アレクセイ・ヤグディン(ロシア)

【主な成績】

02ソルトレイクシティ五輪金メダル、980002世界チャンピオン

 

 フィギュアスケート史上最強の王者。1人選べと言われたら、迷わず彼を選びます。圧倒的な存在感と迫力、技術的に何の穴も無く、誰にも真似の出来ないステップがトレードマークではありましたが、滑りの深さも、スケールの大きなジャンプも、それだけで一見の価値があった。全盛期、持てるすべてが遺憾なく発揮された演技を観ると、もうこれ以上のものは無い、とさえ思えました。「強い」という言葉がよく似合うスケーターですが、その強さの源は、揺ぎ無い技術であり、それに裏打ちされた奥深い表現であり、すべてを支えるパッションであり闘志であり――結局、すべてが備わった強さを、彼は持っていました。

 

 

9798シーズン

SP「冬の嵐」、EX「マック・ザ・ナイフ」

 才能が開花する前の、今ひとつなプログラムたち。FSは、何て没個性な、つまらない演技だろう、とさえ思いました。EXは、一生懸命やっているけど、甘いところが多々あって痛いなぁと。氷の上で背泳ぎしちゃうんだけど、ちっとも様になってないところとかね。

 

FShttp://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=lLMlt3Noavg

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=d0N6aLyYzHo&feature=player_detailpage

 

 

9899シーズン

SP「サーカス」、FS「アラビアのロレンス」

 SPはマイムをたくさん入れた楽しいユーモアの世界で、1年前の地味な少年は何処へ、という変貌ぶり。そしてFSでは、一気に力強さを増した、雄々しい表現を見せてくれます。特に意味は無いけど複雑な腕の振付が印象的。それと、彼が後にトレードマークとなるステップの、最初の片鱗を見せてくれるのはここです。

(振付:タチアナ・タラソワ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=NaRu4vWzfhY&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=JreQby8Kbug&feature=player_detailpage

 

 

9900シーズン

SP「くるみ割り人形」、FS「トスカ」

 FSを変更したことで、彼には珍しく、クラシックで攻めることになったシーズン。と言ってもSPはジャズピアノ風のアレンジで、そうクラシックのイメージも無いんですけどね。そしてピアノの曲なのに、何故かヴァイオリンを弾く振付を繰り返していた(苦笑) 一転してFSは、衣装からして露骨にクラシカル。「トスカ」のアリア「星は光りぬ」は、数あるオペラアリアの中でも最も有名で劇的なもののひとつだと思いますが、決して音楽に負けない雄弁な上半身と、重厚な音楽表現。でも、上っ面がドラマティックなだけじゃなくて、足元は物凄く細かいステップを踏んでいます。それでいて、一瞬たりとも揺るがない。その緊張感と迫力。彼のスタイルは、このプログラムを以って、ある程度完成したと言えるでしょうか。

(振付:タチアナ・タラソワ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=dqs1nNmOpok&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=jfKnryb76ZM&feature=player_detailpage

 

 

0001シーズン

SP「革命」、FS「グラディエーター」、EX「グラディエーター」

 このシーズンは、すべてが傑作でした。SPは、超絶技巧ピアノに何とステップを合わせてしまうのですが、すべての動きが、最高に速くて激しい。でも無原則ではなくて美しい。そして、触ると発火してしまいそうな、異常な緊張感も漂わせていました。

 FSは…これはフィギュア史上に残る傑作でしょう。すべての動きが、あまりにも劇的。ジャンプの組み入れも凄まじければステップの量も尋常ではなく、上半身も絶え間なく酷使する振付、そして濃密なドラマ。滑り切れれば圧倒的で、それ自体が既にひとつの大スペクタクルと化してしまう――そんな中で表現されるのは、怒りと悲しみ、絶望と再起と喜びと…「闘う者の気概」とでも言えるかもしれませんね。そのテーマもまた、彼によく似合っていました。そして、FSEXに作り直した場合、大抵は後者の方が気の抜けた代物になってしまうのに対して、このEXはドラマに純化した、より劇的な作りにしてあった。このシーズンのプログラムは、何十回となく観た今でも、思わず居住まいを正して観てしまいます。そんな迫力が、画面を通して伝わってくるんです。

(振付:タチアナ・タラソワ、ニコライ・モロゾフ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=yMdz_3RtTuE&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=HxcDYqSRljI&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=mr9fiFbXz9w&feature=player_detailpage

 

 

01-02シーズン

SP「ウィンター」、FS「仮面の男」、EXOvercome

 傑作の後に更なる傑作を以ってそれを乗り越え、無敵の王者になったシーズン。手始めにSPで、昨季、もうこれ以上は無理と思えたステップを、更に細かくして見せた。これまでの重厚なドラマ性から一転して、スピード感に溢れた構成ですが、呆気にとられ、見蕩れているうちに、一息ですべてが終ってしまうようなイメージがあります。そして何気なく、フィニッシュのコンビネーションスピンはじっくり見せているところとか、氷の削りかすを手にとって投げる演出とか、色々ニクイ、凝ったこともやっている。飛び散る氷――その澄み切った細やかな輝きが、ある意味、このプログラムを象徴しているかもしれません。

 FSは、彼本来の持ち味である、重厚で劇的な作品。でも、前作の重苦しさではなくて、朗々と開けていくような解放感があった。ステップの細かさはSPに劣るものではなく、「束縛から解き放たれる」というイメージの、パントマイム色の強い振付も凝ったもの。競技用としてだけでなく、完成度の高い作品でした。ステップやジャンプから迸る力、スローパートで見せる、深みのある喜びの表現と幸福感――まるで、滑りきることで、氷の上に積み重ねてきたすべてを、受け入れて、認めて、祝福しているような――そんな錯覚を覚えました。そして、演技を包むオーラが、自分以外に王者など居ないという、無言の気迫になっていました。

 EXも素晴らしかったです。動きそのものは、SPFSから持ってきたものが多いんですが、緩急のつけ方ひとつで、がらりと見せ方を変えてしまうのが流石。EXの、あの良くも悪くも気の抜けた感じではなくて、誰が王者かをまざまざと見せ付けるような、凄みのある演技、そしてこれが俺だ、とばかりに細かいステップ。余技でもここまで出来たらぐうの音も出ません。

(振付:タチアナ・タラソワ、ニコライ・モロゾフ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=GEfR4dQ8wAw&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=sVYs2M_rIm0&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=9gMimBlGdPA&feature=player_detailpage

 

 

0203シーズン

SPPlayed A Live

 結果的に、彼にとって最後になってしまったアマチュアのプログラム。そして彼が、昨季の栄光に微塵も縋ろうとしていなかったことを証明するもの。まず、このシーズンから一大旋風を起こした細かなトゥステップ(通称ヤグディンステップ)を、張本人があまり使っていなかったんですよ。エッジ系のステップを駆使しての細かなシークエンス、重厚さのカケラもない、肩の力が抜けた楽しい構成…もしここで道を閉ざされることが無かったら、一体彼は何処へ行っていたのでしょう。

(振付:タチアナ・タラソワ、ニコライ・モロゾフ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=9q70BbgHUIQ&feature=player_detailpage

 

 

「ムーン・オーヴァー・バーボン・ストリート」 

 プロ転向後第1作で、自分でも言う通り、非常に良い意味で脱力系。音楽もシンプルな弾き語りで、トレードマークのトゥステップを一切封印し、流れるように、漂うように、ごく気楽に…というプログラムでした。

 

http://www.youtube.com/watch?v=UGOfSfaZDeQ&feature=player_detailpage

 

 

The feeling begins

 一転して、こちらは暴れます!前半部分を、地の底から這い上がるようなミステリアスな動きで通したら、後半からは怒涛のステップ攻勢!溜飲が下がるというか、思わず唖然とするというか、最早呆れてくるというか…とにかくその勢いだけでも、何処かに連れて行かれてしまいそうです。

 

http://www.youtube.com/watch?v=aHj2KXR778g&feature=player_detailpage

 

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