あー、楽しかった!久しぶりに素直に、お伽話バレエを楽しんだ気がします。綺麗なお姫様がいて、素敵なナイトがいて、味のある悪役もいる。踊りが豪華で「はい、クラシックバレエです」っていう安心感があって。……衣装や装置は笑えるほど古臭いですけどね(苦笑)。

キャスト

ライモンダ:ナタリア・ベスメルトノワ  ジャン:ユーリ・ヴァシュチェンコ

アブダラーマン:ゲジミナス・タランダ

 ベスメルトノワはフリーギアやアナスターシャよりも、こっちの方があってます。複雑な演技力のいらない普通のお姫様の方が。たおやかで品の良いところだけを、素直に押し出せばいいんですから。育ちの良いお嬢様で、ちょっと弱いところもある感じでしょうか。婚約者の留守によよと泣き崩れてみたり、アブダラーマンを自力で追い返すなんて出来そうも無い。こういうお姫様だから、ジャンは守ってくれるんでしょうね。

ヴァシュチェンコ…この頃のボリショイは、王子様ダンサーでもこんなにがっしりした体格だったんですねぇ。ノーブルというよりも格好良い騎士でした。ジャンというのは、クラシックバレエの中で思いつく限り唯一、お姫様を守って戦うヒーローですよね。その役割は十分に果たしてくれました。猛々しくは無いけれど、本当に強そう。

そしてアブダラーマン!タランダ!そう、この人はこれがあってる!この話、よく考えると全然理屈が通ってないですよね?何だって、フランスの貴族のお城に突然サラセンの王である彼が乱入してきて、初対面のライモンダに求愛しなければならないのか、とか。でも、どうでもいいんですよ、そんなことは、彼にかかってしまえば。これだけ華やかでパワフルなテクニックで暴れてくれれば!理屈抜きで憎まれ役の、エンタテイメントの悪役。本当にこの踊りは上質のエンタテイメントだと思います。このバレエの何が楽しかったって、アブダラーマン。彼とジャンの決闘も、とても迫力があって楽しめました。強い悪役と、きちんと張り合えるヒーロー。振付けといい、キャラクターの性格付けといい、正統派のクラシックバレエですが、完璧な「図式」を観られて幸福でした。

グリゴローヴィチは、まあ色んな長所も短所もありますが、御伽話バレエの振付けにも、優れた能力を持っている人だと思います。複雑な演技力より全体の雰囲気や華やかさがものを言うストーリーに、マイムを廃して踊りだけで語る彼のやり方は、絶妙に合うと思うんです。これもそう、「眠れる森の美女」もそう。コール・ドの統制、ライモンダの友人役の、男女二人ずつのソリストたち、どれも本当に美しかった。それと、名前が分りませんでしたが、白い貴婦人役のバレリーナ。気品があって美しい人でした。ひょっとしてベスメルトノワより綺麗だったんじゃないだろうか(苦笑)。

 因みに一番楽しかったのは…アブダラーマンのソロと、あとはやっぱり最後のパ・ド・ドゥですね。振付けは「眠り」の方が好みですが、これもいかにも「ロイヤルウェディング」って感じで。

 

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