鈴木明子

【主な成績】

10バンクーバー五輪・14ソチ五輪8位、12世界選手権3

 

 彼女の滑りは、何よりもエモーショナルです。弾けるようなパッションに輝いて、表現するものが何であれ、滑ることの喜びを、全身から溢れさせる。踊るように軽やかなステップにも、磨き抜かれたスピンにも、ジャンプのひとつひとつ、何気ないトランジッション動作にまで、すべて感情が宿り、表情があって、観る者に訴えかけてくる。目を惹かれて、目を離せなくなり、気が付けば魅了されてしまう、そんなチャーミングさを持ったスケーターでもあります。

 

 

07-08シーズ

FS「タイタニック」

 ジュニア時代から名前は知っていた明子ちゃんですが、滑りを観るのはこの時が初めてでした。スケール感のある音楽ですが、サウンドスケイプの広がりを思う存分使い切るような、伸び伸びと明るいスケーティング。体調の問題もあり、滑れなかった期間もあっただけに、余計にそう思えたのかもしれません。一転して、終盤のストレートラインステップは舞い踊るように軽やかで歯切れ良く、一気に浚われて、そのままフィニッシュを迎えることが出来ます。

(振付:阿部奈々美)

 

FS: http://www.youtube.com/watch?v=PCZJsxIWMKs&feature=player_detailpage

 

 

08-09シーズン

SP「ラ・カンパネラ」、FS「黒い瞳」、EX「リベルタンゴ」

 SPはリストのピアノ曲に合わせて、細やかな動き。音楽は密やかですが、そこはかとない色っぽさ、夜の気配のようなものを感じさせるのは、明子ちゃんの個性でしょうか。そしてFSでは、SPでは仄かに香る程度だった妖艶さが爆発!眼差しや間合いはもちろん、指先に至るまですべてが強く誘ってきます。ただ、改めて観直してみると、実は前半はいわくありげな眼差しがあるだけで、技中心。演じるという意味では抑えた構成です。でも、ぎりぎりまで溜めて解き放つからこその効果が、最大限に出ています。EXは燃え上がるようなタンゴで、やはりキリキリにテンションを巻き上げ、観る者を引き込んで加速する作品。妖艶だのコケティッシュだの、この競技でよく使われるフレーズを超えた、凄味のある色気を漂わせています。スタート地点で既に発火点寸前の熱を感じるのですが、やはり決して一気に開放したりしない。だからこそ、後半の盛り上がりが劇的になり、最後はすべてを抱き込んで炎になるような趣きです。

(振付 SP:宮本賢二、FS;本郷裕子・佐藤紀子 EX:宮本賢二)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=PPXnWoQmreA&feature=player_detailpage

FS: http://www.youtube.com/watch?v=rKiUJ-MGWGs&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=-8Huy1PI9vc&feature=player_detailpage

 

 

09-10シーズン

SP「アンダルシア/ファイヤー・ダンス」、FS「ウェストサイドストーリー」、EX「カリブ」

 SPはリバー・ダンスからのナンバーですが、全体的にとても軽やか。でもその軽やかさは、力強さも秘めていて、そのふたつが出会ったところに、たまらない小気味の良さが生まれます。FSは振付のボーンが明子ちゃんのイメージで選んだ楽曲とのこと。正直、編曲としては定番の美味しいとこ取りですが、序盤のシャープな感じ、中盤のスケール感、終盤の躍動感や明るさと、くるくる変わる表情が魅力的で、すべてがエモーショナル。まさしくこれが鈴木明子!という、別な意味での「定番かつ美味しいとこ取り」になっていました。EXはラテンナンバーで、酒場の女性をイメージした作品ですが、コケティッシュさと陽性のエネルギーを振りまきながら、楽しく踊ってくれます。

(振付 SPEX:宮本賢二、FS:シェイリーン・ボーン)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=iNWaVWQNyz4&feature=player_detailpage

FS: http://www.youtube.com/watch?v=M-4UOshmAeE&feature=player_detailpage

EX: http://www.youtube.com/watch?v=6vtF8H-Zbyg&feature=player_detailpage

 

 

10-11シーズン

SP「ジェラシー」、FS「屋根の上のヴァイオリン弾き」、EX「アイス・クィーン」

 SPはこのフィギュアではお馴染みのタンゴ・ナンバーですが、恐らく彼女が、最もメロディアスにこの曲を滑り切ったスケーターでしょう。花が咲くような、という言葉はこのコーナーではたくさん使いましたが、やはりそう言いたい華麗な演技でした。FSは、花嫁衣装をイメージした白いコスチュームで、明るく華やかな演技。明子ちゃんの作品の中では地味めな方かもしれませんが、シンプルで好感が持てるプログラムです。でも、やはり彼女はエキゾチック系だな、と実感するのが、ユダヤ音楽のテイストがある終盤のストレートラインステップですね。彼女のプログラムはいつもステップが一大ハイライトではあるんだけど、それ以上に音楽が彼女の任にあっている気がします。EXはベリーダンスで、明子ちゃん一流のエキゾチック&セクシーを演出します。もちろん、例えば腰つきとかステップとか、ベリーダンスの肝心なところは真似事のレベルですが(当然だ)、演出の仕方が上手くて、よくハマっていたと思います。

(振付 SP:宮本賢二、FS:シェイリーン・ボーン、EX:坂上美紀、JANSU

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=zlMgD0QGptg&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=t64GFx6hFAg&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=YxJccR1QFHU&feature=player_detailpage

 

 

11-12シーズン

SP「ハンガリアン・ラプソディ」、FS「こうもり」、EX「バーレスク」「ラヴェンダーの咲く庭で」

 明子ちゃんには、やはりエキゾチックなものが似合います。それもスラヴ系の、情熱の血が入っているものが。SPを見ていて、それを痛感しました。大地から湧き上がるような力強さと、歓喜と言うのが相応しい、爆発力を秘めた表現。全身を使って踊り回る、目まぐるしいようなプログラムでもありますが、絶え間なく繰り出されるすべてが魅力的。何がというより、プログラム全体がひとつのハイライトのようです。FSは定番ですが、演技の間中、全身を使って大らかに微笑みかけてくるような印象があります。演技全体の表情がにこやかというか。明るく上品で華やかで、というのがこの曲のキャラクターだと思いますが、それを全身で楽しんでいる、そんなプログラムです。最初のEXは前半が男性ヴォーカルでスタンダードな感じの滑り、後半が女性ヴォーカルで、情熱&妖艶系。コントラストが鮮やかで、はっとするような仕上がりになっています。そして世界選手権で見せた静かな作品は、柔らかで叙情的で、小細工も芝居も抜きの美しい滑りでした。彼女がこんなシンプルな演技をするのか、と思った。そして、それはそれではっとさせられたのです。

(振付 SPEX1:アンジェリカ・クリロワ、FS:パスクァーレ・カメレンゴ、EX-2:宮本賢二)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=mmEMlrELvzc&feature=player_detailpage

FS: http://www.youtube.com/watch?v=FqEs-Y_k7m8&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=THTWG8sHNkY&feature=player_detailpage(バーレスク

  http://www.youtube.com/watch?v=C2JQnWdEN9c&feature=player_detailpage(ラヴェンダー)

 

 

1213シーズン

SP「キル・ビル/レジェンド・オブ・メキシコ」、FSO」、EX「シェルブールの雨傘」

 シングルには珍しいハイドロブレーディングが格好良いSPは、攻撃的な強いイメージ。そして、新境地となるFSは、「水辺に遊ぶ小鳥が飛び立つまで」とのことでしたが、小鳥に化身した女神のような、清浄な空気感でした。そして特筆すべきは、ステップとコレオグラフィックの、二つのシークエンス。前者では、手の指先からエッジの爪先までをくまなく使って、この上なく繊細に、拾える限り細やかに、すべての音を拾い尽くしてゆく。そうすることで、音楽に融ける。フィナーレへ向かうコレオシークエンスでは、制約が無いだけに、全身を伸びやかに使い切って音楽を奏でる。このシーズン、新たに設定されたこのシークエンスを、誰よりも活き活きと滑りこなしたのは彼女でした。EXはシンプルで叙情的な作品です。

(振付:アンジェリカ・クリロワ&パスクァーレ・カメレンゴ)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=StZDBRup-9s&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=mOuaUMgFOcg

EXhttp://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=Y5-_659oGJA

 

 

1314シーズン

SP「愛の賛歌」、FS「オペラ座の怪人」、EXKA ラブ・ダンス」

 まさしく彼女のキャリアの集大成に相応しい、万感のエモーションが込められた作品が揃ったシーズンです。

SPは恩師・長久保コーチのお気に入りの曲を、このプログラムのためだけに、ヴァイオリニスト・古澤巌氏が演奏したヴァージョンです。たったの250秒に、見事な起承転結がある。序盤は愛らしく、やや儚げに。中盤はすこし重く、ぎゅっと抑制してドラマチックに。そして最後は、メインテーマを豊かに謳い上げる。特別なことは何も無くても、ただ観ているだけで胸を打たれるようでした。

SPだけではありません。正統派の感動を演出するFSも、謎めいて艶やかなEXも、根本的にはすべて同じだと思うんです。花咲くような、滑ることの喜び。近年これほど強くそれを感じさせる演技はありませんでした。それを奏でるすべて、指先からエッジの隅々までが、味わい深く丁寧なラインで描かれて、深い深い想いが込められていた。それは彼女の名人芸であり、キャリアの集大成であるこのポイントで、それが最も大きく輝いていたのだと思います。

(振付 SP:マッシモ・スカリ、FS:パスクァーレ・カメレンゴ、EX:宮本賢二)

 

SPhttp://www.youtube.com/watch?v=mpsB7kpjtAU&feature=player_detailpage

FShttp://www.youtube.com/watch?v=PeZpGgKC94s&feature=player_detailpage

EXhttp://www.youtube.com/watch?v=3SBeM_g1wXo&feature=player_detailpage

 

inserted by FC2 system