申雪&趙宏博(中国)

【主な成績】

10バンクーバー五輪金メダル、020307世界チャンピオン

 

 ダイナミックさにおいて最強。でもそれは、投げ技の話ではなくて、演技が生み出す感情の渦の話です。彼らの演技には「たかが完璧」を超える何かがある。それは、演技の中で生まれて、会場を包み込み、感動を呼び起こすもの。もちろん彼らには、トレードマークとしての豪快な大技も数々ありますが、それよりもなお、やはり、大きな感情を動かす力を持ったスケーターだと思います。感動するとは何か、どんな心の動きなのか。彼らの演技を観て感じるのは、ずばり、そのことですから。

 

 

9798シーズン

SP「チゴイネルワイゼン」、FS「オリンポスの山」

 SPFSとも素晴らしく粗かった辺りに、今となっては歴史を感じます。本当はどちらも、すっきりしてテンポの良いプログラムなのですが、リアルタイムでこれを滑っていた頃、彼らには、それをすっきりと見せるだけの洗練は望めなかったんですよね(苦笑) SPは特に、終盤の速いテンポになかなか動きが合っていなかったですし。

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=Vi6DnkGxnqM

FShttp://www.youtube.com/watch?v=u8M1PR2jy8g&feature=player_detailpage

 

 

9899シーズン

FS「ムーラン」

 粗さの角だけは落ちて、シンプルに見せられるようになったポイント。振付は特に何、ということはなくて、はきはきと勇ましく、元気の良い演技です。

 

FS: http://www.youtube.com/watch?v=hEBfeMGQvOA&feature=player_detailpage

 

 

9900シーズン

SP「火の鳥」、FS「春の精」

 SPは、敢えて終盤のゆったりした曲調だけを使った、スケール感のある演技。「火の鳥」と聞いて予想するものとはだいぶ違いますが、彼らに出来ることを素直にやっていて、とてもパワフルな印象を残せるのは上手いと思う。FSは、衣装といい音楽といい、「中国らしさ」を前面に押し出している作品。ロシアやヨーロッパの優雅さとは違う、逞しさを兼ね備えたしなやかさとか流れを感じます。豪快さを包み隠さない柔らかさがあるというか。彼らはここでやっと、世界の頂点を窺ってもいいポイントに立ったんじゃないでしょうか。

(振付:サンドラ・ベゼック)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=AyBoUiKByZ8&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=ECjZMlCPzks&feature=player_detailpage

 

 

0001シーズン

SP「アレグレット」、FS「春の精」、EX「ベートーヴェンズ・ラストナイト」

 SPは、デジタル調の音楽が彼らのテクニックの鋭さに絶妙に合う、モダンな印象でテンポの良い作品。FSは前のシーズンから据え置きです。EXは…正直、オープニングのポジションを観て、苦笑しました。どっかのアイスダンサーの作品と、いい感じに被ってるなー、と。

(振付:サンドラ・ベゼック)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=O1Ek-iGQvTw&feature=player_detailpage

 

 

01-02シーズン

SP「キスメット」、FS「トゥーランドット」、EX「イン・ザ・ダーク」

 SPは、ゆっくり溜めを作っておいて、名刺代わりにスロージャンプを差し出すという、素晴らしく豪快なナンバー。そしてFSは、一世一代の傑作でしょう。持ち前の豪快さやしなやかさに磨きをかけたのはもちろん、手の動きひとつ、目線のひとつにまで心を配って、人の心を打つ演技が出来るようになった。冒頭、雪さんの表情がとても魅力的ですが、それが鮮やかに移ろう様子に、最後まで目が離せない。豪快さ、とひと口に言うのも簡単ですが、スローやツイストなどの「投げ技」だけでなく、やや苦手だった印象のリフトだったり、全体の構成、流れからだったり、満遍なく感じられるようになったんですよね。かといって、それこそ表情や指先といった繊細な部分が置き去りにされたり、損なわれることもなくて。それこそ彼らの最高の持ち味である、演技が生み出す大きな感情の渦を、最大限に呼び起こすことが出来て。EXでは、コミカルな音楽に合わせて踊りまくっていましたが、彼らにこんな引き出しがあるとはついぞ知らず、楽しい驚きを感じたものです。

(振付:リー=アン・ミラー)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=y-Qt0-uxWWo&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=mqbzh-NU0Io&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=0vzCGipeaDw&feature=player_detailpage

 

 

0203シーズン

SP「ベートーヴェンズ・ラストナイト」、FS「トゥーランドット」、EX「ブルース」

 シーズン最後のFSの演技を除いては、やや盛り上がりを欠いたシーズン。SPは衣装があまりにもいただけなかったのと、やや没個性な振付になってしまった感が。EXのブルースも、それなりに格好良いことをしてはいるんだけど、彼らにはもっと、彼らなりに似合う作品、音楽があるんじゃないかな、と。

(振付:リー=アン・ミラー)

 

FShttp://www.youtube.com/watch?v=9Kql3sf_crA&feature=player_detailpage

 

 

03-04シーズン

SP「キスメット」、FS「くるみ割り人形」、EXTime to Say Goodbye」「Come What May

 この「くるみ」は、恐らく彼らの演技の中で、最もアジア色が薄い、寧ろ殆ど無い珍しい作品です。ただ、バレエファンの目から観ても、音楽を活かした良い作品になっていると思います。豪華で優雅な作品で、比較的、直球勝負のプログラムが多い彼らの中にあっては、構築系の込み入った振付も面白い。何よりもチャイコフスキーの音楽は、実は非力だと滑れないんですよ。曲に負けてしまう。そういう意味で、彼らは彼らなりの個性を使って、この音楽をこなしたとも言える。それはEXでも同じことですね。「Time to Say Goodbye」も重厚で感動的な曲ですし。ただ、個人的には、クレッシェンド式に盛り上げてスタンダードな感動を生み出す「Come What May」がお気に入りですが。

 

FShttp://www.youtube.com/watch?v=40X2SIc41HY&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=-VzI0CBlCeE&feature=player_detailpage(Come What May

 

 

0405シーズン

SP「月の光」、FS「宋家の三姉妹」

 SPは、本家ロシアのお株を奪って余りある、優雅で流麗な作品。選曲から振付から、まるで正統派のロシアペアのようでしたが、同時に彼らならではの力強さも、底の部分には持っていたと思う。FSは、映画を観た人間には分りますが、描き出される情景がよく似ている。アジア映画に特有の、淡々と流れるような映像美と、メランコリーの感じと。とても丁寧な仕上がりの作品ですが、特に終盤は、迫力もありましたね。それが彼らの彼らたる所以ではありますが、何をしていても、基本ダイナミックで強いな、と。

(振付:リー=アン・ミラー)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=1_kbf5Ii9Rc&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=5PtJq-ZzX1U&feature=player_detailpage

 

 

0506シーズン

SP「ラフマニノフのピアノ協奏曲」、FS「蝶々夫人」

 夏に趙兄さんがアキレス腱を断裂し、本当にオリンピックだけのシーズンでした。正直、SPには「こなれていない」感が強烈に残っていて、もどかしかった。滑りきれていたら、彼らにとっては新境地となる、細やかさと華やかさを併せ持った世界になっていたでしょうに。でもFSは傑作でした。プッチーニの、あざといまでのドラマチックさが活きるのは、彼らがそれだけ大きく感情を動かせるから。そして、だからこそ「ある晴れた日に」だけでなく、蝶々さんの自害のシーンまでを使いきれた。その音楽に合わせたスロージャンプが、まるで鳥が飛ぶように美しくて…ただ頭を下げたかった。あの音楽の劇的でシリアスな調べが、彼らがあのシーズンに懸けていた想いの強さ、覚悟の強さにも思えたりして。

(振付:ローリー・ニコル)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=1UuUrEpGXM0&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=v3YiQC9v9q8&feature=player_detailpage

 

 

0607シーズン

SP「ロマンサ」、FS「タイスの瞑想曲」、EX「マイ・ウェイ」「カルーソ」「Come What May

 SPはスペイン音楽ですが、不思議とアジアン・ビューティを感じさせる、シャープな作品。FSはドラマチック系の選曲ではないのが、若干残念な気もしますが、最早そんなものをやらなくても、貫禄十分の演技。細部まで行き届いた表現には、再び頭を下げたくなりました。ただ、やはり最も輝かしかったのは、イル・ディーヴォの曲を使ったEXの数々。男声の多重唱って、ゴージャスだけど一歩間違うと重苦しい筈なんですよ。それを自在に使いこなして、彼らならではのダイナミックな感情表現を活かしきった。感動的、という言葉が嘘のようにハマる、存在それ自体が宝物のような演技でした。

(振付:ローリー・ニコル)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=zDG6RQimIao&feature=player_detailpage

FS: http://www.youtube.com/watch?v=niiLSEhPR74&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=2f0qpJ89jgU&feature=player_detailpage(マイ・ウェイ)

http://www.youtube.com/watch?v=rWRJdWvtyQQ&feature=player_detailpage(カルーソ)

 

 

09-10シーズン

SPWHO WANTS TO LIVE FOERVER」、FS「アルビノーニのアダージョ」

 SPはクィーンのバラードですが、感動的、としか言えないような壮大な音楽。まさしく彼らの持ち味を全開に出来る楽曲と言えるでしょう。そしてその通り、あまり間をおかずに繰り出されるエレメンツのすべてが、彼らの1番美味しいところ。それらひとつひとつの豪快さが、そのまま音楽の盛り上がりになる。逆にFSは、これという山場の無い静かな作品ですが、ボディブローのようにじわじわと、彼らの凄さが滲みてくる印象があります。最初に気がつくのは、序盤に繰り出される回転系のムーヴメントがそこはかとなく醸しだすオリエンタルな空気。そこからあとは、すべてのエレメンツ――工夫を凝らしたリフト、独創的なデススパイラル、鳥が翔ぶようなスロージャンプ等々――に目を凝らして、その隙の無さを味わい尽くす。静かなる王者。趣としてはそれでしょう。

(振付:ローリー・ニコル)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=Nqmff_54FZs&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=NtnP1N2mjAs&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=7THZjWidbFw&feature=player_detailpage

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