佐藤有香(日本)

【主な成績】

94リレハンメル五輪5位、94世界チャンピオン

 

 彼女の滑りは、美しい。その一言に尽きます。無理も無駄も重さも、何もない。ただゆったりと、たおやかで、穏やか。自然以上に自然そのもの。跳ばなくても回らなくても、ただ滑っているだけで、超越の領域を感じさせる、そんな稀有なスケーターです。それと有香さんは、シングルスケーターであるだけでなく、ご主人のジェイソン・ダンジェン氏とのペアでも活躍されましたが、有香さんの持ち味は、そちらの方にも存分に活かされています。

 

 

9192シーズン

SP「韃靼人の踊り」、FS「海賊」

 古き良き時代のフィギュアスケート…という趣の、シンプルなプログラム。ボーイッシュで闊達なSPと、明るく華やかなFSですが、いずれにしても無駄の無いシンプルな振付と動きですね。そして、よく観ると意外と凄いスピードだなとか、スピンが速いなとか思いますが、滑りが上手ければスピードが出るのは当然だし、この人はルシンダ・ルー、村主章枝、中野友加里の先輩でもあったんだな、という今更なことに気がつきました。

(振付:佐藤久美子)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=MDhVzhxMCDs&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=QGCUJsLSyzs&feature=player_detailpage

 

 

9394シーズン

SPRailway Children」、FS「パキータ」、EXIf We Hold on Together

 SPで明るく伸び伸びとした滑りを披露したら、FSでは軽快に、歯切れ良く踊りきるという演じ分けなんでしょうか。それにしても、ステップワークの冴え渡っていることといったら無いですね!スローで足元の映像を拡大再生しても、氷のカケラひとつ飛んでいないという見事さ。それとEXでは、「有香さんの滑りが本当に凄いのは、プロになってから」と思っていた、その思い込みを引き剥がされました。無難なバラードナンバーと言うなかれ、素晴らしいスパイラルが見られますから。

(振付:佐藤久美子)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=XfkeJgVMw-w&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=CZD_N4FY3B0&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=08P9wKE9zT4&feature=player_detailpage

 

 

「テイク・マイ・ハンド」

 曲調も振付もポップで可愛らしい作品ですが、それもなお、プログラムの中に出てくるありとあらゆる衝撃を吸収してしまう、関節の柔らかさに圧倒されます。そして、だからこそ、この作品は軽やかで愛らしいんだ、ということを痛感する。動きを作り出すエネルギーが、身体の何処でも弛まない。滑りの流れが澱まない。ポンポン踊るだけならもっと誰にでも出来る作品です。でも、有香さん以上に観易くこれを滑れるスケーターはまず居ないんだろうな。

 

http://www.youtube.com/watch?v=_xut0r0r9VE&feature=player_detailpage

 

 

「牧神の午後への前奏曲」

 柔らかさと緩やかさに特化した作品。思わず眠たくなってしまうような音楽ですので、上手くやればやるほど、観る者を寝かせてしまう(苦笑) というのは冗談としても、何のスパイスも無い音楽を冗長にしないのは大変なことの筈で、やっぱり余人がやったら退屈で眠いと思うんですね。有香さんが滑ると、観ていてα波がたくさん出そう。とてもリラックス出来て、この表現は好きではないけど、癒される気がします。

(振付:リー=アン・ミラー)

 

http://www.youtube.com/watch?v=Ws8zT945BYw&feature=player_detailpage

 

 

Hatfull of Stars

 無邪気で、何とも言えない幸福感の漂う作品。タイトルもタイトルだけど、無心に滑っている子供を思わせるような演技です。ささやかだけど愛おしくて、不思議に懐かしい。そんな、何とも言えず愛くるしい世界観のプログラムです。

(振付:リー=アン・ミラー)

 

http://www.youtube.com/watch?v=6VMup1EnL_w&feature=player_detailpage

 

 

Songs of our homeland

 まるで有香さんのためにあるような曲。IZZYの伸びやかで膨らみのある声が、スケーティングと絶妙に融けます。そうして立ち上がる情景の、美しいことといったらありません。テンポの良い間奏で軽快なステップを見せて、最後はゆったりとした滑りで締める、その構成も美味しい。「韃靼人の踊り」のヴォーカル・ヴァージョンですが、若い頃踊ったあのボーイッシュな世界ではなくて、中央アジアの遥かな草原に沈む夕日を見るような、柔らかく優雅な中にもスケール感を感じさせる作品。観ていてとても気持ち良いです。

 

http://www.youtube.com/watch?v=kGbOCg7QCx8&feature=player_detailpage

 

 

Color of the Roses

 癒されるような柔らかさ、たゆまず流れる美しさ以上に、神々しさ、気品を感じる演技でした。何かもう、世俗を超越してしまったような…このプログラムは01年のスケーターズ・チャンピオンシップで全員のジャッジから満点の芸術点を獲得していますが、それも納得出来るというものです。それとこのプログラム、フィニッシュはバックのスケーティングなんですよ。ジャンプでもステップでもスピンでもない、ムーヴメントでさえない。有香さんの滑りの美しさを、最大限に堪能出来る作品と言えるでしょうか。

 

http://www.youtube.com/watch?v=YzUPUGEyrWU&feature=player_detailpage

 

 

「ロマンス」

 オープン試合用のSPですが、引退後10年経って、これだけの技術を維持できるのは素晴らしいことだと思います。ループのコンビネーションとか、ステップからのサルコウなんて、思いっきり「パキータ」にも入ってましたからね。ひとつひとつの技の質は、アマチュア時代とは比べ物にならないほど高くなっていますし。最大の見せ場は、ポジションチェンジの無い長いスパイラル。あまりにもゆったりとしているので、時々「もう止まってしまうのでは?」とさえ思いますが、それでも伸び続けていくんですよ。ほんのちょっとした体重の移動だけだと思うんですけれど、このままリンクを2周でも3周でもしてくれて構わないなぁ、なんて莫迦げたことを、思わず呟いてしまいそうです。

 

 

「テイク・ファイブ」

 お洒落で可愛いジャズナンバー。軽快さは無いけれど、柔らかいホーンの音が、意外と有香さんの動きにはハマっていて、とってもキュート。「流れる」系が真骨頂とはいえ、プロの第一線で長く活躍されているだけあって、引き出しは多いなと感じます。

 

 

「ノーティ・ガール」

 踊りまくる、という言葉は有香さんのイメージからは相当、遠かったのですが、これはずばりそのもの。最初に観た時、度肝を抜かれました。思えば、ボディコントロールは抜群だし、ターンは綺麗に決まるし、メリハリのつけようはどこにでもあったのでした。それにしてもまさか、ビヨンセのダンスナンバーが来るとは思わなかった。驚きました、とってもいい意味で!

 

http://www.youtube.com/watch?v=YAjpiDr3b3M&feature=player_detailpage

 

 

The Long and Winding Road

 有香さんのスケーティングは、氷と愛し合ってしまっている感じがしますよね。何とも言えない幸福感が漂ってくるのは、きっとそれが理由だろうと、この演技を観ながら思いました。もう融け合ってしまって離れない感じがする。静かで、密やかで、穏やかで――ある意味何のハイライトも無い作品ですが、相変わらず「眼福でございました」と言って頭を下げたくなるようなエッジワークです。

 

http://www.youtube.com/watch?v=ghVXlJC4Vio&feature=player_detailpage

 

 

「リボン・イン・ザ・スカイ」

 有香&ダンジェンのペア演技。イナ&ダンジェンのダイナミックで豪快な世界からは一変して、観ているこちらが羨ましくなるような、穏やかでロマンチックで、幸福感に満ちた世界。そして、有香さんの滑りそのままに、すべての流れが柔らかく、美しい。リフトの上げ下ろしもとてもソフトだし、ステップは細やかだし、あらゆることが、有香さんのために存在しているようなペアだなーと思いました。因みにタイトルは、英語圏で言う「赤い糸」の意味だそうです。ご馳走様でした。赤いスカーフを使ったフィニッシュの演出はとても心憎かったです。

 

 

「ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番」

 オープン試合用のSPですが、とりあえず現役復帰を勧めたくなる、非常に質の高い演技でした。何しろすべて、普通にそのままアマチュアの競技で使える技ばかりだったから。一部のエレメンツに関してはトップクラスだろうと思えますし、流れに関しては間違いなくトップに君臨出来るでしょうし。リフトの前後やスパイラルの滑らかさは絶品です。スローのランディングに至っては、もしかして過去、観てきた中で最高かも、とさえ思いました。有香さんの滑りの1番いいところを、ダンジェン氏の技術で磐石に支えているペアだなと感じます。

 

http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=c8r51EAm2vU

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