後から思えば、初めて彼を見かけたのは、とあるイベントのステージだったはずだ。まったく何の記憶も無くて申し訳ないんだけど、でも確かに、彼がいたバンドの演奏は覚えている。とてもいい声のヴォーカルだった。そして彼はといえば、そのステージでキーボードを弾いていたらしいんだけど、残念ながら記憶に無い。

 だから、彼、南総一郎との実質的な初対面は、秋の初めのある日だった。その日、あたしと智之は、新しいバンドのメンバー募集のチラシを貼りに、御茶ノ水の楽器店に行ったところだった。

「佐野智之さんでしょ、RACHESISの」

大きくもなく、無駄に響くわけでもないけれど、くっきりと印象を残す綺麗な発音で、彼はあたしたちを振り向かせた。当時、そうやって声を掛けられることは決して珍しくはなかったんだけど、何度でもあった中でディテールまで覚えているのは、声の力だと思う。その時は、まさかこんなに長い付き合いになるなんて、思いもしなかったから。

 ただ、話しかけてきたその男の子が誰だったか、恐ろしいことに、智之は覚えていた。筋金入りの音楽オタクだから、というのも莫迦らしいけれど。でも、いいなと思った「音」とそれにまつわる人は、一度インプットされたら、なまじっかなことで抜けはしない。

「南総一郎さんだ。FREE WAYの」

智之は、さも何気ない風をして、そう返した。一方、返された方はといえば、文字通り、これ以上は無いってくらい目を丸くして、間の抜けたことを言った。

「何で、あんたが俺を知ってんの?」

当然だと思う。彼のバンドであるFREE WAYとは、首都圏近郊の、10代のバンドばかりを対象にしたイベントで競演したことはあったけど、個人的に挨拶とかはしなかったし、ジャンルもだいぶ違うから。

「何でって、そりゃあんた、いい声してたから」

智之はあっけらかんとそう言い、あたしはと言えば、因みにマジでこの子誰だっけ、と頭をフル回転させていた。

 

 それから20分ほど後のこと、あたしと智之は用事を終えて、立ち話も何だからと、駅近くのカフェで総一郎と向かい合っていた。

「あ、そーいや、コイツの紹介してなかった。元RACHESISのスタッフの、中原薫」

そして智之は、思い出したようにそう言って、ぞんざいな手つきで私を指差した。

「こう見えて、機材車運転するわ、打ち上げで野郎より飲むわの、すげぇじゃじゃ馬で。俺と俊二と、中一からのツレなんだけど」

並の女の子なら、ここで「余計なことを」とでも言いたくなるんだろうけど、全部本当な上に、こいつらが声変わり前からの付き合いなので、性別なんてどこへいったやら。だからあたしは平然としていた。逆に驚かせてくれたのは、総一郎の方だ。

「あ、そーなんだ。彼女には見えなかったからさ、誰なんだろうって思ってたんだけど」

 世の中、似たような年格好の男女がプライヴェートで連れ立って歩いていると、どうしてもカップルに見えるらしい。あたしは、智之に限らずRACHESISメンバーの誰とも色々な2人行動をしたけれど、全員の彼女に間違ったことがある。全員、あたしより女オンナした可愛い彼女がいるっちゅうの、どこ見てるんだよ、なんて、その度に内心で悪態をついて、色々と鬱陶しい思いもしたから――総一郎のその反応は、新鮮だった。

 因みに、後から何でそう思ったかを訊いてみたら「いやあ何となく。俺、姉貴と妹に囲まれて育ったから、ヘンな鼻効いちゃうんだよね」と言って笑われたものだけど。

 本題に戻るとしよう。バンドやってる少年少女の話すことなんて、音楽の話以外に無い。そしてその時、3人が置かれた状況は、いたって冴えないものだった。要するに、3人仲良く、所属先ナシ。あたしと智之は、RACHESISが解散し俊二が死んじゃった後で、新しいバンドのメンバー集めをしていたし、総一郎のバンドも、RACHESISとほぼ同時期に解散したと、その時聞いた。

 「っとに、何だってこう、景気の悪い話ばっかりだかね。春先まで矢鱈と動いてたから、余計そんな気がする」

アイスコーヒーを飲みながら、私がそう呟いたのは、確かに、前の年の秋からその年の春にかけて、RACHESISのアルバムリリースがあって、初めてのツアーがあって、ものの上下もわからなくなるくらい忙しい、充実した毎日の後でぽっかり暇が出来てしまったからだ。その上、確かあれのちょこっとだけ前に、RACHESISをやめて三鷹を出て行った敦司と恭平が、早くも新しいバンドを始めて、ファースト・ライヴをやったという話を耳にしてもいた。その「置き去りにされちゃった」感たるや絶大で、多分私は、焦っていたんだと思う。

 そして実のところ、焦っていたのは総一郎も同じらしい。っていうのは、本人の言葉を借りるなら「俺ホントに、得意なことが無い人間だから」だそうだ。その総一郎が、唯一「上手い下手はともかく、間違いなく好きで、多少しんどくても続けられること」というのが、音楽だったそうだ。で、高校卒業と同時に家を出て、フリーター生活の傍ら続けようと思っていたバンドが、ある日無くなってしまったという具合。彼は彼で、毎日ファミレスのテーブルを拭いたり食器を運んだりしながら、人知れず悩んでいたらしい。

 そして、こんな時もそうでない時も、大概そうであったように、唯一焦っていないのは、大将・智之だった。自分こそ、メジャーに片手かけていたバンドのベーシストだったくせに、ゼロどころかマイナス状態からのスタートでも、落ち着いたものだった。

「気が向いたらでいいんだけど、今度俺らと一緒に音出さないか?」

何気なくポンと出されたその台詞には、天気予報によれば明日は晴れだったと思う、くらいの重さしか感じなかった。だけど、私にとっても総一郎にとっても、予想の範疇の中には絶対にあり得ない台詞でもあった。

「…って、キーボード弾けって?」

そう言ったのは総一郎だ。そして私たちは、そんなポジションに募集をかけてはいなかった。

「いやヴォーカルで。あんたさ、FREE WAYでも歌ってたじゃん。いい声だったと思うけど」

言われてみれば確かに、FREE WAYはメインヴォーカルのほかに、キーボードの総一郎も他の楽器のメンバーも歌っていた。これは後から聞いたけど、全員がリードヴォーカルをとれるのが、一応売りだったらしい。

「俺は暇だし面白そうだからいいけど、そちらさんは大丈夫なの?!」

「所詮手間かかるモンだろ、メンバー集めって」

唖然とする総一郎に、智之はさらりと言ってのけた。そういう智之は、当時まだ美容学生だったから、本当に全然、暇なんかじゃなかった。

「じゃ決定な。他のメンバーの都合訊いてくるから、携帯教えて貰える?」

だけど智之だけが、淡々と話を進めていった。傍目には、これでいいのかよってくらい、軽いノリで。

 

 「OK、です」

ステージの真ん中、やや下手寄りの位置から、智之はそう言った。相変わらず、そこにどんな特別さも込めない、いつもの智之らしい調子で。

 時計を見ると、予定時間よりは20分ほど早かった。SIVAのリハーサルはいつもスムーズだけど、今回も、初めてのハコにしては上出来だ。

「じゃあ、いったん休憩。出来る人は、今のうちに腹ごしらえしておいて。孝史は、何かやりたいことある?」

そうやってあたしが次の段取りを振ろうとすると、必ず手を挙げるのが、ギターの孝史だ。

「じゃあ上手側のライトの調整を」

「わかりました。じゃあ、照明担当者だけ居残ってください。以上です!」

因みにあたしは、孝史と一緒に居残りだ。ステージの演出を手がけている彼には、照明に出したいダメがあるようだから。マネージャーであるあたしが、そこにまで立ち会う必要があるのかどうかは、客観的には微妙なのだけれど、ウチのやり方ではこうなっている。

 てきぱきと人が動き出す、その一瞬だけ前を縫って、あたしは横に居るもう1人のマネージャー、笹岡ちゃんに指示を飛ばす。

「ケータリング入ってきてる筈だからお願いね。それが済んだらロビーのチェック。何かあったら自分でどうにかすること。プレス関係は、一緒に挨拶するから、もし誰か見かけたら呼んでね。今日は市川さんが来てくださるそうだから、失礼が無いように」

我ながらマシンガンだと思う。そして、今年の新卒で事務所に入った笹岡ちゃんは、目を白黒させながら楽屋の方へ走っていった。童顔で、まだ女子高生のようにも見えるだけに、伝わる必死さも倍増で、痛々しいと思えない、こともない。

 次は打ち合わせ、と別方向を向きかけた時だった。ステージの上からの目線に気づく。

「総一郎」

ステージのへりには、SIVAのヴォーカリストがしゃがみこんで、こっちを見ていた。喉を守るためにマスクを着けているけれど、目は細められて、笑った形をしている。

「休んどくんじゃないの?」

私がそう言うと、総一郎は、わざわざマスクを下にずらして、やはり笑っていた口元を見せた。

「薫さんホント、よく働くよね」

「その分、誰かさんは休んどけって言ってるのよ。ホラ、忙しいんだから、帰った帰った」

そうやって他愛も無いことを、敢えて言う。それが、総一郎なりの気遣いであり、私の息抜きにもなるわけだ。そして、そんな些細なシーンに、律儀にマスクを外してくれる、総一郎の妙な誠実さを、私は凄く買っている。

「さいでした。じゃ、しばらくグータラしてるから、あとよろしくね!」

そして総一郎は、何の悪びれたところも無く、またマスクを引っ張り上げると、軽い足取りで楽屋の方へ戻っていった。本当にこれから、ケータリングの食事をしたら、後は発声しかしないに違いない。

 それでいいのだ――こいつは。

 

 SIVAというバンドを作っていく過程で、すくなからず驚いたのは、智之が選ぶメンバーが、ことごとく素人だったこと、に尽きる。

 ツイン・ギターの片方は、演奏に関しては天才かもしれないけど、バンド経験が無い、うちの妹、忍。もう片方は、幾つものバンドを渡り歩きはしたけど、実はミュージシャン志望ではなかった孝史。ドラムの悠太もやはりバンド活動の経験が無く、ドラムに関しても文化祭程度の経験しか無かった。そして唯一、真っ当なバンド経験があった総一郎は、でも、専任のヴォーカルは初めてだった。

 智之だけが、インディーズ・シーンの最前線を知っていた。

 そこを飛び出して、別の世界――メジャーという場所――へ行く可能性に、指をかけたことがあった。

 その一部始終をハタで見ていたスタッフとして、あたしは物凄く気になった。

「智之、あんたさ、まだるっこしくない?」

これじゃダメだ、とは言わないし、思わなかったけど――だってあたしにとって、良いバンドって何なのかがまずわからなかったし――とりあえず心配だった、に尽きる。

 智之は、珍しくすこし考え込んだ様子を見せてから、やっぱり全然、重大じゃない感じで、言った。

「…よくわかんねえけど。でも、俺もお前もさ、バンドって、RACHESISしか知らねえじゃん。で、あれは『創った』とか『始めた』とかヌキでさ…気がついたらあったし。だからまあそりゃ、今度ゼロから始めるにあたっては、全部まだるっこしいよ、ぶっちゃけ。メンバー集めるところからそうだった」

そして内容はといえば、そんな具合でとりとめが無かった。でも、駆け足で先へ行こうとすする敦司や恭平とは違って、智之は今、じっくり何かを創りたい気分なんだろう、というのは、感じたように思う。

「まあ、好きにすれば。どうせあんたが大将だもん。ついて行くからさ」

「おだてんじゃねーよ」

あたしがそう言って後ろあたまを小突いてやったら、智之は真面目に仏頂面をして、その手を振り払った。

 智之は、大丈夫だ。

 何があっても、ただひとつそれだけは、揺ぎ無く信じてきた。この男なら、何が起こっても自分なりの音楽を究めていくだろう、という安心感が、絶対にある。バンドをやろうが辞めようがどのポジションに居ようが、そんなことは関係ない。

 だから問題は、残りの4人だ、と思っていた。思えばこれが、マネージャー根性の始まりかもしれない。RACHESISの時は、メンバー間のせめぎあいが厳しすぎて、正直そこまで立ち入れなかったから。

 まず最初にOK認定をしたのは、悠太だ。何よりも素直にバンドっていうものに憧れていたし、体育会系出身で一本気なので、素人でも上達は早かった。智之を、素直に師匠と仰いでついていく姿勢もあった。

 次に、ある意味で諦めたのが孝史だ。ギターに関しては、強烈な個性と独学でバランスの悪い技術が恐ろしいコントラストを成していたけど、これはそのうち改善されるだろう、と踏んだ。技術に関しては間違いなく天才である、うちの妹と組んでいたからだ。アタマが良くて視野が広くて、ミュージシャン一本で来たのではないものの見方や、考え方をする。ハマれば面白い人材だし、無理なら出て行くだろうし、この人間を変えることは、恐らく出来ない。それが私の見立てだった。

 判断に迷ったのは、妹である忍。まず身内なので、思いっきり目が曇っている。プラス、とりあえずあたしは、このジャンル(ジャンル分けっていう言葉の意味が無いし、分けろったって難しいんだけど、敢えて言うならジャパ・メタからヴィジュアル系までの広い範囲)の中で、ギターを弾いている女の子を知らなかった。何度でも言うけど、テクニックに関しては天才だ。ただ、それだけがミュージシャンではないし、何よりも、見た目も性格も思いっきり「女の子」なので、バンドという男社会の中でどうやって生きていけばいいのか、誰か教えてくれるなら聞いてみたかった。だから、妹についてもある意味諦めた。

 そして最後に、総一郎が残った。

 智之が「良い」と言ったからには、断固として確かに、声はいい。メタルっぽいシャウトは若干弱そうだけど、声量があって、伸びやかでエモーショナルで、何よりも発音が綺麗だった。

余談だけど、RACHESIS時代、何故か俊二と敦司が一致していたのは「半端な英語を混ぜるのはダサいよな」という点で、だから2人とも、歌詞をすべて日本語で書いていた。結果的に、RACHESIS、SIVA、そして敦司の新しいバンドDevil May Careは、三つとも日本語でしか歌わないバンドだ(タイトルはちょくちょく英語なんだけど)。いずれにしても、そうである以上、発音が綺麗なのは重要なことだ、という話。

とりあえず、ヴォーカリスト総一郎に最初に出されたダメは孝史からで、歌唱力以前に、猫背を直せ、というものだった。ただの人なら、「あー、ちょっと猫背気味かもね」というレベルの話だったから、気の毒な気はしたんだけど、でも確かに、矯正しておいた方がステージ映えはいい。

それを言われた総一郎は――へへ、と笑って頷いて、飄々としている、ようにも見えた。でも、その一方で、所在なさ気に見えなくもなかった。

「ねー、総一郎さ、今度何のライヴ行くの?」

最初に話しかけたのは、そんな内容だったと思う。ていうか、所詮それしか無いというか。

「今年はね、聖飢魔Uで手一杯な感じ。年末、通う予定だしさ」

その年っていうのは1999年で、結成当初から20世紀限りでの解散を明言していた聖飢魔Uは「閉店売り尽くし」な勢いでライヴやらリリースやらをやっていた。その年最後の3日間は、もちろん解散ライヴなどというものも用意していたし、ファンならそれは当然、手一杯だっただろう(あたしにも色々、身に覚えがある)

「ついに来たか…って感じ?まず無い設定だよね、いつ解散するか何年も前から分ってるって」

「まぁねー…見ないようにしてたんだけど。ていうか、筋少もどうにかなっちゃうし、俺、来年から何聴こうって感じ」

そう言った時に浮かんだ笑顔は、言葉にしたら「てへへ」っていう感じのヘタレた代物で(ヘタレっていう言葉は当時まだ無かったと思うけど)、良くも悪くも総一郎にやたら似合っていた(因みに解説を入れるとしたら、筋少っていうのは大槻ケンヂ率いる筋肉少女帯のこと、と言えば分って貰えるだろうか。その大槻さんは99年に筋少を脱退しているのだ)

 まあそれにしても、聖飢魔Uに筋少っていうのは趣味としたら分り易い方だ。

「真面目一辺倒のバンドって、苦手な感じ?」

つまりはそういうこと。じゃなかったらネタものが好き、っていう線もあるんだけど、あたしの読みはこっちだった。そして総一郎は、思いっきり「ばれたか」っていう感じのリアクションをした。そういう時の表情がやたら人懐こい感じだな、とあたしは思った。

「苦手、ちゅうか、照れない?」

多分その一言で、腑に落ちた。このヘタレ具合の根源は「照れ」だわ、と。

「シャイなんだ、けっこう」

「かも」

ヴォーカリストなのにシャイってどうよ、というツッコミが自分の中で浮かびはした。したけどもうどうしようもなかった。だって、SIVAのヴォーカリストはこの子で決まってしまったんだから。

 「…ネタものじゃないのも聴くよ。忌野清志郎さんとか。あと最近だとSEX MACHINEGUNSとか」

「それはネタもの」

最後にオチをつけようとするのは、この子なりの気づかいなのかもしれない、とは思った。思ったけどその気づかいは要らないこともある。

「マシンガンズはあたしは守備範囲外だけど、智之なら全部聴いてるよ。あいつ、正真正銘オタクだから」

総一郎の顔つきが変わったのは、その瞬間だったと思う。

「そんなん聴くんだ、あの人」

「ロックなら何でもいいみたいよー。聖飢魔Uのこの間出たアルバムは、買おうかどうか迷ってたっぽいから、貸してやったら喜ぶと思う。あいつの聴きたいもの全部買ってたら、いくらあっても足りないからね」

「マジぃ?!」

「こんなとこで嘘ついたって何にもならないって」

言いながら、あたしはどことなく呆れていたのかもしれない。そんなに露骨に安心しなくても大丈夫だってば、という感じで。とはいえ、「RACHESISの佐野智之」はなんだかんだで有名人だし、「凄いバンドやってたおっかない人」みたいなイメージもあったとは思うから、総一郎なりに居心地は悪かったのかもしれない。だからまあ、そんなに悪い呆れ方じゃなかったと思う(ヘンな日本語だ)。

 漠然とだけど、この子が何者かは掴めたのかな、という感じだった。所詮あたしは、音楽か仕事を通じてじゃないと物事に切り込めないし、だったらこれで十分だ、みたいな。

「総一郎、あんたね、最初っから思ってたけど、日本語の発音がすごく綺麗だよ。智之は絶対、そこを買ってると思う。そんだけヨロシクね」

そして――言うのも何だがあたしはスタッフであってメンバーではないので、核心の部分に触れることは出来ない。出来るのは手助けまでだ。だから正真正銘のフォローはそこだけにしておいた。

 立ち去ろうとしたあたしに向けて、総一郎は、「どーも」と半端な感じの笑みを浮かべた。半端っていうのは、笑いにも出来ずシリアスではもちろんなかった、ということだ。笑いを作ろうとしたのはシリアスから逃げたいからであって――どうやら正真正銘、この子はシャイなんだ、とあたしは痛感した。

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