フィギュアを観に行くと、必ず何かハプニングが起こります。飛行機が遅れたり、チケットを落としたり、電車に乗り遅れたり…舞台ものでは、何も起こらないんですが、何故でしょう。今回ですか?カメラのパイロットランプが消えなくなりました。つまりフラッシュが消えないってことで、使用不可能だったってことです。元々しっかりした写真を撮るのではなく、後々思い出す縁にと思って撮っているだけなので、ごく普通のポケットカメラ。操作は簡単、な筈なんですが、言うことを聞いてくれませんでした(涙)。

悲しいと言えば、今回、直前まで出場選手の顔ぶれが変わりつづけましたよね。今年はGP各大会とも、特に上位陣に怪我を理由にした土壇場欠場が多いそうですが。NHK杯も、夏の段階ではヤグディンが、一時はワイスもエントリーしていましたよね。ヤグディンは初観戦の時に「グラディエーター」を観たきり、世界選手権の男子のチケットを取らなかったのを痛恨事だと思っているので、是が非でももう一度観たい選手。ワイスは、観た事が無いから観たかった。それに、前回以来妙にお気に入りになってしまったディネフ、常連さんのアンソニー・リュウ、クリロワとジュゼッペ・アリーナ夫妻の振り付けで滑るというジョニー・ウェイアーも気になっていたのに、みんな欠場ですもの。ダンスも、シーズンに入ってから、注目していたロマニュータ&バランツェフが解散。ラング&チェルニシェフが欠場。女子のニコディノフも、去年あまりいいことが無かったので頑張って欲しかったのに、肩の怪我だそうですね。どうもここ二年ほど、選手の怪我の話ばかり耳に入って、とても悲しいです。

 

男子SP

顔ぶれを観れば、本田君の優勝を期待出来る感じですよね。だけど、まあ中堅どころのいい選手がちらほら居て、日本選手も揃っていてという、自国開催むけのラインナップかもしれません。初見の選手も居ましたし、久し振りに観る選手も居ましたけど、みんなそれぞれ上手くなったなぁ、というのがトータルの感想です。

 最初はフランスのヴァンサン・レスタンクールから。去年はギャヤイゲ夫人のところに居たようですが、またブリュネコーチに戻ったのですね。キャンデローロ夫人オリヴィアさんの振り付けで、「マトリックス」。コンビネーションの四回転で転倒、アクセルがダブルと、決めるべきところが決まらない、痛い演技。フィニッシュがステップだったり、構成の面での面白さはありましたし、何よりあの音楽には、エッジが氷を削る鋭い音が、異様なほどマッチします。上手く滑れば面白かったでしょうに。

 続いて中国の李運飛。ソルトレイクのFSで演技中に怪我をし、やっと一つ二つのジャンプを決めてガッツポーズをしていた彼に、妙に親近感を覚えてしまった私は、露骨に日本人ですね。判官贔屓根性(笑)。でも、勢いのあるいい演技でした!最初のコンビネーション、4+2が決まって、トリプルアクセルは、かなり斜めに上がっていたのに、無事着氷。最初にバンクーバーの演技を観た時「駒?!」と思ったほど軸のしっかりしたスピンは健在でしたし、あの頃見受けられなかったものもたくさん身についていました。基本的にまだまだなんですが、ワンストロークが前より伸びるようになっていましたし、ステップにも進歩が見られました。何よりも、以前は音楽など関係無いかのように滑っていたのに、だいぶ「乗れる」ようになりましたね!曲はヨーヨー・マの「Song Dynasty」。その名の通り、雄大で力強い旋律に、二年前の彼なら負けてしまった筈です。ガッツポーズが眩しかった。頑張ったと思います。本当に。

 三番目はカナダのジェフリー・バトル。一年前は「掘り出し物見つけた!」と思った横から大ブレイクしてくれて、掘り出し物でも何でもなくなってしまった彼ですが、流石に今年は、去年ほど絶好調ではないようですね。初戦のスケートカナダでは、挑戦した四回転にミスがあったそうです。曲は「Conspiracy Theory」。今回も、最初のコンビネーションは3+3になってしまいましたが、これは基礎点が低いスタートになるだけで、ミスとしては数えられません。それ以外はアクセルもルッツも綺麗に入りましたし、ステップも滑らかでテンポが良く、見ごたえがありました。トレードマークのスピンにも磨きがかかっていて、キャメルスピンひとつとってもバリエーション豊富、変化をつけてじっくり見せてくれます。とにかくジャンプさえ決まれば、その他のクオリティは高い選手ですよね。表情豊かで、軽やかで、伸びやかで、観ていて楽しい演技でした。

 続いて二人目の李さん、李成江。生では初めて観るのですが、お気に入りの選手です。プログラムの「カンフー」も大好き。最初の、ステップからの四回転は綺麗に入ったんですが、続くコンビネーションのトリプルアクセルが着氷で乱れ、セカンドジャンプが二回転に。しかし、この日の彼は何故かご機嫌。最後のストレートラインステップに入る前に、自ら拍手をしてお客さんをあおったり、あと滑走後、得点の出が遅れた時、客席から起こった催促の手拍子に合わせてみたり、茶目っ気を出していました。そうそう、例の新採点方法、コンパルソリーの時にコンピューターのトラブルで得点が出るまで十分以上も選手を待たせたそうですが、時々本当に遅れるんですよね。一グループにつき一回程度、競技の進行がスムーズでないと感じる程度に。そんなことを知る前から、どうも好きになれない方式なんですが。李の話に戻ります。彼についてびっくりしたことは、スピンが速くなっていたことですね。以前は、ポジションは悪くないのに遅くて勿体無いと思っていたんですが。一番遅かった足かえのシットスピンはポジションを変更していましたが、全体的に一回転ぶんくらい、速かったんじゃないでしょうか。

 第一グループ最後は、本命の本田君。今季のSPはカート・ブラウニング振り付けの「Leyenda」ですが、スケートカナダの放送を観た時、ごく自然に「あ、これ観に行けるんだ、嬉しいな」と思えたプログラムです。今までに無い路線で、全体的にとってもお洒落。流石ブラウニングと、楽しみにしていました。ジャンプは、最初の四回転がオーバーターン気味になったせいで次が二回転になり、トリプルアクセルも着氷が綺麗には流れませんでしたが、まあ許容範囲でしょう。全体の印象を損なうものではありませんでしたから。生で観るとまた違った迫力があって、間の取り方や繋ぎの振り付けに、貫禄とか、色気が出てきたのが分ります。敢えて注文をつけるなら、フットワーク部分の更なる滑り込みでしょうか。上半身も、足元も非常に複雑に込み入った、見ごたえのあるパートなので、若干きつい感じが残ります。完全な状態で滑れれば、その迫力はいかばかりのものかと、どうしても期待してしまいます。

 何だかここまでで本命が全部出てしまったような気さえして迎えた第二グループ。最初はディネフの代理(?)、ブルガリアのフリスト・トゥーラコフ。テクノっぽくアレンジした「アランフェス協奏曲」で、音楽はそれなりに面白かったし、大きく崩れることもなかったんですが、どうにも大人しすぎて、何もかもが小さい。そんな感じでした。

 で、やっぱりこんなもんですかね、と思った瞬間、クリムキンに驚かされました。彼は初観戦の東京GPファイナル以来で、「やあ、久し振り」といった感じだったんですが、あの時は衣装と選曲で驚かせてくれました。今度は、スタート位置がいきなりリンクの一番端、ジャッジ側の角だったんですよね。最初はダイアゴナルステップから。曲は「X-File」のサントラで、相変わらず選曲といい、腕の表情といい、独特で面白い選手ですね。そして綺麗な4+3のコンビネーション。あっと驚かせておいて、トリプルアクセルは転倒。でも、彼も持ち味はスピンです。バトルの爽やかさとはまた違った、くせの強い味付けですが、キャメルスピンが綺麗ですよね!芸術点で5,9が二つも出ましたし、彼はいつも、わりと良い感じの驚きをくれます。

 お久し振りといえば、五輪に出られなかったこともあって、ほかの日本選手よりは久し振りになるのが、田村君。「カンタループ」は、EX版の方を二度観ていますが、わりとお気に入り。スタートで、上半身が随分動くようになったことが分りました。踊り慣れた振り付けというのもあるんでしょうが、進歩は進歩ですよね。ただ、ジャンプが決まらなかった。コンビネーションの四回転で転倒、アクセルはダブル、最後のルッツだけ、持ち前の強い足腰でどうにか持ち堪えた、という感じで。そのほか、フットワークもだいぶ軽く、よく動くようになっていましたし、スピンは元々得意ですし、このプログラムは彼によく似合っていると思うので、完全版が見たいですね。

 それから高橋君ですが、すごい人気ですね〜。まさかこれほどのものとは思わず、びっくりしました。体はよく動いていましたが、コンビネーションの四回転で転倒、アクセルでステップアウト。全体的にまだまだ「少年」という感じで、頑張って勉強してください、といったところでしょうか。でも、長年本田君を追い上げる存在が育っていないので、彼には伸びて欲しいです。

 最後はアメリカのベンジャミン・ミラー。曲はピアソラのタンゴで、あれは確か「オブリヴィオン」だと思いますが、ちょっと記憶は曖昧です(曲のタイトルに関して)。ジャンプは、最初にアクセルをステップアウトしたほかは、コンビネーション、ルッツと決まっていました。ただし、タンゴを滑るにはちょっと線が細すぎる印象ですね。もっと大胆さ、迫力、色気が欲しい。スピンの工夫を色々としていましたが、バトルやクリムキンが先に滑っていたので、かえって粗さが目立ってしまったかな、という印象です。

 

ダンスFD

 第一グループの顔ぶれを見てびっくり。全員アジアンですね。こんなことは、そう滅多と無いでしょうに。これもNHK杯ならではと言えるでしょうか。

 最初の有川さんと宮本さんは、ODの放送を観て「あれ?」と思っていたんですが、ここでもやはり、あまり良くない意味で、昨季と何か違うなと感じました。リフトとかムーヴメントとか、ピンポイントで綺麗なポジションは決まっているんですが、いまひとつインパクトが無い。何よりも、最大の売り(だと私が思っていた)メリハリ、勢い、快活さが欠けていたように思います。振り付けも全体的に盛り上がりを欠いたかもしれません。とっても期待している二人なので、すごく残念です。

 中国の張維娜&曹憲明は、「ファー・アンド・アウェー/シェルブールの雨傘」で、「恋人たちの出会い・擦れ違い・別れ」だそうです。最初は基本に忠実なステップから、後半三分の二は、リフトやスケーティングで見せる構成。S字のリフトが綺麗でした。ただこの二人、身長があまり違わないせいもあって、見た目のバランスが悪いのが勿体無いですね。

 渡辺さんと木戸さんは、有川さんたちと逆に、ODを観ていてその上達ぶりに涙が出てきたんです。渡辺さん、綺麗になりましたね。去年は、伸ばしかけの髪が、ちょっと野暮ったく見えたものですが。ウォーミングアップの時に滑っていたストレートラインステップが本当に素晴らしくて、音楽が聞こえてきたんです。それを楽しみにしていました。体をいっぱいに使った、明るく楽しそうな雰囲気は、とても魅力的。ですが、ウォーミングアップと比べるとかなりかたくなってしまっていて、ストレートラインも、何だか魅力半減。結果的に張&曹に逆転を許してしまいましたし、なまじ良いものを観た後だけに残念です。でも、この調子なら、今年は充分に全日本を狙えますし、その後の四大陸、アジア大会、世界選手権などでも是非、頑張っていただきたいと思います。

 正直に言うと、この大会のアイスダンスは、観たかった組が幾つか出場しなかったことを除いても、ちょっと見所に欠けたかなという感じがするんです。ひとつには、私の目がだいぶ贅沢になっていること…やはり昨季が五輪シーズンで、各カップルの集大成的なものをたくさん観ましたし、過去の五輪の映像なども、いろいろ見せていただいたので…それから、スケートカナダの上位四組のダンスが素晴らしかったこともあるでしょうか。

第二グループ一番滑走のキンバリー・ナヴァーロ&ロバート・シュマロは、ラテンが入った感じの選曲だったと思うんですが、いまひとつ見せ場が無かった印象。ノヴァク&コラシンスキは、チャイコフスカヤの振り付けだと聞いていたので、ショックでした。「オペラ座の怪人」なんですが、フットワークが見せ場になっていない。リフトはそれぞれ綺麗でしたが。ステップは、分量は少なめでも平気ですが、やはりきちんとひとつの見せ場として、シークエンスを作って欲しいと思います。チャイコフスカヤといえば、パホモワ&ゴルシュコフも教えた、まさしくアイスダンスを創ってきた人だと思うのですが、何故こんな振り付けをしたのでしょう?それとも私の情報の間違いでしょうか?ウィング&ロウの「ジョン&ヨーコ」は、動きのひとつひとつは面白かったんですが、曲の繋ぎ方が流れを欠いていて、特に最後は、「イマジン」で終わらせるために、無理に流れを切ったように見えました。

ロシアの若手、エカテリーナ・クヴォドコワ&ティムール・アラシャノフは、ボンドのメドレー。綺麗な衣装を着た綺麗な女の子、というのが第一印象。確かに手足は長いし、動きのひとつひとつもロシアらしく綺麗です。フットワークで盛り上げようという意欲も買います。でも、よりにもよって「ウィンター」にサーキュラーステップを合わせるのは、時期的にまずいのでは、と思います。だってまだ誰も、ヤグディンの
SPを忘れていません。そしてあれに匹敵するステップは、アイスダンサーと言えども、上位の一握りに人々にしか踏めない代物なのではないでしょうか。個人的に、「ボレロ」を滑るのは、表現力があって、振り付けが良ければどんどんやればいいと思うんです。トーヴィル&ディーンのボレロを思い出す時、人は多分、最初にその衝撃と感動を思い出すのであって、特定のフレーズに特定の動きを結び付けたりしないでしょうから。強いて言うなら、スタートとフィニッシュは連想されるかもしれませんけど。でも「ウィンター」は、「ボレロ」より遥かに耳に残りやすく、その上ヤグディンのあのステップと分かち難く結びついて、観る者の心に焼きついていると思うんです。だから、あのフレーズと一緒にステップが蘇ってきて、せっかくの意欲を不当に掻き消してしまったような気がするのですが……

最終グループになるとやっと「ああ、観るべきものが出てきた」という気になって、身が引き締まります。いつでもそうですが、やはりこのグループは、ウォーミングアップ中からスピードも、切れも、カーブの深さも何もかも違う。実はこの日は、イザベル&オリヴィエとチャイト組の、あわや衝突かという危険なニアミスがありました。直前で回避したのですが、双方ともかなりスピードが出ていたので、万一ぶつかっていたら、無傷では済まなかった筈です。胸を撫で下ろしながらランを続けたイザベルの姿が、印象的でした。

最初はカティとレネから。前日のODの放送時、衣装を見て、その非常に良い意味のベタベタさにほくそえみ、演技を観て「やってくれると思っていたよ」とニヤリ。マーチとかポルカとか、明るくて軽快なステップはお手の物ですものね。そしてこの日、FDの衣装を見て「やってくれたよ」とまたニヤリ。新しいFDは、テクノポップに合わせたロボットダンスです。いつも思いますが、この二人は本当に動きが軽くて、歯切れが良いですね。どのポジションにも、パッと入ってビシッと決め、パッと出て次に移る。だからどんなダイナミックな技でも、あっけからんと見えるんでしょう。そのテンポが、澱みの無い演技を創り上げています。またその軽快さが、ロボットマイムと絶妙に融合するんですよね。ところどころのコミカルな味付けも美味しい。それと、これだけ曲も振り付けもデジタルなものを使うと、少しでも乱れれば目も当てられない筈。実際今季は五輪明けということで調整が遅れている選手もちらほら見受けられますし、レネは夏に交通事故のため肩を手術したとか。でも、仕上がりはとても順調なようです。

続くチャイト&サフノフスキーは、昨季移ったばかりのデュボワコーチから、まだコーチを初めて間が無いプラトフ氏のところへ移ったと聞いてびっくりしていました。順位のことにも。そして、ODの放送では、確かに速いけど、彼らならもっと速い見せ場が作れるのではと首を傾げていました。FDはそんな懸念を打ち払うフットワーク満載で、特に終盤にさしかかるにつれ速度を増してゆく二回のストレートラインは迫力満点。ただ、あまりに速すぎるためか、端々に乱れが出てしまって、見づらくなっていたのが残念でした。でも、この二人も上に行こうと足掻いているんですね。気迫が凄まじかった。今年順位を下げていることで、また色々と言われているようです。私もまだ、長野の時に流した涙を忘れたわけではありません。でも、あの時この二人の演技を観た実感として、すごい演技をした、だからこんな高い得点が出るんだ、というものが、確かにあったのも忘れません。彼らは今、政治的な話がどうこうというのではなく、新しい段階へ行こうとして、苦しみながら次々新しいことをしている状態なのだと思います。

イザベル&オリヴィエは、今年のFDはバナさんたちの振り付けということで、とても楽しみにしていました。曲は、そこまで重厚ではありませんが「Vivre pour le Meilleur」系の、ドラマチックな音楽。テーマは「Spirit of Charm」なので、「魅惑の精」でしょうか。それとも「魔法の精」かな?今季もステップの見ごたえは充分ですが、昨季よりは流れを重視しているようです。リフトはこれまでの彼らの持ち味だったようなものが半分、D&V風が半分。ただ、後者に関しては「オリヴィエ、そこ、バナさんならもっと鋭く急なカーブが描けるよ」と突っ込めてしまうのが難ですね。綺麗ですけれども。あと、繋ぎに入る回転系のムーヴメントが綺麗で、二人のターンの正確さを存分に活かしていました。そしてあの上半身の動きの優雅さは、リタさんたちならではでしょう。リタさんたちも、着々と新しい生活を始めているようで、寂しい反面ほっとします。

最終滑走はロバチェワ&アヴェルブフ。曲がプレスリーだと知って、似合うのかどうか非常に不安だったんです。そして、ロバチェワさんの衣装があまり似合っていなくて、ちょっと悲しいです。去年一昨年のエレガントな印象が強いせいもありますし、ポニーテールって大人の女性にはなかなか似合わないなと…そのポニーテールに結んだリボンがほどけてきて、途中でホイッスルが鳴りました。まだしも曲の切れ目で、再会しやすいところだったから良かったですが。この時、アヴェルブフがロバチェワの衣装にちょっかいを出して緊張をほぐしたり、自ら手拍子を打って、動揺した観客をもう一度盛り上げたりしていました。この日の彼は、ノリノリで非常に元気だったんですよ。演技そのものは、最初と最後にあっと驚かせるリフトを用意して、あとは超絶技巧のステップ、またステップ!終盤にかけてのフットワークなど、圧巻です。ただ、一度中断されてしまったので、全体の流れで見てどんなプログラムなのか、それだけ分らないんですけれども。ロバチェワさん、滑走の後、フェンス際でファンの方に「あんなことになってしまって、ごめんなさい」と申し訳無さそうな顔をしていたのが心に残ります。相変わらず、優しい人ですよね。とりあえず今は、ヨーロッパ選手権でグルシナ&ゴンチャロフとの直接対決が楽しみです。

 

女子FS

 前日のSPの出来栄えを見ていて、非常に非常に不安でした。村主さんて、NHK杯と相性が悪いのかな、などと。スルツカヤの精彩の無さも意外でしたし…そして、一番びっくりしたのが恩ちゃんの上達振り。人間、一年であんなに変わるんですね!滑りも、表現も、技術も、ありとあらゆるものがランクアップしていて、膝を叩いて大喜びでした。後から聞いたところ、趣味だったジム通いをやめて、今はバレエと英会話に通っているのだそうです。

 第一グループは、お久し振り感が強いユリア・ラウトワの「マラゲーニャ」から。しかし彼女は、まるでこのグループの不運を一身に背負ったかのように、すべてのジャンプを失敗してしまいました。三回回れたのが、手をついてしまったループのみ。こういう時、最低でも最後のダブルアクセルくらいは決まるものなんですが、それもステップアウト。痛々しかったですね。

 続くサラ・マイヤーは、昨季よりちょっと色っぽくなった感じです。ラウル・ディ・ブラシオの音楽に合わせて、伸び伸びとノーミスの演技を披露。そういえば彼女は、スイスの選手なのにスピンは人並みですよね。あまり関係無いことかもしれませんけれど、前々から誰かに言いたかったので(笑)。

 アンバー・コーウィンは、ちょっとけだるいような、現代的な曲のプログラム。最初にトゥループの3+3を綺麗に決め、途中でふたつほど回転を抜かしたジャンプはあったものの、無難にまとめていました。ただ、曲の都合上、盛り上がりを欠いたのは否めませんが。でも、だれてもいなかったですよ。

 カナダのマリアンヌ・デューベックは、バトルを始めとするカナダ応援団の熱烈な声援に答えて、斜めに上がったジャンプを幾つも持ち堪えたり、良い演技を見せました。ただし、彼女は選曲を間違えていると思うんですよ。サン=サーンスの「序曲とロンド・カプリチオーソ」なんですが、非常にパワーのある曲なので、ちょっと負けてしまったかなと。もっと楚々としたスケーターに見えましたよ。

 第一グループ最後の方丹は、小柄で可愛い女の子ですね。滑り出しは好調、二つ目のジャンプでちょっと乱れて、三つ目転倒、一度持ち直し、もう一度崩れてまた持ち直してフィニッシュと、まだ安定感が無いですね。決まったジャンプはそこそこ高いし、体も綺麗に使えていますが、そこ止まりで、まだお子様演技かなと思いました。今ひとつ、心をこめるに至っていないというか。優等生風なので、持ち味を見つけて磨くといいのかもしれませんね。

 さて、第二グループのウォームアップ中、恩ちゃんは三度トリプルアクセルに挑み、いずれも両足着氷していました。一方村主さんは、最初はジャンプの調子がいまひとつだったのを、後半に行くに従って成功率を上げていっていて、集中力をアピール。もうその二人で手一杯で、ほかは見えていませんでした。

 最初はスルツカヤなんですが、今年の彼女は何かがおかしいような…ここでも、ロシアでもいまひとつの成績ですし、選曲はまたパワフル系に戻ってくれて嬉しい限りですが、衣装がプログラム内容とまったく関係無さそうで、しかもあんまり綺麗じゃなかったりと、細かいところが気になります。このプログラムの振り付けも然り。そして、細かいどころか決定的に、ラストで曲想とスピンがあっていないように、私には思えるんですが……ジャンプも本調子ではありませんでしたね。スピードはありましたが、得意なループで手を付いたり、サルコウからのコンビネーションがきちんと入らなかったり。3+3を望むところまで行っていないなという印象ですが、多分彼女も、夏が忙しくて調整が遅れたんじゃないでしょうか。まさかこのままでは終わらないでしょう。期待しています。

 さて、恩ちゃんです!今季のFSの曲は、優雅さと力強さを兼ね備えていて、新しい彼女のイメージにぴったりです。最初のトリプルアクセルは練習並みの出来でお手つき、でもそこからのジャンプは圧巻です。去年より更に高く上がるようになっていて、そこにドカンと大きなインパクトが来る。このインパクトが、彼女の最大の魅力でしょう。それ以降ミスは、二つ目のルッツのオーバーターンのみ。あとは、スピンの腕の使い方、ポジション、スパイラル、ステップ、滑りなど、去年は見劣りしていた部分を、しっかり底上げしてきてくれていて、観ていて嬉し涙が出てきました。彼女と村主さんを、私は一番たくさん観ているんですが、恩ちゃんは観る度に目に見えて上達してゆくので、親心というか、何か感慨深いものがあります。

 続く荒川さんは、私はこれまであまり好きではなかったんです。歯切れが悪いというか、べたっとした印象があって。今もそれが完全に治ったとは思いませんが、最大限カバーして、優雅さを強調できるいいプログラムを持ってきましたね。「タイタニック」、衣装も綺麗ですし、見ごたえがありました。惜しむらくは、終盤のふたつのシングルジャンプなんですが、最後に即興でトリプルトゥを入れてリカバーできるところも、彼女の強みですよね。彼女も本当にいい演技でした。

 村主さんは…思い出すのがちょっと辛いです。「白鳥の湖」は、テレビで観た時は迫力不足かなと思ったんですが、生で観るとじーんと心に染みる、本当に素晴らしいプログラム。相変わらずスピンが綺麗ですし、滑りも本当に滑らか。二種類のステップシークエンスを入れる意欲も素晴らしいと思いますし、ステップ自体も細かくて美しい、見ごたえのあるものでした。白鳥の翼を象徴する、柔らかな腕の動きが切ない。だからこそ、パーフェクトの滑りが観たいんですが…最初のルッツからのコンビネーションは綺麗で、ほっとひと安心したと思ったらフリップで乱れ、続くトゥは踏み切り損ねてしまいました。この辺りのミスは、スケートカナダと同じですよね。ミスする癖でもついてしまったんでしょうか。で、一番苦手なループ、二つ目のルッツは綺麗に決まったと思ったら、サルコウがダブル。なまじ途中で期待しただけ、残酷な幕切れだったかもしれません。そして、あっと驚く技術点の低さ。無論、あの出来で荒川さんより上にしろとは言えません。確かに決まったトリプルは二種類三回のみ。でも、あのステップは、スケーティングは、スピンはと、泣いて訴えたい気分でした。今季は自分でも練習不足を認めているとのこと、この先も全日本や何やかやで試合が多そうですが、きちんと練習して、調整しなおして、世界選手権で今度こそ、完璧な白鳥を見せて欲しいと、願ってやみません。

 そんな具合で呆けていたので、続くマニアチェンコの演技は、殆ど覚えていないんです。悪い出来ではなかったということくらい。最後のソコロワの「ノートル=ダム・ド・パリ」は、グェンとマリナのファンにはお馴染みの旋律。得点は思いっきり低く出ましたが、あそこまで悪くなかったと思いますよ。転倒はひとつあったけどジャンプは高いし、確かに、ちょっと音楽に乗り切れていない部分や、もうちょっとじっくり手を使った方がいい振りなど若干ありましたけど、でも全体的に、そう悪くは無い仕上がりだったと思います。

 

 そんな具合で、慌ただしく帰ってきてこれを書いています。次はいつ観戦に行けるか分りませんが、その時はもうちょっと素直な目で観て、感動して来ようと思います。

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