ナタリー・ペシャラ&ファビアン・ブルザ(フランス)

【主な成績】

14ソチ五輪4位、1214世界選手権3位、11欧州チャンピオン

 

 小粋でお洒落で洗練されたエスプリと、ポップでモダンでアヴァンギャルドなセンス。そんな、あまりにフランスらしい持ち味のカップルです。そして、それらを大きな流れのある、大きな技で見せていけるのは、流石に元ザズーイの門下生。どんなにアクロバティックなことをやっても下品にならず、コミカルな表現も良い意味で綺麗に見せることが出来るのは、氷の上のすべてが、フランスらしい洗練と、これ見よがしではないけれど、確かな華で彩られているから。個人的には、最もフランスらしいフランスのアイスダンサーだと思っています。

 

 

0405シーズン

OD「チャールストン/クイックステップ/フォックストロット」、FD「キャッツ」

 ODは下位ながらに洗練された愛らしい作品。FDはフィギュアではお馴染みのテーマですが、彼らは衣装からテーマまで、すべてを見事に「猫」として演じました。音楽も、キャッチーで美味しいところよりは、猫らしく聞こえるところを選んだ印象があります。ワンハンドのリフトでナタリーが背中を丸めるところなんかは、もう、なりきってましたね。思わず「賢い猫のリフト」と命名してしまった(笑) 鼠を捕る賢い猫は、首根っこを捕まえると体を丸めるって言うでしょう?この猫は2匹とも、やや気位の高そうな美形猫でしたけどね。

(振付:ローリー・メイ他)

 

ODhttp://www.youtube.com/watch?v=qdxBV6p3tq0&feature=player_detailpage

FDhttps://www.youtube.com/watch?v=g1_vZFOorAM

 

 

0506シーズン

ODSan-A-SambaAnd I Loved HerFrom Chana」、FD「レ・ミゼラブル」

 ODは瀟洒なリゾートの雰囲気で、ラテンっぽくもあったけど、南仏、ニース辺りのイメージでもいけそう。FDは、作品そのものを演じているわけではありませんが、あの時代、あの世界の何処かには居ただろう、と思わせる雰囲気作りが見事。シンプルで衒いの無い構成ですが、彼らの持っている質の高い技術を、上手くアピール出来る作品だと思います。ゆったりした音楽に合わせて、堂々と踏むステップシークエンスがハイライト。地味に面白かったのは、パイプ椅子を使ったEXで、まさかあんなものが、あれほど滑るとは思わなかった。ある意味アイデア賞ですが、彼らは一体、どうしてあれが滑ることを知っていたんだろう(笑)

(振付:ローリー・メイ他)

 

ODhttp://www.youtube.com/watch?v=idpGmEU0j0Y&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=I2rLoOX3sWE&feature=player_detailpage

 

 

0607シーズン

OD「タンゴ」、FD「フォー・シーズンズ」

 ODは、衣装からして流石フランス、という洗練されてお洒落なもの。情念とかドロドロした世界を演じるよりも、妖艶な夜のムードを演出するダンスです。一転してFDは不思議系ポップアート調の作品。かなりの大技も色々と入っていますが、テンションを上げすぎないで、ある意味では淡々と、軽やかに踊り続ける。その気になればベタベタの綺麗系もいけてしまえる美男美女カップルですが、こういう雰囲気の方が似合います。

(振付:ローリー・メイ他)

 

ODhttp://www.youtube.com/watch?v=ThwjU1Ocl90&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=N-awG7RsEcE&feature=player_detailpage

 

 

0708シーズン

OD「スパニッシュ・フラメンコ」、FD「狂気」、EX「マミーズ」

 ODは洗練、FDはポップという演じ分けは昨季と同じですが、このODは出色の出来栄えでした。激情の世界というわけではないけれど、色で言えば艶やかな暗紅色のオーラ漂う演技。ポジションの美しさや踊りの歯切れの良さもさることながら、衣装と一体化させたナタリーの扇子技が魔法のようです。そのほかにも、序盤の舞うようなローテーショナルリフト、そのポーズだけ切り取っても彫刻のように美しいストレートラインリフトと、見所はたっぷり。FDは淡々とした電子音楽に合わせて、「際立って斬新ではないけれど、中程度に新しいことを絶え間なくやる」という感じ。ポップとアヴァンギャルドの中庸を行く匙加減がいい感じで、モダンな割には観易い作品でした。EXはタイトル通りミイラをモチーフにした作品で、テンポの良いエンタテイメントです。

(振付:ローリー・メイ他)

 

ODhttp://www.youtube.com/watch?v=rTxiBHBHDkg&feature=player_detailpage

FDhttps://www.youtube.com/watch?v=XnXNZOFzocU

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=gzO1Kj7gOgI&feature=player_detailpage

 

 

0809シーズン

ODIt’s not mean a thing」、FD「ライフ・イズ・ビューティフル他」

 ODの時代設定は192040年代とのことですが、彼らが選択したのはリンディホップとブルース。でも、どうしても「レトロモダン」になってしまいますね。洗練された明るい雰囲気のステップには、彼らの持ち味が十分活きていましたが、良くも悪くも垢抜けすぎていて、テーマとの関連ではどうなんだろう…という印象を残しました。FDのテーマはピエロ。序盤はゆったりした音楽を長いストロークのステップで奏でるところから始まりますが、ここの部分が、十分柔らかくしたバターをパンの面に塗っていくようで、何とも美味しい。そこから仕掛け(これがどうなっているのかとても不思議)を使ってファビアンの衣装の色を変えて、一気にアップテンポに。そこからは、キュートでコミカルなダンスになります。とても明るくて華やかで、観ていて心が軽くなるような上質のユーモアに満ちた作品でした。

(振付:アレクサンドル・ズーリン)

 

ODhttp://www.youtube.com/watch?v=boTVyJ6wcLg&feature=player_detailpage

FDhttps://www.youtube.com/watch?v=uBBSXsfBdyA

 

 

0910シーズン

ODThanks God, I’m a Country BoyRivers and Dolly PartonIt’s Not Over NowFD「レクイエム・フォー・ドリーム」、EX「アンディ」

 彼らの滑りに「流れ」だけでなく「広がり」が生まれたシーズンだったと思います。ODはアメリカン・カントリーで、確かに「ヤンキーポルカ」的な軽やかさやリズミカルさ、コミカルさはある。でも、それと同時に、広々とした空間の広がりを感じさせる滑りでした。プラス、彼ら一流の洒脱さ、洗練されたムードもあって、なおかつ実は細かいところが滅茶苦茶凝っていて。FSは「時間」をテーマに、とてもシリアスでシャープな演技。時計をモチーフにした動きが随所に散りばめられているのはお約束ですが、それよりもスピード感と演技の流れが、より一層「決して留まることも戻ることも無い時間の流れ」というものを象徴していたように思います。

先輩であるイザベル&オリヴィエがそうであるように、彼らもまた、相当ダイナミックな技をやっても、そこだけ浮き上がるということが無い。ハイライトをつけつつも、一息に流れてゆく。その流れが、残酷なほど鋭い。でも、動きそのものを観ていると、彼らが今までやってきたことを基本形に、すべてにアレンジを施して、かなり新しいことをやっているんですけどね。恐らく彼らがやってきた中で、最も尖鋭的な作品だろうと思いますが、これほどモダンなものをこれほど観易く滑れるのは、彼らのセンスのなせる技だと思う。

そしてEXは、実は冒頭から素晴らしく豪快なことをいっぱいやっているんだけど、あまりに軽やかであっけらかんとしているので、まるでステップのように見えてしまう。コミカルでエンタテイメントとして良く出来た、EXとしては王道の作品ですが、それに留まらず、彼らの良いところが満載されている良作だと思う。

(振付Kader Belmoktar

 

ODhttp://www.youtube.com/watch?v=MuRVQvXNTlo&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=cBG6JWiVhWE&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=3jDxPueLoUc&feature=player_detailpage

 

 

10-11シーズン

SD「ドクトル・ジバゴ」、FD「チャップリン・メドレー」、EX「ジャングル・ジョージ」

 新種目のSDは、思い切って「誰もワルツだと思っていない音楽を1曲だけ、ワルツとして使う」という選曲。実は、エレメンツ以外のことをやっているパートが非常に短い作品です。冒頭はいきなりトゥイズル〜ミッドラインステップと続きますし。ただ、切れ目の無い音楽に合わせて美しい流れを描いていくので、あまり「ここがこれ」と思うこと無く、一気に堪能出来る構成。曲想も含めてシックなプログラムです。

 FDは、チャップリンというモチーフと、ロマンチック&ノスタルジックな音楽が、彼らの持つ軽やかさと流麗さ、コミカルさと上品さにベストマッチ。更にチャップリンをやりすぎないことで、全体のテイストをとても良く纏めていたと思います。コメディに寄せず、豊かな表情とちょっとした仕草で味付けをして、トータルで見るとなかなかエレガントなプログラムではないかと。

曲は緩---急と流れるように繋いでありますが、そこで敢えて「切り替えました、さあ」という感じではなく、ごく自然に表情を変えていく。馴染むようにエレメンツを配置してある。構成、表現、エレメンツのひとつひとつまで、見れば見るほどよく出来た作品だと思います。よく出来すぎていて、さらっと観てしまえる。

そこから一転してEXは、大掛かりなエンタテイメント作。ナタリー演じる探検家がジャングルでファビアン演じるターザンに助けられて…というありがちな設定ですが、FDでは抑え目にしていたコミカルさを全開にしつつ、リズミカルに、軽やかに演じます。ワニの風船を退治するファビアンが、ある意味秀逸(笑)

(振付:ローリー・メイ他)

 

SDhttp://www.youtube.com/watch?v=pxhcrd4oriE&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=BEFQ09vRsD4&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=m_-roTHIU4U&feature=player_detailpage

 

 

1112シーズン

SD「マシュ・ケ・ナダ/Batucada/レアル・イン・リオ」、FD「ファラオ・アンド・マミー」、EX「ダーティ・ダンシング」

 ラテンコンビネーションのSDは、思い切ってサンバの三連。上半身を思い切り使って踊っている箇所は、ピンポイントで少々あるくらいなんですが、その少々が飛び切り印象的。あとは、ダンスホールドをきちんと組んで、弛まずステップを踏んでいく。そのステップが、すべてサンバになっていく。そんな、アイスダンスの極上の楽しみを凝縮した作品です。

 それと同じことが、エジプシャン・テイストのFDにも貫き通されています。アラビアもののアイスダンスとしては、かつて無かったほど洗練されてスタイリッシュ。それは彼らの、従来からの持ち味です。使いまわしのリフトでさえも、指先や手首のちょっとしたニュアンスで変えていく。それを、粋と言うことは簡単です。でも、何よりも粋なのは、何のエレメントでもないリンキングフットワークに、はっとするほどお洒落なステップがたくさん散りばめられていること。アイスダンスの醍醐味、ステップはこんなに華やかで美しい。このシーズン、彼らは全身でそのことを言い続けます。

 EXもまったく同じですね。やはり、踊ることの楽しみ、たくさんのステップが散りばめられています。映画の題材通り、爽やかで甘酸っぱい青春のムードがあり、振付はプロム風。でも、やっているのは大人なので、ニュアンスのつけ方が色っぽかったり、いなせだったり、単なる青春ドラマではないんですよね。

(振付 SD:イリヤ・イフライモフ  FDKader Belmoktar

 

SDhttp://www.youtube.com/watch?v=SP2p09FTAis&feature=player_detailpage

FDhttps://www.youtube.com/watch?v=_VIXdhXcAWM

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=-J-YehAKZMM&feature=player_detailpage

 

 

1213シーズン

SD「パリの喜び/パリの空の下」、FS「ローリングストーンズ・メドレー」

 基本的には、私はSDよりも以前のCDの方を推奨したいのですが、SDの思わぬ効用で「ポルカとかワルツとか言われても、合わせる音楽はいくらでもある」ということが明らかになりました。彼らはフランスらしく、カンカンとシャンソンを使っています。軽やかでお洒落な雰囲気の滑りはお手の物ですね。FDもやはり軽妙でテンポの良い作品ですが、このシーズンは上位にずらりとドラマチックな美しい作品が揃ったせいで、過剰に薄口に感じられたかも。勿体無いです。

(振付 SD:イリヤ・イフライモフ  FDKader Belmoktar

 

SDhttp://www.youtube.com/watch?v=qTLl4gL1-Io&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=NuICU0cevxI&feature=player_detailpage

 

 

1314シーズン

SD「ロキシー/Sing Sing SingMein Herr」、FD「星の王子様」

 私は彼らの、まさしくシャンパンの泡のように華やかで軽やかなフィンステップが大好きだったのですが、それに劣らず、このSDのフォックストロットも大好き。さりげない色気を感じさせて、立ち居振る舞いがエレガントです。FDは、一点の曇りも無く、フランスのエスプリが匂い立つよう。決して安直なエンタテイメントではないけど、上質のユーモアとペーソスを感じさせて、さりげないようでこだわり抜いた洒脱さを見せてくれる。言ってみれば、冒頭に挙げた彼らの特徴そのままです。でも、それを最後に凝縮して持ってきてくれたのは嬉しかった。薔薇そのもののようなナタリーの美しさと、ややもの悲しく、暖かなファビアンの存在感。ジャンルさえも違う四曲を、ひとつの物語として纏めた演技力。すべてが名人芸の域で、まるで上質のポップアートを観ているようでした。

(振付 SD:ローリー・メイ、FDJulien Cottereau

 

SDhttp://www.youtube.com/watch?v=yMT8fTe5lVY&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=xZyHpQO8uzo&feature=player_detailpage

 

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