キム・ヨナ(韓国)

【主な成績】

10バンクーバー五輪金メダル、0913世界チャンピオン、0809四大陸チャンピオン

 

 繊細優美で儚げなアジアン・ビューティですが、それが時折、さらりと翻って悪女の顔になるのも魅力的。激しさとたおやかさ、哀憐と可憐、清楚と妖艶。色々な表情をしますが、何をしていてもわざとらしさが無くて、音楽を聞きながら息を吸って吐けば、それでもう表現が出来ている、というくらい、すべてがナチュラル。でも決して「素」ではないんですよね。よく観れば、物凄く的確に音をとらえる動きをしているし、表情はプログラムの中でも次々と変わっていくので、どれが素顔なのかはさっぱり分らない。でもそれは、表現者として文句無しに優れている、という証です。

 

 

0607シーズン

SP「ロクサーヌのタンゴ」、FS「あげひばり」

 SPはジュニア時代から愛用してきた作品で、最初の頃は正直、こまっしゃくれた印象が強く残りました。確かに振付はややあざといし、技術の正確さをこれでもか、とアピールする内容でもある。だけど、こなれてきた頃には、「子供だと思わないでね」という、これ以上は無い自己アピールになっていた感があります。FSは一転して少女らしい、清楚・可憐を前面に押し出した作品ですが、何とない呼吸の感じが、そこはかとなくオリエンタルでもありますね。クセのあるSPのあとでやると、清涼感倍増という感じで、組み合わせとしてもとても良かったと思う。

(振付:トム・ディクソン)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=8dYCpF0uQxU&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=vp7N3NrEOo0&feature=player_detailpage

 

 

0708シーズン

SP「こうもり」、FS「ミス・サイゴン」

 SPはお馴染みのナンバーですが、音の捉え方の上手さが際立ちます。ワルツのはっきりしたリズムを的確に踏まえて、ややかぼそいながらも、よく踊っていたと思う。そしてFSは、彼女の美点のすべてを集約した傑作。透明で儚げで、可憐さを通り越して憐れさを感じさせる雰囲気は、まさしくミス・サイゴンのヒロインそのもの。指先まで音楽に融けきった動きは、ひとつのプログラムの中で2度同じことをしない、という、この時代の中では珍しくなってしまったことを、きっちりと守っていた。どこにも引っ掛かりがなくて、嫌味を感じない美しい演技、でも、観終わるとしみじみとしてしまう、情感豊かな表現。それは、師であるブライアン・オーサーから間違いなく受け継がれた、かけがえのない財産だと思う。

(振付:デヴィッド・ウィルソン)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=jHebMw1W748&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=1BIT_fTeQaY&feature=player_detailpage

 

 

0809シーズン

SP「死者の舞踏」、FS「シェヘラザード」、EX「ゴールド」

 幼かった表情が、ぐっと大人びて、垢抜けたと思います。SPでは、静けさの中に恐ろしさや攻撃性も秘めた音楽を、時に笑みさえ浮かべながら、艶やかに演じていました。滑りこむに従ってそこに余裕が生まれ、狡猾な悪女の顔もするようになったのは、見事としか言えない。身震いするような迫力も兼ね備えた、非常に危険なプログラムです。FSは引き続きのアジアン・ビューティ路線。交響曲のダイナミックさやスケール感を表現するには、まだまだ線が細く、スケール感が足りない印象はありますが、彼女がやると何でも自然で、ありきたりなアラビアポーズ(とされるもの)も嫌味が無い。演じ方はある種の典型ですが、ふとした瞬間の妖艶な表情や、ろうたけて儚げな雰囲気は美しくて、上手く自分の持ち味で色をつけながら演じていたと思います。EXについては、まあ、並。競技での滑りがあまりに素晴らしかったのと、この音楽はかつてクリスティ・ヤマグチがあまりにも美しく滑ったのと、理由は二つです。

(振付:デヴィッド・ウィルソン)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=56NrvJJzzOs&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=Pk-V-FCW6RM&feature=player_detailpage

 

 

0910シーズン

SP007 メドレー」、FS「ガーシュウィンのピアノ協奏曲」、EXDon’t Stop The Music」「タイスの瞑想曲」

 このシーズンの彼女を観ていて痛感するのは、彼女の魅力は、エレメンツの何とかではなく、滑っている瞬間のふとした表情であったり、緩急をつける呼吸であったり、止まりそうで止まらない、滑りのカーブであったり…そういうさり気ないところに凝縮されているんだ、ということ。SPは艶やかで曰くありげなムードがいかにもボンドガールらしく、2シーズン目となる悪女も板についていた。そしてFSは、たおやかな水の流れのような演技でした。この音楽をひと口で言うのはとても難しい。エレガントで、モダンで、心持ちアンニュイで。その難しさを、彼女一流の優雅さで纏め上げて、見事に滑りきっていた。でも、決して「何を滑っても同じ顔」じゃないんですよ。この曲にはこの曲のための美しさが用意されている。

最初のEXはダンサブルでコケティッシュ。ある種典型的エキシビジョンなんだけど、このシーズンの彼女は何を滑っていても柔らかく、女らしく、若干の危険さもあって、このプログラムもそうだった。それをどう演出するかで、全然違う顔をするんですけれども。その、同じところと変わらないところを見比べているだけで、まったく飽きなかった。そして2曲目は、私が内心で、ずっと彼女に滑って欲しいと思っていたナンバー。期待していた路線とはすこし違うのですが(期待は競技用プログラムの方でしていたので)、静かで穏やかで水のようにたおやかで…という、彼女の王道中の王道。ゆったりと音楽を呼吸するような、何とも言えず味わい深い作品でした。

(振付:デヴィッド・ウィルソン)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=0xeO1qWH1JA&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=6uLhN1jH6uo&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=j8c2vS7urQk&feature=player_detailpage(Don’t stop the music

http://www.youtube.com/watch?v=L7MiDoHzajk&feature=player_detailpage(タイスの瞑想曲)

 

 

1011シーズン

SP「ジゼル」、FS「オマージュ・トゥ・コリア」、EX「バレットプルーフ」

 SPは、ちょっと今までのフィギュアスケートの中にはなかったタイプのジゼルかもしれません。何しろ、音楽はインパクトの強いところを集中して使い、繊細で儚げなムードよりも、迫ってくるものを強調して…そう、明らかに彼女のそれは、ジゼルではなくてミルタでした。ハイライトは、このシーズン、集中強化したスピンで、特にレイバックの速さと華やかさは特筆すべきだったと思う。FSは、結局未完成のままだったこともあって、コメントのしようがありませんが…因みにEXはボンドガールの発展系なのか、挑みかかるような目つきが魅力的。良い意味で、悪女がよく似合うスケーターだと思います。

(振付:デヴィッド・ウィルソン)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=lpZnA8olPNQ&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=QOpGixGWeMU&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=D0i0JTVttos&feature=player_detailpage

 

 

1213シーズン

SP「キス・オブ・ザ・ヴァンパイア」、FS「レ・ミゼラブル」、EXAll of me

 ややレトロで大仰な音楽で始まるSPも、この年の大ヒット映画をフィーチャーしたFSも、シンプルと言えばシンプルで、オーソドックスです。でも、特にFSが、「ザ・フィギュアスケート」だと思う。感動的な美しい音楽とひとつになって滑り、舞い、跳ぶ。文章にするとこれだけですが、まさにこれだけのことを、最高のクオリティで体現した演技でした。観れば観るほど、ああ、これがフィギュアスケートだ、こういうものだと納得してしまいます。一転してEXは、マイケル・ジャクソン風の衣装、でも音楽はフランク・シナトラ風。高くて幅のあるジャンプに定評のある彼女ですが、ずっと帽子を被ったままなので、ジャンプはダブルまで。帽子技が粋でいなせな小品です。

(振付:デヴィッド・ウィルソン)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=6MfgGsf0cZA&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=1FzptJZwyB0&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=gauEM8QCZ6M&feature=player_detailpage

 

 

1314シーズン

SP「悲しみのクラウン」、FS「アディオス・ノニーノ」、EX「イマジン」

 ある意味、久し振りのアジアン・ビューティー路線だったのではないか、と思います。別にそういう演出があったわけではありませんが、彼女の持っている繊細さや優美さ、幽玄の感じが良く出ていたと思うんです。SPでは悲しさ、FSではやや翳りのある艶やかさ。ともに静かなプログラムですが、そういう中で匂い立つように、アジア的な美しさが感じられました。EXは、これも久し振りに小細工無しの、しっとり系女性ヴォーカル曲ですが、以前は大して面白くも無かったこの路線が、しっくりとハマって見応えがあったのは、表現者としての彼女が随分成長したからなのでしょうね。欲を言えば、ベストの状態のFSを観たかったのですが…

(振付:デヴィッド・ウィルソン)

 

SP: http://www.youtube.com/watch?v=yqTkN1goOmk&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=hgXKJvTVW9g&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=AtPHG6W3FTA&feature=player_detailpage

 

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