陳露

【主な成績】

94リレハンメル五輪・98長野五輪銅メダル、95世界チャンピオン

 

 嫋々とたおやかで、何を演じても最上の意味でオリエンタル。一種とらえどころの無い、けれどとても柔らかい動きが美しい人でした。彼女の動きは止まらないんですよ。水の流れか、風にはためく天女の羽衣のように、一瞬ごとに形を変えながら移ろっていった。そしてその合間、ふっと息を止めた瞬間に、何気ない目線に、東洋の香りが漂うんです。これ見よがしに「中国っぽいとされる」動きをすることは、一切無い人だったんですけれども。

 

 

93-94シーズン

SP「月の光」、FS「風の谷のナウシカ」、EXGone but not forgotten

 SPは、地味に邪道かもしれません。繊細で透明な楽曲ですが、敢えてストレートに一息に、けっこうスピーディに演じていますから。思えばこの時期の彼女は、比較的大柄だったこともあり、スポーティでスケールの大きい演技が持ち味だったんですね。FSもいきなりダブルアクセルから入りますが、そのインパクトたるや大ですから。ただ、オープニングテーマを使ったパートやリック・ウェイクマンの楽曲を使ったEXでは、清浄な色香を漂わせながら、羽衣のような美しい動きを見せてくれます。

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=gUnl7PMCbR8&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=wOl2Gzt2a_s&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=Y-8_bCOs3N8&feature=player_detailpage

 

 

94-95シーズン

SP「メンデルスゾーンのピアノ協奏曲第一番」、FS「ラストエンペラー」

 SPは相変わらずの一気呵成。FSは敢えてオリエンタリズムを強調した印象ですが、繋ぎのステップやアームスの使い方など、独創的で面白い動きが多用されています。キャッチーではない音楽を印象的に響かせるために、細かい心配りをたくさんしている、というか。ただ、彼女のキャリアをトータルで見た時には、特異点のような作品であり、これで以て世界チャンピオンになったのか、と思うと、やや不思議ではあります。

(振付:トーラー・クランストン)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=bbOfhQFjFrI&feature=player_detailpage

FS: http://www.youtube.com/watch?v=MzUzMOdtqNg&feature=player_detailpage

 

 

95-97シーズン

SP「春のそよ風」、FS「ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番」

 誰もが言うことですが、彼女の芸風が確立されたのはここであり、キャリアのピークもここだったんだろうな、と感じさせるシーズンです。演技のすべてが、蕩けるように柔らかい。ヴァイオリンとギターを用いたSPはとてもオリエンタルな曲想ですが、そのオリエンタルさと、上半身、特にアームスの優雅な動きが絶妙の相乗効果を奏でています。スピンの出など、ディテールの部分が絶品。そして彼女の揺るぎもしない代表作であるFSには、東洋の花がゆっくりと、大輪の花をほころばせていくような、何とも言えない趣があります。何かがゆっくりとほどけていって、ぱあっと光が広がるような。ラフマニノフのピアノ協奏曲にしては劇的ではない編曲なのが、かえって効果的で、流れるような振付の中で一瞬止まるところが、逆にドラマ性を感じさせてくれます。

(振付:サンドラ・ベゼック)

 

SP: http://www.youtube.com/watch?v=7bt98gppjr0&feature=player_detailpage

FS: http://www.youtube.com/watch?v=ZCRaoNfU0r8&feature=player_detailpage

 

 

97-98シーズン

SP「アディオス・ノニーノ」、FS「バタフライ・ラヴァーズ」、EX「バタフライ」

 どん底を経験して這い上がったシーズン、彼女はめっきり老けて、バッサリ切ってしまうなら、ある種業の深そうな顔立ちになっていました。そのせいもあってか、定番ナンバーの筈のSPがやたらといわくありげ。更に彼女がそれを演じきっているように見えるのが、怖いと言えば怖いし、流石と言えば流石だし。でも、FSまで行くと、ファンが演技を映像で観ながらつらつらと思うそんな「物語」が、すべて吹っ飛ぶ気がするんですね。オリエンタルな曲やプログラムを多々使い、東洋美で知られた彼女でしたが、中国人の作曲家が作り演奏者が奏で、テーマは中国の有名な説話という、正真正銘チャイニーズ・テーマを持ってくるのは、実は初めて(「レストエンペラー」は中国映画ではないし坂本龍一なので)。不安定な動きのたくさん入っている振付です。上半身を大きく倒したり、この時代の作品にしては上下動が多いというか。それまではアームスだけだった「羽衣」の動きを、全身を使ってやっているというか。それだけ何かを投げ出しているというか。だから正直不安定で、ひやりとする箇所もあるんです。でも、それを倒れずに、優雅に滑り切ったのが、このシーズンの彼女だったなと。そしてEXでは、すべてから解放されて、晴れやかな蝶を演じてくれています。

(振付:サンドラ・ベゼック)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=cxER4UaFxNA&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=OYzxIjEewuk&feature=player_detailpage

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