ポール・ワイリー

【主な成績】

92アルベールビル五輪銀メダル

 

繊細という言葉が似つかわしい、稀有な男子スケーターだと思います。小柄で、細かく敏捷な動きも得意としていますが、指先まで神経の行き届いた美しいラインと、傾斜の深いムーヴス・イン・ザ・フィールドの数々が、やはり真骨頂。シンプルな音楽を感動的に滑りこなすという点では、典型的なアメリカのスケーターでもあります。

 

 

87-88シーズン

FS「オリンピック・ファンファーレ 他」

 このプログラム、男子では破格に珍しく、ゆったりしたスパイラルから始まって、かなり時間を取ります。構成的には緩‐急‐緩‐急で、例えば最初の「急」のところに入っているシンプルなストレートラインステップなども、かなり小気味良く、粋な代物。でもやはり、ここは彼の美しいスケーティング動作に酔いたいものです。冒頭然り、イーグルのままエッジのフォアとバックを切り替えてサーペンタインに進んでいくところとか、中盤のハイライト、大きなイナバウアーからスピンに入る辺りとか。手の指先からエッジの爪先まで、見事にラインが伸びていて、溜息が出るほど美しいです。

 それから、是非見ていただきたいのが終盤、最後の「急」のところ。最近の若い選手なら思いっきりステップで盛り上げそうなところに、敢えてスライディングの入ったスパイラルを持ってきていますが、これがまたハマる。そしてその後のスプリットも見事。こういうシーンを観ていると、フィギュアスケートの奥の深さに感じ入ってしまいます。

 

http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=frr0zeEiSfo

 

 

91-92シーズン

FS「交響曲 オルガン付 他」

 ある意味、彼にとって王道の構成かなと思うのですが、前回の五輪で用意した作品と、基本の構成は同じです。緩‐急‐緩‐急だし、冒頭もまたスパイラルから。中盤のイナバウアーとか、終盤のスプリットとか、必殺のアイテムは全部揃っている感がある。ただ、時代的なものもあって見事にツギハギだった前回よりは、音楽の構成にデリカシーが感じられて、全体の統一感があるかなという印象。あとこの作品はイーグルが素晴らしいです。ほんの繋ぎに物凄く深い傾斜のものをさりげなく織り込んでいたり、終盤の盛り上がりのところで満を持して披露したり。だからこの人は油断のならないスケーターだと思う。

 

http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=tzxrQSbaCRU

 

 

「ヒーリング・レイン」

 かなり後年、40歳を過ぎてからの演技だと思います。なのでジャンプはダブルアクセルまで。穏やかな男声ヴォーカルに合わせた、ごくスタンダードなショーナンバーだと思います。何本でも気持ち良く見られてしまうような。ただ、正統派のアメリカン・スケーターってやっぱり終盤の盛り上げが異様なほど上手いよねえ、と思うのが、終盤の何てことないストレートレインステップ。あれが、曲と歌詞と見事に融けて感動的なんです。

 

 

JFK

 ワイリーが持っている「歯切れ」を強調した作品です。正直、これを観るまでは「あくまでも『急』は『緩』のおまけだよね」とさえ思っていた私ですが、いやはや、単体で観ると悪くないじゃないですか。寧ろ格好良いじゃないですか、という話。いや、スパイラルで始まってイーグルで終わりますけどね。中盤にイナバウアーもありますけどね。でもやっぱりこのプログラムはマーチ部分が肝だと思います。

 

http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=VC1ucqEJTiY

 

 

 SOIで披露した、スコット・ハミルトン、カート・ブラウニングとのグループナンバー。3人のいずれもがそうなんですが、エッジワークの至芸を見せてくれます。滑るって、こんなにシンプルで、奥深くて、面白い。

http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=QCapfwISfAU

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