マリア・ブッテルスカヤ(ロシア)

【主な成績】

98長野五輪4位、99世界チャンピオン

 

 強く、気高く、美しく――自分の魅力を知り尽くした、一筋縄ではいかない大人の女性です。クールで妖艶、硬質で叙情的。自分の技術やプロポーション、持ち味のすべてを知り尽くして、魅せ方も心得ている。私は彼女に、女子シングルという競技を観る楽しみを教わりました。振付や衣装のデザインを自分でやることで有名でしたが、彼女がやることはいつも、彼女にしか絶対に似合わないこと、でも、彼女がやればこそ、誰よりも美しいことだったんですね。時にはプライドの高さ、気の強さが空回りして見えたこともあったし、長いキャリアの終盤には、痛々しいと思うこともありました。でも、すべてひっくるめて、やっぱり凄く好きなスケーターであり、同性として好きになれる人です。

 

 

9798シーズン

SPFever」、FS「秋によせて」、EX「アルビノーニのアダージョ」

 SPは全身を大きく、歯切れ良く使ったコケティッシュなナンバー。全体的にスタイリッシュですが、ダンサブルな振付の割に、フィニッシュはさらっとフェードアウトしていく感じがなかなか粋です。FSに関しては…何が印象に残っているかというと、五輪でタラ・リピンスキーの次の滑走だった時のこと。史上最年少金メダリストの誕生を目にした客席はひっくり返ったようにエキサイトし、リンクは花束だらけで、到底、真っ当な精神力で滑れるコンディションではなかったと思うんです。あそこで、中盤でジャンプがひとつ抜けた以外はほぼ完璧だったのは、彼女の気力と精神力の賜物だと思います。

 EXは、曲調が静かというだけでなく、物理的に音量も小さかった。ゆっくりと、じっくりと、間を取って、余韻を持たせて、間延びする寸前のところで、その実何よりも美味しく見せるという、演技巧者のプログラムだったと思います。

(振付:マリア・ブッテルスカヤ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=l7dmp_GaJcw&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=CM4Fi9cXBLU&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=g1Y6HPCD0a8&feature=player_detailpage

 

 

9899シーズン

SP「聖ジェームズ」、FS「秋によせて」、EX「フォーエバー・タンゴ」

 SPはスローなジャズを色っぽく。フィニッシュはまたフェードアウトですが、これもお洒落ですね。それからFSは…世界選手権の演技終了後の、鮮やかな笑顔とともに記憶に残る作品かもしれない。彼女の王道ですが、強烈に迫ってくるタイプの作品ではない。それよりももっと、じっくり心に染み入って、観終わった後に熱い溜息をつきたいタイプの、余韻がとても美しいプログラムです。EXは王道のタンゴ・ナンバーだけど、音のインパクトを捉える上手さが彼女ならでは。決して踊りまくらない、割とシンプルな振付なんですけれども。

(振付:マリア・ブッテルスカヤ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=372572Op49M&feature=player_detailpage

FShttps://www.youtube.com/watch?v=_1BnZAFcnzE

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=28vuwSLQBVM&feature=player_detailpage

 

 

9900シーズン

SP「セーヌ・ダムール」、FS「白鳥の湖」、EX「ハバネラ」

 SPは、硬質な雰囲気が持ち味の彼女にしては、珍しく柔らかい空気感。囁くように甘いヴォカリーズに乗せて、流れるような動きを披露していくナンバーです。一転してFSは、現世界チャンピオンのそれとは思えないほど攻撃的。「白鳥」の音楽の有名で美味しいところ(「情景」や「グラン・アダージョ」、「ルースカヤ」など)を殆ど使わず、直線的でテンポの速い動きが多い。「白鳥」と聞いてイメージする王道からは思いっきり外れたもの、でも、確かに「白鳥」を意識した動きもあるし、とても彼女らしい振付です。ポイントは、片方にだけ飾りをつけた、左右の腕の使い分けで、これはもう明らかに、衣装と振付を連動させて創ったな、と思える確信犯ぶりが素敵です。

 EXは、オープン大会のインタープリティヴ・フリーでも愛用していた、クールで艶やかなナンバー。「カルメン」ではなくて「恋は野の鳥」が似合う女性のプログラムという感じかな。粋で華やかで、セクシーであると同時に、とても格好良い。挑みかかるような目つき、鮮やかな手の動き、曰くありげな表情まで、すべてが「簡単でない女の魅力」に溢れていました。

(振付:マリア・ブッテルスカヤ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=LVt3I4IL18s&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=W6J01LIzK0k&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=fjPqT3Izhm0

 

 

0001シーズン

SP「セーヌ・ダムール」、FS「春の十七の瞬間」、EX「ポゼッション」「アヴェ・マリア」

 このFSは彼女の最高傑作だと思う。とても精緻に組み上げられた、アラベスク文様のようなプログラムです。最初、これを通しで観た時、あまりにも振付と一体化しすぎていて、ステップシークエンスがどこにあったか分りませんでした。どこが助走でどこが繋ぎ、技というのではなくて、そこにあるすべてが、「プログラム」という世界の、揺ぎ無い構成要素。そしてすべてが、彼女の1番美しい動き。冷たくて気高くて、それでいて妖艶で、貫禄もある大人の女性だから滑れるプログラム。観る度に、息を詰めて見守り、ずっと余韻に浸っていたい気持ちにさせるプログラムです。

 このシーズンは、EXも色々あって面白かった。「ポゼッション」はエジプト・テーマで、独特な手の動きが面白いですが、雰囲気的にもとても見事。動きのアクセントひとつだと思うんですが、オリエンタルなムードの出し方は素晴らしかった。このほか「ハバネラ」や「セーヌ・ダムール」を使うこともありましたし、世界選手権で見せた「アヴェ・マリア」も素敵。シンプルといえばシンプル極まりないものですが、カッチーニの音楽のミステリアスな感じはよく似合いました。

(振付:マリア・ブッテルスカヤ)

 

FShttp://www.youtube.com/watch?v=_5v0sEgWY-E&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=5N6vXrmX_9M&feature=player_detailpage(アヴェ・マリア)

 

 

01-02シーズン

SP「白夜の調べ」、FSTales of a Journey」、EX「オール・ザット・ジャズ」

 彼女にとっては、浮き沈みの激しい、辛いシーズンだったと思う。観ている方も辛かった…深みを増した表現力は、試合毎に見事でしたが…荘厳で深く、沈みこんでいくようなSP、そしてシュニトケの手になる、不協和音気味の旋律が物悲しいFS。どちらも絶対、彼女にしか似合わない音楽だと思いました。EXは、久しぶりにコケティッシュ路線で、遊び心がいっぱいのキュートな作品。キラキラして見えました。すごく。だから五輪で観たかったな…

(振付:マリア・ブッテルスカヤ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=fcWsTZEJSac&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=I8-D3NQfDmk&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=nw-oZLamnCE&feature=player_detailpage

 

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