高橋大輔

【主な成績】

10バンクーバー五輪銅メダル、10世界チャンピオン

 

 理想的なバランスで、アスリートとアーティストが同居しているスケーターだと思います。大概、どちらかが勝ちすぎているものなのですが、彼はいつでも、全身で音楽を表現し、尚且つ勝負の領域へ切り込んでいく。挑まなければ完成しない表現をしているというか。そんな彼を見ていると、きっとあんな曲も似合う、こんな曲もいいと、妄想が止まらなくなります。でもそれは、攻め続けているからこその表現でもあるのです。物凄くプロジェクションの強いスケーターなのに、何故かプロになっている姿が想像しにくい。絶対にそうなっても素敵な筈なのにね。とにかく、きっと最後の最後まで、飽きずに観ていられるスケーターでしょう。

 

 

03-04シーズン

SP「ナイヤ」、FS「パガニーニの主題による狂詩曲」

 中学生の頃から知っている大輔君ですが、はっとしたのはこのシーズンでした。当時はまだタラソワ・マジックという言葉も生々しかったですが、彼の「恥ずかしげもない」演技が最初に開花するのがここだと思うんです。特にFS。まず衣装が臆面も無くバルーンスリーヴ。しかもそれが妙に似合う。表情まで含めてとってもオーバーアクションなんだけど、それが何故かギャグではなくてはまってしまう。それはつまり彼のある時期までの特徴のすべてなんですけれど、それらはここにあったな、と。

(振付:タチアナ・タラソワ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=IcAr91dhaD4&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=0qE5A2sU8ps&feature=player_detailpage

 

 

04-05シーズン

SP「剣の舞」、FS「アランフェス協奏曲」EX「ノクターン」

 このシーズンの白眉は、他でもなく、没になったSPの「剣の舞」。あの早すぎるテンポに乱れも遅れも無くステップを合わせていった彼は素晴らしいと思いますよ。あまりにもせわしないプログラムだったかもしれませんが、その一気呵成な感じがまた良かった。それとEXはこのシーズンからしばらく愛用されますが、当時アイスダンサーにしかたったと言われていた彼の、流れるようなスケーティングが堪能出来る、何気に秀作です。

(振付 SP&FS:タチアナ・タラソワ、EX:高橋大輔)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=leFAgGvCRxs&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=1iGD1rWtJ8E&feature=player_detailpage

 

 

0506シーズン

SP「ロクサーヌのタンゴ」、FS「ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番」

 このシーズンのSPも、EXとして長らく愛用された、代表作のひとつです。確かに彼にはラテン調が似合いますね。タンゴの中ではドラマチックなこの音楽は特に。ただ、競技の中で何度もタンゴに挑んでいる彼ですが、第一弾となるこの作品には、特にタンゴらしい動きや雰囲気はありません。それよりもドラマチックで派手な音楽を上手く使っている感じ。FSも、まあよく出来てはいたけど、凡庸の域を出ないかな、という印象があります。

(振付:ニコライ・モロゾフ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=O1l46bYCoLQ&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=8yMxXxaSqHU&feature=player_detailpage

 

 

0607シーズン

SP「チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲」、FS「オペラ座の怪人」

 第一期高橋大輔の集大成は、ここにあると思います。特にFSに。最初は散漫な印象のプログラムでした。サウンドトラックの美味しいところをすべて切り貼りしたかのような編曲で、全体を貫くものが見えなかったから。ただ、その極端なあざとさが、当時彼の持ち味だったオーバーアクションと、絶妙にハマったんですね。滑り込めば滑り込むほど集中力が増して、その集中力がプログラムを貫いた。そうして、極めて劇的な作品が仕上がったわけです。感動するとかじゃなく、乗せられて、プログラムの流れのままに、こちらの気分まで盛り上がってしまった気がします。

(振付:ニコライ・モロゾフ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=sG1hKrx8uZ8&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=BdcQtdTuaRs&feature=player_detailpage

 

 

0708シーズン

SP「白鳥の湖」、FS「幻想序曲 ロミオとジュリエット」、EXBacheralette

 SPはヒップホップ調のアレンジですが、実は前半は意外とそれ系の振付は少なく、溜めて溜めてステップで踊りまくる感じ。そのあざとさが、いかにもモロゾフですが、盛り上がりました。ただFSまで来ると、ドラマチック&オーバーアクションの限界が見えた感じがします。ちょっと食傷気味で。ビョークのナンバーをフィーチャーしたEXは、歌声そのままにミステリアス。シャーマニックの領域には一歩及ばないけれど、なかなか面白い味わいです。

(振付 SP&FS:ニコライ・モロゾフ、EX:宮本賢二)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=4YCuZottNEc&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=dhYRFVjRiQg&feature=player_detailpage

EX: http://www.youtube.com/watch?v=MU0m_KNw1pM&feature=player_detailpage

 

 

0910シーズン

SPEye」、FS「道」、EXLUV SONG

 このシーズンは、すべてが傑作でした。音楽も振付も純国産で挑んだSPは、今までのオーバーアクションやモロゾフ風のステップと決別し、見事な緩急でタンゴのフィーリングを表現する、新境地にして傑作です。さりげなくあちこちに散りばめられたポーズやアクセントが絶妙に格好良くて、250秒の中で何度もはっとします。一転してFSは、キャラクターを強く押し出した、表情豊かな作品。これもまた、新境地です。というか、彼がこれほど器用な演技が出来るスケーターだなんて露程も思っていませんでしたから。パントマイムを交えつつ、喜怒哀楽くるくると表情を変える彼は、氷の上の人気者、ピエロ。でも、そのくるくるが、絶妙にエレメンツと融合しているのが、彼一流の表現だと思います。そして、ぎっしりと濃密なSPFSの後には、ピュアなスケーティングを味わう叙情的なEX。かつての「アダージョ」をブラッシュアップした印象ですが、息遣いが不思議とジャポネスクです。

(振付 SP:宮本賢二、FS:パスクァーレ・カメレンゴ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=zqRnsfMEP2I&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=n9zx_6PTmIQ&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=bqgzRJ_wzFA&feature=player_detailpage

 

 

1011シーズン

SP「ある恋の物語」、FS「ブエノスアイレスの冬」、EX「アメリ」

 笑っちゃうくらいベタベタでド派手なラテン音楽を使ったSPは、かつてのオーバーアクション路線の美味しいところを踏襲していますが、まあハマることハマること。某決めポーズが有名ですが、「普通やるか、それ!」っていうポイントを全部押さえて、期待通りに濃く演じてくれています。それでギャグになりすぎないのが怖い(苦笑)。FSはいずれもアイスダンサーと組んで、だったタンゴの第三弾ですが、しっとりした情念と、最低限のポイントでタンゴを表現する、押さえ気味の振付。でもそれを彼がやると、終盤見事に盛り上がるのが、高橋大輔の所以です。EXはステファンの振付師デビュー作のうちひとつですが、流石に経験が浅い人間が作ったもので、いかにも彼自身が滑りそうな感じ、敢えて言えば「Fix You」に似ている、静謐な印象の作品です。

(振付 SP:シェイリーン・ボーン、FS:パスクァーレ・カメレンゴ、EX:ステファン・ランビエール)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=m-6ERfRQGKY&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=2yv5SRgU2uk&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=ZKj69pyeY38&feature=player_detailpage

 

 

1112シーズン

SPIn The Garden of Souls」、FS「ブルース・フォー・クルーク」、EX「海の上のピアニスト」

 高橋大輔は何を滑っても高橋大輔で、最高だ、っていうことを証明したシーズンかもしれないですね。ミステリアス系のSP、アンニュイな筈のFS、どれも決して盛り上がる感じではないのに、ものの見事な集中力と吸引力で滑り切り、最後のステップで客席を熱狂させた。彼一流の表現のメソッドが確立されているのがよく分ります。そして同時に「この曲は、こうだ」という説得力もある。特にFSは、ブルースとしては正統な表現ではないと思うのですが。でも、表現力があるとはそういうことですね。何を滑っても、これは彼でなければという納得感と、この音楽はこうでなければという納得感が、ともに込み上げてくる。そして最後に恒例のクールダウン系EXですが、いっそ何も無いというくらいシンプルなので、滑りの美しさだけを堪能出来ます。

(振付 SP:デヴィッド・ウィルソン、FS:パスクァーレ・カメレンゴ、EX:宮本賢二)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=w2eMAmXfZrk&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=64QdXaZsUxs&feature=player_detailpage

EX: http://www.youtube.com/watch?v=aQRsOapwziE&feature=player_detailpage

 

 

1213シーズン

SP「ロカビリー メドレー」「月光」、FS「道化師」、EX「ブエノスアイレスの冬」

 正直、彼は高橋大輔なので、何をやっても凄いんだよね、というのが、結局没にしたSPの感想です。確かに、大勝負に挑むようなプログラムではないかもしれません。楽しいけどちょっと地味。でも、没にするには惜しい気もするんですよね。よく出来ていたから。ただ、モロゾフに振付けて貰いながら、当初から堂々と「脱モロゾフ」を宣言していた「月光」の方が、明らかに絶品なのは事実です。そして本当に脱モロゾフです。あざとく動きを止めて視線を引っ張るモロゾフ流ではなくて、流れそして駆け抜ける高橋大輔のステップシークエンスがハイライトでした。そしてFS…アリア「衣装を着けろ」に合わせた終盤のコレオシークエンスが、圧巻の一言に尽きました。まだこの要素を十分にこなせず、やっつけにしてしまったスケーターも多い中、オペラのストーリーに、アリアの内容に負けない見事なドラマを織り上げていた、最高峰のシークエンス。このシーズンの男子の演技すべてを合わせた中でも、断トツに観ていて甲斐のあるシーンでした。

(振付 SP1:阿部奈々美、SP-2:ニコライ・モロゾフ、FS:シェイリーン・ボーン、EX:宮本賢二)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=-HWaN7jMZ4o&feature=player_detailpage(ロカビリー)

  http://www.youtube.com/watch?v=FchiPNpBNYw&feature=player_detailpage(月光)

FShttp://www.youtube.com/watch?v=RtoUoiorSQ8&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=X-LvhUPsOO0&feature=player_detailpage

 

 

1314シーズン

SP「ヴァイオリンのためのソナチネ」、FS「ビートルズ・メドレー」、EX「ブエノスアイレスの春」

 地味で、ぱっとしないと思っていたSPなのですが、何度も何度も観て、五輪まで来た時にしみじみと、ああ、静かで綺麗な音楽だな、ということに気づきました。何故かと言うと、彼の全身が、とても美しく奏でていたから。そしてFSは…好き嫌いは別として、彼の最高傑作なんじゃないでしょうか。全体的にはメランコリックな編曲ですが、やりようによっては散漫な印象になりかねない、四曲の組み合わせです。まずそれをきちんと纏めたローリー・ニコルの構成力と、それをもっと上のレベルに昇華させた、大輔君の表現力が凄い。そして、タンゴが似合う一方、もうタンゴはやりすぎた感があった彼に対して、タンゴ風アレンジのパートを用意して、「これぞ高橋大輔」というステップシークエンスを用意してくれた。かと思えば、さりげないところにさりげなくコンパルソリーを配したり、晴れ晴れとした音楽に乗せた最後のコレオシークエンスでは、突然「あ、高橋大輔って、こんなに綺麗なスプリットを跳ぶスケーターだったんだ」なんてことに気付かせてくれたり。王道から、何気なく新しい印象までを散りばめた、宝石箱のような逸品でした。

(振付 SPEX:宮本賢二、FS:ローリー・ニコル)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=Xaag382KuBY&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=cxg7f9bsX0M&feature=player_detailpage

 

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