち、その光が、両の手首に絡みつく。光が消えると、宝玉は消えて、手首には、緑の宝玉で出来た、ごくシンプルな腕輪が嵌まっていた。

『それが魔のオーブです、ポップ。魔法の杖と同じように、魔法力の増幅を助けてくれます』

なるほど、とポップは思った。この形状ならば、杖と違って、極大呪文やルーラなど、どんな呪文にも対応出来る。試しにメドローアの光の矢を引き絞ってみると、驚くほど簡単に、魔法力が膨れ上がった。

「…なるほど、こいつぁ凄えや。で、洞窟はここで終わりかい?あとは帰ればいいんだな?」

『そうです、ポップ。それではまた、外の世界で』

セフィラの声がやみ、同時に気配も消えた。

 ここから、洞窟の出口までは、随分な距離がある。だが、この腕輪を使い慣れるには、ちょうどいい道のりだろう。そんな、驚くほど軽い心具合で、ポップは踵を返し、来た道を戻り始めた。

 

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