川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ(ロシア)

主な成績:10バンクーバー五輪4位、0910世界選手権3位、1015欧州チャンピオン

 

 観ていて、色々な感慨を呼び起こしてしまうペアですね。悠子ちゃんとは同い年で、デビューからずっと観てきたし、それからの波乱万丈も苦労も見守ってきた。そして、日本生まれの彼女が、ロシア・ペアというものの、最も美しい継承者と言って差し支えない存在になり、ロシア国籍を選び…久しぶりに、演技だけでは観られない思い入れで、彼女とそのパートナーを見守ることになりました。

 

 

0001シーズン

FS「スパルタクス」

 最初のパートナー、アレクサンドル・マルクンツォフとのシニアデビュー作。とってもしなやかだけど細っこくて不安定で、せっかくタマラ・モスカヴィナから直伝された美しさを、決して活かしきれてはいなかった頃というか。柔軟性を活かした独創的なポジションは多々あるんだけど、ジュニアの域を出ていないというか。今となっては隔世の感を覚える、懐かしい時代の話です。

 

 

0102シーズン

FS「カルメン/アルルの女」

 ある意味、けっこう珍しい「カルメン」かもしれません。押しの強さやインパクトの強さではなくて、流れの美しさで見せる、暗色の演技と言うべきでしょうか。サイドバイサイドのトリプルジャンプを2種類2回組み込んだり、リフト以外にも野心的なことを色々していますが、些か大人しく、終盤の盛り上がりに欠けていたのは否めないかも。更に上達してさえいれば、恐らく美しい作品だったと思うのですが。

 

http://www.youtube.com/watch?v=1S2w_K8Ty44&feature=player_detailpage

 

 

0203シーズン

SP「春の水」、FS「悲しき天使」

 マルクンツォフとの最後のシーズン。SPはボリショイバレエの小品と同じ音楽を使っていますが、観ている方が惚れ惚れするような流麗さで、やはりこの2人は、日本の選手(当時は)だけどロシア・ペアだなと思わされました。FSはモダンアレンジのロシア民謡で、コミカルめの振付。特に悠子ちゃんの、お人形のような動きが愛らしくて、観ていて飽きなかった。ただ、SPに比べると一体感が薄くて、なかなか完成しないペアだな、と思ったのも事実です。

 

 

0607シーズン

SP「序曲とロンド・カプリチオーソ」、FS「ブラジル風バッハ」

 長い長いブランクの後、ロシアの選手として第一線に帰ってきたシーズン。顔見世程度の出番しかなかったシーズンですが、結成から1年に満たないこの段階で、既に前のパートナーよりは完成度で勝っていることが観て取れたのは嬉しかった。そしてやはり、彼女はモスカヴィナの愛弟子で、その名に相応しい技術と表現を持っていることが再確認出来て。

(振付:タチアナ・ドルシニナ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=d4c4oYM_orQ&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=zbBFioYKx54&feature=player_detailpage

 

 

0708シーズン

SP「序曲とロンド・カプリチオーソ」、FS「ある愛の詩」、EX「ブルース」

 スロー4回転サルコウを成功させたシーズン。正直、年下で経験の浅いサーシャとの存在感の差はまだ埋め難いものがあり、特にFS終盤の盛り上げのところでは、悠子ちゃんが独りで走っているようにも見えた。その反面、あとは彼さえ良くなれば、このペアは圧倒的に素晴らしくなる、という予感もありましたけどね。そして特にFSで、正統派ロシア・ペアらしい優雅さや流れの美しさに加えて、何とはないオリエンタルの香りがちょこっと覗いたあたりに、悠子ちゃんの表現の成長が見られたのも嬉しかったですし。

(振付:タチアナ・ドルシニナ)

 

FShttp://www.youtube.com/watch?v=-4bxoWg11Yw&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=O99bwcFwSTE&feature=player_detailpage

 

 

0809シーズン

SP「白鳥」、FS「道化師」

 彼らのスタイルが、一応完成したシーズンと言えるのかな。さしあたりサーシャが期待通りに成長してくれて、やっと存在感がイーブンになったシーズンなのは間違いない。2羽の白鳥をテーマにした繊細優美なSPも、ややコミカルな味付けをして、人形のような愛らしさのFSも、細部までモスカヴィナ門下生らしいこだわりが見えて、見るからに難しそうで、充実した内容でした。後はここから、どうやって充実させていくか、だと思う。

(振付:タチアナ・ドルシニナ)

 

FShttp://www.youtube.com/watch?v=WPgC6MwdmSo&feature=player_detailpage

 

 

0910シーズン

SP「白鳥」、FS「感傷的なワルツ/美しく青きドナウ」、EX「ウィンナワルツ」

 彼らはどうして、こんなに三段跳びで上手くなっていくんだろうと、溜息が出てきました。SPは据え置きの筈。もう何度も観ているのに、観る度に良くなっていった。ただピアノの音のように繊細で澄み切っているだけじゃなくて、大きな流れのある、強い演技の顔も見せるようになってくれた。そして、これぞロシアというワルツから入って、華やかで耳慣れたウィンナワルツに変わるFSは、前半のこれでもかというような優雅さと、後半の明るく楽しげな感じが、分裂するのではなくて、鮮やかなコントラストを描いている。ハイライトはやはり終盤。何だかメリーゴーラウンドを観ているような気がします。思いっきり非日常のハレで、何処かノスタルジックで(演技のテーマそのものが「回想」なんですよね)、とても華やかで、キラキラしていて、工夫を凝らしたリフトやデススパイラルまでもが、まるでアトラクション。そんな、宝石箱をひっくり返したかのようなプログラムでした。

そして、ベステミアノワ&ボブリン夫妻の振付になるEXでは、サーシャの意外な器用さ&可愛らしさも炸裂して、コミカルな演技を見せてくれました。悠子ちゃんは、実はお母様がB&Bの大ファンだったためにフィギュアを始めたのだとか。時代を感じると同時に、きっとベステミアノワ夫妻にとっても嬉しいことだったんだろうな、とほのぼのしてしまいます。

(振付 SPFS:タチアナ・ドルシニナ、EX:イーゴリ・ボブリン&ナタリア・ベステミアノワ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=Ua9JK05mOn0&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=v3DHIjSILCA&feature=player_detailpage

 

 

10-11シーズン

SP「ツァラトゥストラはかく語りき」、FS「月の光」、EX「ハバネラ」「いつも何度でも」

 SPは、冒頭からいきなり、あまりにも強烈で印象的な旋律から始まり、殆ど緩むところが無いという凄い構成。これまで軽やかな音楽を使うことが多かった2人ですが、今回は最初から渾身の力を込めて演じてくれます。最初のスローと最後のリフトが素晴らしいインパクト。一方FSは、曲想そのままに、とてもピュアな印象。実際は細かいところで色々な変化をつけたり、凝ったことをしているんですけど、受ける印象は澄み切ってシンプルです。大幅に変化をするリフトも「凄かったな」ではなく「綺麗だったな」で締め括れるという。EXは「こんなに多彩な違反動作を、実は持っている」という見本市のようなプログラムで、一体何パターンあるのかと、思わず数え、その総数に驚かされます。ただ、それらひとつひとつをハイライトに、露骨にアクロバティックに見せるのではなく、あくまでも音楽を大事に、ひとつの作品として構成してあるのは、とても心憎いことだと思う。

(振付 SP:イゴール・ボブリン&ナタリア・ベステミアノワ、FS:ピーター・シェルニシェフ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=ejfqV10P2xU&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=0EXCaPVHNkc&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=ZF-Xjlt-NM4&feature=player_detailpage(いつも何度でも)

http://www.youtube.com/watch?v=sXjsltJ015Q&feature=player_detailpage(ハバネラ)

 

 

1112シーズン

SP「オール・アローン」、FS「月の光」、EX「黒い瞳」

 FSは据え置き、SPはブルース風のギターロックですが、構成が実に見事です。かっちり詰まって何の無駄も無いんだけど、ごちゃごちゃして煩いかと言われるとこれがベストのバランスだと思え、なおかつすべてのパートに何かしら見どころがあるという。敢えてハイライトを上げるなら、彼女たちのユニゾンの素晴らしさを堪能出来るステップシークエンスでしょう。これはアイスダンスだったのか?という勢いの充実が観られます。

(振付:イワン・コズロフ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=yIoBg3J1xvU&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=k3EI6KWLzuY&feature=player_detailpage

EX: http://www.youtube.com/watch?v=OYrj7l6k1rU&feature=player_detailpage

 

 

1213シーズン

SP「美しく青きドナウ」、FSFebruary」、EX「キャッツ」「You Rise Me Up

 かつてFSでも使った「ドナウ」は、やはりどこかメリーゴーラウンドを彷彿とさせる、ノスタルジックな演技。いつもではありませんが、ポイントで絶妙にワルツの三拍子のアクセントを効かせてくれます。ストレートラインステップがお見事!メランコリックで耽美な音楽を使ったFSは、元々彼女たちが持っている正統派ロシア流のペアスケーティングと相乗効果で、これ以上無いくらいの「ザ・ロシア」。幾つも織り込まれたダンスリフトも印象的ですが、吸い込まれて溜息をついてしまうようなムードこそ魅力かも。EXでは、柔軟性にも定評のある悠子ちゃんの、愛らしい猫っぷりが堪能出来ます。

(振付:アレクサンドル・マトヴィエフ、ピーター・チェルニシェフ)

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=X51vrN4tnLA&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=RGDBthWjoWE&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=K45YIZrsXsQ&feature=player_detailpage(キャッツ)

  http://www.youtube.com/watch?v=hvzTGDrpA_k&feature=player_detailpage

 

 

1415シーズン

SP「タイスの瞑想曲」、FS「マンフレッド」

 その美しさに、溜息が出ます。両方とも彼女たちの優雅で繊細な滑りを強調した振付ですが、流石はアイスダンス界で実力者として鳴らしたチェルニシェフの作品。細かいところまで気を配って、意外なところではっとさせられます。例えば、リフトの時のフリーレッグの処理とか、何気ない首の角度とか。ステップシークエンスの充実ぶりは言うまでもないですしね。それから、時折「ああ、これはエレナ&アントンが昔、やっていた動きだな」と思うこともありますが、直系のきょうだい弟子である彼女たちがやると、すっきり美しくて嫌味が無いですね。SPは流麗さ、FSはドラマチックな雰囲気を存分に味わえます。

振付:ピーター・チェルニシェフ

SPhttps://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=u-dDHH4RnYw

FShttps://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=L4TP0pwpbhk

 

 

1516シーズン

SPI Finally Find Someone」、FS「マンフレッド」

 洗練されて、とてもお洒落なSPですね。トランジッション部分が特に素敵。しばらく観ていなかったけれど、思えばこういう明るい音楽も得意な組でした。FSも含めて、流れの美しさが増しましたね。メリハリのある、流麗な一筆書きを観ている思いです。あとFSはより豪奢になってパワーアップしたとも思います。技術的にも(スローの四回転二つって!)、芸術的にも。私は悠子ちゃんとは同い年なので、その苦労がどれだけのものか、端っこを察することくらいは出来るのですが…スケートの神様には、彼女に何かご褒美をあげて欲しい。切実に。

SPhttps://www.youtube.com/watch?v=FZ5oE-oTGBs

FShttps://www.youtube.com/watch?v=DdzRVniJc3Q

振付:ピーター・チェルニシェフ

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