シニード&ジョン・カー(イギリス)

【主な成績】

10バンクーバー五輪8位、09世界選手権7位、0911欧州選手権3

 

 彼らの演技の中には「アイスダンスとは、こういうものだ」という納得感と「こんなアイスダンスもあったのか」という意外感が、絶妙のバランスで溶け合っています。アイデアは豊富で、やっていることはいつも独創的。でも、「ステップを踏んで、踊る」という、アイスダンスの基本の基本を、きちんと押さえてそのアイデアを具現化していく。だからこそ、冒頭のような感覚を味わえるわけです。血の繋がった姉弟でありながら、スタイリッシュ系の姉シニードと、ワイルド系の弟ジョン、向かい合った時の個性の差は歴然。だけど、それを対立させないで演技に昇華させる術も知っている。斬新さを求めて観難いことをしないエンターテナーでもある。アイデア以上に、そういうところに懐の深さを感じさせるカップルでもあります。

 

 

0304シーズン

ODMan with the HexLover lies」、FD「マトリックス」

 デビューシーズンながらに、冒頭に挙げた持ち味はすべて、完成されていました。例えばODで、ハイドロブレーディングをしながら踊っちゃうところとか。FDで、ベーシックなリフトから入ったのに、いつの間にか変化して、観たことの無いリフトに変わっちゃっているところとか。或いは、誰も使わなかったようなところで、凄く基本的なことをやっているとこととか。10位台ながらに、スタンディングオベーションの栄誉を受けたのは、それがいちいち、基本を押さえていて、なおかつ面白い演技だったからでしょう。元気で活き活きとしたODも、重苦しい音楽に合わせたメタリックなFDも、そんな爽快な驚きに満ちていました。

 

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=jTEBO6f3kp8&feature=player_detailpage

 

 

0405シーズン

ODBaby it’s cold outsideMr.ピンストライプスーツ」、FD「ストリート・ダンス」

 どのカップルも、かもしれないけれど、課題のせいで、ODを前のシーズンと差別化するのは難しかったかもしれない。ただ、元気に踊りまくるナンバーは彼らには最も似合います。そして、やや垢抜けなかったODに対して、FDはぐっと洗練された、粋なダンスナンバー。うっかり被ってしまいそうなテーマを、見事に踊り分けてくれたシーズンでした。

 

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=J0zKDx6V1cc&feature=player_detailpage

 

 

0506シーズン

OD「チャチャ/ルンバ/サンバ」、FD「スコティッシュ・メドレー」

 ODにはシニードの個性が活きていた。彼女はオフアイスではモデルの仕事をしているんだそうですが、確かにとてもスタイリッシュでちゃきちゃきなムードの女性。それがそのまま、プログラムの雰囲気です。その一方で、このプログラムには、彼ららしい嬉しい驚きも溢れている。乱発されて食傷気味だったドーナツポジションを、アクセントのつけ方ひとつで斬新に見せてくれたり、「観たこと無かったけど、確かにこれはステップだ」という動きがあったり。振付をしたクリストファー・ディーンの手腕も大きいのでしょうが、彼も振付けていて、こんな風にアイデアを体現してくれる同国の後輩の存在が嬉しかったんじゃないかな(とは言っても彼らはスコットランド人で、ディーンは多分イングランド人だと思うのですが)。一転してFDは、彼らのお国の音楽を使った、素朴で明るく、生命力に溢れた作品。最初からダイナミックなリフトで観客を驚かせてくれますが、基本はそれよりも、ひたすらステップを踏んで踊る、アイスダンスの基本動作に、ちょっとしたアクセントを利かせて、楽しく見せること。それで通した4分は、アイスダンスの根源の喜びに満ちた時間でした。

(振付:クリストファー・ディーン)

 

ODhttp://www.youtube.com/watch?v=0TpCARjYOx8&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=vA1GQM3Zkn8&feature=player_detailpage

 

 

0607シーズン

ODTango Verano Porteno」、FD「ラスト・オブ・モヒカン」

 ODのタンゴは、姉弟だけあって、流石に色気は無いですが、パワフルでアクセントのつけ方が上手い。初挑戦となるドラマチック系のFDには、年々ワイルドさを増していくジョンの逞しさ、力強さがとても良い形で活きていました。音楽の方向性はがらりと変えても、表現の方法論は変わらないのもまた魅力。そして、新しいコーチであるプラトフの下、技術的に一回り洗練されて、今まで出来なかった見せ方を会得したシーズンでもあります。

 

ODhttp://www.youtube.com/watch?v=lW01eJIsRvk&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=YSG1mIhfMSw&feature=player_detailpage

 

 

0708シーズン

OD「スコティッシュ・ハイランド」、FDThe Landing

 民俗舞踊がテーマだったODでは、以前にFDで使ったものよりも、更に一段、フォークロア色を増してのスコティッシュ・ダンス。ジョンは衣装もキルトでしたが、彼はこれ、オフアイスでも公式の席で着ているみたいです…というのはさておき、とても力強くて明るい、楽しいナンバーです。FDはエニグマの音楽で、ミステリアスなSF。大きな「山」はありませんが、機械的でシャープな動きを次々に重ねていく、その動きのひとつひとつが斬新で、最後まで飽きない、という

 

OD: http://www.youtube.com/watch?v=qL8WYZPtWwo&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=aUokChzk0Yc&feature=player_detailpage

 

 

0809シーズン

FD「リンディホップ/ウェストコートスウィング」、FDRuled by Seacrecy

 圧巻だったのはOD。躍動感がある、という言葉も吹っ飛んでしまうくらい、溌剌としていて、陽性のエネルギーを振りまきながら、元気に踊りまくっていた。一転してFDは、静かでシリアスな音楽に合わせて、ドラマチックな滑りを披露。でも、ドラマチック系の作品、彼らで言えば「ラスト・オブ・モヒカン」にあるようなあざとさは感じさせない作品なんですよ。やっていることのひとつひとつは、特に斬新というわけでもないんだけど、時々はっとするものを配している。そして、その気付きの連続と、シャープで途切れのない滑りの流れで、一気に4分間を見せてしまう。その「流れ」そのものが、静けさの中にもドラマを感じさせる。そういう、ベテランならではの緻密さを持った作品です。

 

OD: http://www.youtube.com/watch?v=yvaQWmdYYWY&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=9lLdqw_5Jw8&feature=player_detailpage

 

 

0910シーズン

ODI’ve been everywhere」、FD「クローリング」

 ジョニー・キャッシュのナンバーを使ったODは、歌詞の内容とリンクしているのか、ヒッチハイカー(ジョン)とドライバー(シニード)というのがコンセプト。彼らに最も似つかわしい、ステップの楽しみと、ちょっとしたアイデアが満載の楽しい作品です。最も一般的な意味で、アメリカンの雰囲気を出し切っていたのは彼らだったんじゃないかと。FDはリンキン・パークのナンバーから、徐々にテンションが上がり、クレッシェンドがかかっていくという難しい音楽に乗せて、彼らにしては正統派の滑りだと思う。系統としては、昨季の延長線上。傾向としては、もっとダイナミック。彼らの実力を以ってして、やっとぎりぎり滑りきれる難曲、という感じではありましたが、何をやっても彼らは外さない、ということも痛感した。

 

ODhttp://www.youtube.com/watch?v=VLik1xClfXg&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=K39tA_8zjXQ&feature=player_detailpage

 

 

10-11シーズン

SDAt Last/クイックステップ」、FD「エクソジェネシス」、EXMad Men

 SDのハイライトは、彼らが言う通り後半のクイックステップで、このパートの軽快さは流石という感じ。ただ、前半と分離しすぎている印象があるのと、やはり彼らはビートの強い音楽を使ってナンボで、ワルツのカップルではないかな、とも思います。FDは静かな音楽ですが、かなり頻繁に、目を奪われる動きがあります。1番目立つのは序盤にあるハイドロブレーディングだと思うんですが、エレメンツでさえ無い、ちょっとした動きにもたくさんある。このハッとする感じを数えるのは、ある意味彼らのプログラムを観るいつもの醍醐味なんですが、曲が静かで構成がシンプルなだけに、散りばめられたそれらのポイントが程好く光を放っています。EXは、彼らのお得意なロボットマイム風で、小道具として椅子が登場。実は椅子は非情によく滑るんですが、実に上手いこと使っていると思います。

(振付:エフゲニー・プラトフ&ピーター・チェルニシェフ&ロバート・ロイストン)

 

SDhttp://www.youtube.com/watch?v=RjFCsrKlono&feature=player_detailpage

FDhttp://www.youtube.com/watch?v=6QaaBD0a1Gw&feature=player_detailpage

 

 

Pencil fill of Lead

 彼らの持ち味である、陽性のエネルギーをぎゅっと詰め込んで、ステップを満載して贈るプログラム。とにかくテンポが良くて、あっという間に時間が過ぎる。茶目っ気と悪戯心に満ちたディテールがいちいちツボで、誰もが思う「気が強くて怖いお姉ちゃんと、それに恐れ入る弟」をわざわざ演じてくれる辺りも、ニクイなぁ、と思わせてくれます。

 

http://www.youtube.com/watch?v=osD_B5HEvaA&feature=player_detailpage

 

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