この二日間は、本当に一生の宝物です。絶対忘れないでしょうし、何一つ忘れないようにします。本当に何もかも持ったまま生きて、死にたい。オーバーだとお笑いになるかもしれませんが、私にはその位の重みがあった二日です。

 それにしても苦労しました。GPファイナルでマリナ&グェンに会えなかった時から、今度のNHK杯は必ず行こうと心に決めていましたが、まさか九州で開催されるとは思っていなかったので、経費もかかりましたし、スケジュールも厳しいものがありました。幸いにも大会終了翌日が我が校の精神的創立者(?)フランシスコ・ザビエルの命日だか誕生日だか来日した日だかでお休みだったので、無茶はしなくて済みましたが、まず旅費を稼ぐのが一苦労、チケットを取るのにまた一苦労(そのかわり二日とも良い席でしたが)、かと思えば、そういえば一人旅はしたことがない、飛行機も団体でしか乗ったことが無い、九州は中学の修学旅行以来二度目だとか、不安は色々ありました。おまけに前の日にサークルの勉強会で発表が入っていましたし、出発当日の未明まで何故かここの表の原稿(ユグドラの十章)を書いてましたし…かと思えば出発まで空港の機械トラブルで三十分以上遅れたり、本当に色々と大変でした。おまけを言えば、帰りにも山手線が人身事故で止まりましたし、我が身に何事も無くて本当に良かったです。あ、あと初日に会場の中でチケットを落としました。これは本当に不注意から起こしたポカミスなんですが、幸いにも届けてくださった方があって助かりました。でも苦労した数百倍から数千倍は見返りがあったからいいや、と一人で満足しているんだから、世話は無いですね。ではまず、観戦初日、大会三日目からレポートしましょう。

 

十二月一日・男子ショートプログラム

シングルに関して言えば、最初の六分間のウォーミングアップがまず楽しいような、緊張するような。「ああ、あの選手はまたあのジャンプを失敗して…」というような一喜一憂があるんですよね。初日、第一グループのウォーミングアップで目をつけたのは、この大会で一気に人気者になったジェフリー・バトル。カナダの選手と言うと、ブラウニング、ストイコ始めジャンパーという印象が強いのですが(実際、男子で史上初の○○ジャンプを跳んだ、というのは殆どカナダのスケーターだと聞きます)、どうもサンデュー以降、表現力で攻めるタイプが多いような…(ほかにも、話に聞くのみのアンドレーエフとか)。彼は、スピンが見事ですね。あれだけ綺麗なシットスピンのバリエーションが決まる選手って、私の中では彼とジャネットだけです。回転が速くて軸もしっかりしているし、変形も色々と複雑に入る。恐らく会場にいらした他の方々も同様と思いますが、「これは儲けた」とほくそえんでいました。

第一滑走は中国の張民から。衣装が、キャンデローロの「ダルタニヤン」から幾つかパーツを取り除いた感じでしたね。曲は「ブレイブハート」。中国の選手にしては珍しい、体を柔らかく使うタイプの選手です。悪くはありませんでしたが、ジャンプが決まらない。この日はリンクの状態が思わしくなかったのか、クリーンに滑った選手が殆ど居ませんでした。そういう意味で、寂しい日だったような気がします。どうも私が行くといけませんね、皆さん調子が悪くて(泣)。

二番目に、ヤグディンとプルシェンコの欠場で一気に唯一のシード選手、優勝候補の筆頭(というより唯一の優勝候補)になった本田君登場。曲は昨シーズンの「ドン・キホーテ」。私は今シーズンの「Sing Sing Sing」が物凄く好きなのですが、あまり関係者うけが良くなかったとか。そういうわけで変更したようです。最初の4+3のコンビネーションが決まって「やった!」と思ったらいきなり次の、イーグルからのトリプルアクセルで転倒。続くルッツを綺麗に決めて高い得点を出しましたが、どうも釈然としない。ですが、ステップの切れ、スピード、表現力とも、男子の選手の中では群を抜いていて、圧倒的な存在感でした。やっぱり彼は、ジャンプさえ決まれば本当に本当にいい選手です。

三番目は、同じく日本の岡崎真選手「ザ・ミッション」。彼もジャンプの調子が思わしくありませんでしたね。リクワイアード・エレメントで情け容赦無く低い点が出てしまい、見ていて気の毒になりました。体はそこそこ上手に使える選手だったので、きっとジャンプが決まればそれなりの演技になると思うのですが。

第一グループの最後は、さっき目をつけていたバトル。彼もクリーンではありませんでしたが、まあ無難に演技を纏めて、スピンで見せてくれたという印象を受けました。しかし、彼は十九歳とは思えないあどけなさですね。笑顔が素敵です。

第二グループは、オーストラリアのアンソニー・リュウから。岡崎選手やバトル、張もそうでしたが、映像も含めて未見でした。曲は「パール・ハーバー」。最初のコンビネーションで失敗してしまい、なんだかしまらない演技でした。折角良い曲なのに、なんだか活かしきれていない印象で。

そして次に田村岳斗の「カルメン/アルルの女」ですが、ここでやっと溜飲が下がりました。ようやくの、ノーミス演技。確かに幾つか粗さ、甘さの目立つところはありました。ステップとか、滑り自体とか。でも、とにかくのノーミスです。4+3も綺麗に決まっていました。なんだか本人は、フィニッシュのスピンで目が回ってしまって、本当はジャッジの方を睨むところを逆を睨んでしまったそうですが(テレビでジャッジ席の方を見て苦笑しているシーンが映っていますが、それです)、そんなこと得点には反映されませんし。本人曰く99点の出来栄え(最後の1点はフィニッシュから減点)、やっと少し気が晴れました。

続くディネフ「ブエノスアイレスの春」もノーミスの出来。動きが個性的で面白い選手です。ジャンプは難度を抑えて無難にしていました。多分みんなが本来の動きをすれば見劣りするんでしょうけれど、五十嵐さんも仰った通り、こういう大荒れ模様の日には映える選手です。

最後は「ターシャの旦那」ことスコルニアコフ。順位の関係であまりテレビに映らないからなんですけど、どうもマリニナ選手のご主人という印象が強い。いつも一緒に居て、奥様のお世話をしている所がテレビに映ったりするものだから、冒頭のような呼び方をついしてしまいます。演技の方は、相変わらずムードのある選手ですね。今年流行のタンゴのナンバーで「ジェラシー」(ディネフもタンゴでした)。最初のコンビネーションは綺麗に入ったのですが、どうも彼も、最後のほうのジャンプで乱れて残念でした。男子には珍しい、レイバックスピンを綺麗に決められる選手なんですが、やっぱりシングルはジャンプが決まらないと締まらない印象ですね。

 

十二月一日・アイスダンスフリー

 一番楽しみにしていた、というより、マリア欠場が決定した時から殆ど唯一の目的となったのが、これ。出場選手のうち、既に映像で新しいフリーを知っていたのはドロビアツコ&ヴァナガスのみ。あとはマリナ&グェンは曲名と写真だけという感じで、本当にわくわくして待っていました。

 第一滑走は、ジョセフ&フォーサイス。アメリカの若いカップルですが、最近アメリカのアイスダンスは若手が元気ですね。ダンスはジャンプが無いので、もしあまり良くない演技でも、素人の私には殆どわかりませんし、悪かったところで落ちる高さがシングルとは全然違う。十組全員放送してもいいのでは、と思うくらい楽しみました。この二人の「ディープ・フォレスト」はコーチであるアレクサンドル・ズーリン氏の振り付けだと思うのですが、彼の振付けるプログラムは大好きです。何と言いますか、ズーリン氏はアーティストですよね。これはそれ程大袈裟な独創性はありませんでしたが、すっきりしていて綺麗でした。妙にロシアナイズされた感じもなくて、すごく良いと思いました。

 続いて私も注目している日本の有川梨絵さんと宮本賢二さんのお二人。この二人はマリナ&グェンと同じザズーイコーチの教え子さん、連盟の城田監督イチオシの若手、子供の頃からのカップルということもあり、既にODの放送も見ていましたので、本当に楽しみでした。曲は喜多郎の「古事記」。テーマはずばり「ライジング・サン」です。五輪シーズンを意識されたんでしょうね。有川さんがチャイナドレス、宮本さんが記紀時代の兵士のようなコスチュームで、スピードのある演技を見せてくれました。ちゃっかりマリナ&グェンが「ベートーヴェンズ・ラストナイト」で使っていた逆リフトの逆じゃないバージョンなど入っていたり、けっこうおいしかったです。二十歳と二十三歳、まだまだ二人とも若いので、これからぐんぐん伸びて、きっといずれ日本のアイスダンス界を背負って立ってくれるんでしょう。期待しています。

 続いて同じくザズーイコーチの教え子さん、アーブデルセラム&デラマス。テーマはモダンオペラで、曲は私の大好きなサラ・ブライトマンの「Fly」、「So Many Things」、そして映画「フィフス・エレメント」。曲の繋ぎ方が、いかにもぶった切ってくっつけました風で、私はそういうのはあまり好きでは無いんですが、ムードが凄く良く出る二人で、演技は素晴らしかったです。しみじみと、「ああ、やっぱりフランスのスケーターって味があっていいなぁ」と思いました。

 それから、今現在の日本アイスダンス界を背負って立つお二人、渡辺心さんと木戸章之さん。正直なところ、前日にODの映像を見て、あまりの上達ぶりに唖然としたお二人です。去年のOD課題は私はあまり好きではなくて、逆に今年のものは好きだ、ということもあるとは思いますが、一年前は「どうしてくれよう、この二人」とかなり本気で思っていました。スピードも出てきて、二人同時にステップが踏める、踊れる、本当に上手くなったと、ある意味感激していました。FDはフィギュアではお馴染みのメロディ「ジプシーダンス」で、テンポも歯切れも良く表現力もあり、何であんなに点が出ないんだと地団駄を踏みました。

 第一グループの最後は、イギリスのハンフリーズ&バラノフのご夫婦。トーヴィル&ディーン以降名のあるアイスダンサーが出ないイギリス、彼らだけでなく、トーヴィル&ディーン以外のイギリス人ダンサーを見るのも初めてでした。「ブラスト・フロム・ザ・パスト」ウォームアップ中にも何度か見ましたが、この二人はリフトがダイナミックですね。この二人と、すぐ下の順位になったアーブデルセラム&デラマスとはかなり実力に開きがある感じでした。本当に、テンポよく次々とリフトを決めていく。見ていて面白かったです。

 第二グループのウォームアップ中は、演技中に写真を撮っている余裕は無いだろうと、気合を入れて写真を撮っていました。といっても私は、ポケットカメラ(フラッシュは使ってません、もちろん)を使っているだけなので、本当に自己満足だけのもの。現像してみましたが、けっこう間抜けな仕上がりですもの。第一グループの時にも思いましたが、アイスダンサーの方々は、例え最下位レベルのカップルであっても、本当に滑りがスムーズで速いですね。シングルだと、下のほうの選手は滑っているだけでタラタラして見えるんですが。そして、このレベルになるともう、皆さん本当に滑らかで、カメラで追いきれないほど速い(私が下手だからなんですけど)。

 最初はデンコワ&スタヴィスキーから。彼らの演技は長野のものしか観たことがなく、予想していたよりずっと順位が高かったので、すごく期待して待っていました。最初、曲が鳴り始めてから、リンクに何か落ちているということでストップがかかりましたが、ちゃんと集中しなおしてきっちり滑ったのは見事でした。テーマは「輪廻転生」。黒地にオレンジと黄色で月と太陽を描いた奇抜な衣装、かなり独創的な振り付けで、見ていて面白かったです。何が目立つ、ということではないんですが、ドラマチック系でもフットワーク系でもない、珍しいカップルですね。

 そして第二滑走は、待ちに待ったドロビアツコ&ヴァナガス。「Quelques Cris」、スケートアメリカの放送を観て、一目で「二人の最高傑作だ」と思ったプログラムです。二人の持ち味は、リフトに代表される上半身の美しさ、情熱的で大胆な表現、色っぽさ、動きの大きさと回転の鋭さの両立などだと思っていますが、すべてが遺憾なく発揮されています。五十嵐さんには「終盤のステップが少ない」と言われ、田村明子さんには「ヴォーカルが邪魔」と言われ、評価は今ひとつですが、私は大好きです。ほかの誰にも出せない、気品に溢れた妖艶さがあって、曲調、そしてタイトルに相応しい、噎び泣くような鋭い悲しみがよく出ていました。スケートアメリカの時は、まだ激しい振り付けがこなれていない、端々が粗い印象を受けましたが、そこも綺麗に仕上げてあって、思わず身を乗り出して観てしまいました。そうこうするうちに涙は出てくるし、本当に幸せでした。まだマリナたちのフリーも観てないのに、その時はこれ以上の幸せは無いと信じて疑わなかったおめでたい私(苦笑)。花束を抱えてフェンスのところへ走っていったら、思いがけずバナさんにハグしてもらえました。そこで、頭はすっかりパニック。「今のは何だった?!」という感じで、本当はずっと、もし直に花を渡せる機会があったらこれだけは言おうと思っていたメッセージがあったんですが、そんなことは吹っ飛んでしまいました。熊本に出かける前は「これは、大きなタマネギの下に行く心境だな」「遠距離恋愛の恋人に会いに行くみたいだな」と思ってましたが、この二日間の私は、まさしくそんなだったと思います。ただリタさんとバナさんが、マリナとグェンがそこに居るだけで至福、何も言えずにただ見ていたい、そんな感じでした。余談ですが、やっぱり近くで見ると、ドーランの量が凄いですね。男性はドーランのみなので、特に。あとは、あれだけ激しい運動をした後なのに汗ひとつかかず、頬も冷たかったのには驚きました。体力には自信があるとは言ってましたけど、バナさん。。。

 続いて予想外に苦戦のグルシナ&ゴンチャロフ。曲は私の好きな、フレディ・マーキュリー&モンセラート・カバリエの「バルセロナ」。夏季五輪のテーマソングです。ODのスパニッシュメドレーに合わせたんでしょうか。綺麗な振り付けですし、情熱的な音楽に合わせたなかなかの演技ではありましたが、デンコワ&スタヴィスキー、後に続いたデュブレイユ&ローゾンと較べると若干アクが乏しい印象でした。結局順位も相応でしたし…残念です。

 デュブレイユ&ローゾンはオペラの「蝶々夫人」。デュブレイユ、着物のようで着物でない不可思議な衣装を着ていました。GPファイナルでも観た二人ですが、まったく記憶が無いので、今度は覚えて帰ろうと必死でした。衣装同様、曲も「日本のつもりだが、まったく違う」というもので、なんだか中国も入っている感じでしたが、長崎は少し中国っぽい匂いもする町なので、まあいいかとそこは不問。この二人は、以前田村明子さんがスケートカナダのレポートで、昨シーズンのフリー「タイタス」を評して「リフトが多すぎる印象だが、それぞれのリフトがとても印象的」と書いてらしたのを思い出しました。過不足無く、その表現が相応しいカップルです。本当に、印象的なリフトを多用して飽きさせない二人です。

 そして、待ちに待った最終滑走のグェン&マリナ。この二人で最終滑走だなんて、珍しいですね。いつもライバルより早い順番をひいている、特にここ一番で第一滑走をひくことがとても多い二人なので、驚きました。これはラリックトロフィーに続いて6,0を出すための滑走順だと思い、本当にわくわくしていました。冒頭にキング牧師の演説が入るとは聞いていましたが、どのようなもにになるのかまったく予想不可能で、それも楽しみだったんです。曲は「シラノ・ド・ベルジュラック」と「Canone Inverso」、タイトルは「Liberta」。テーマは束縛からの解放です。冒頭はやはりあの有名な一言“I have a dream”から。そして二人は滑り始めました。ひとつめのリフトから、今までにまったくない、二人はおろかどのカップルも見せたことのない形。そして時折リフトに合わせて、キング牧師の言葉が流れます。そのひとつひとつが、とても印象的でした。ヒアリングは苦手なので聞き取れませんでしたが、ニューヨークという言葉もありました。演説の大意は確か、いつの日かニューヨークが平和と平等の街になるように、というようなものだったと記憶しています。もちろんあの事件の随分前には完成していたプログラムですが、不思議な符号です。フランスを背負いつつ、開催国アメリカにも敬意を評する。アメリカの国民は、喜ぶでしょう。でも、今是非世界中の人々に聞いて欲しい言葉でもあります。オリンピックシーズンに、本当に良いものを持ってきてくれました。しかし、中にさしかかったで所でまさかの転倒。五十嵐さん曰くあと五センチ、本人曰くあと一センチのズレだとか。二人の特長である「お互いの距離の近さ」を追求するあまりのアクシデント。既に涙は出ていましたが、種類が変わりかけました。でも、最後のサーキュラーステップ、逆リフトからのフィニッシュのリフトがあまりにも印象的で、やっぱり感動して泣きました。これまでにないダイナミックな逆リフト、そして、高らかに自由を謳いあげる最後のリフト。五十嵐さんの仰る通り、フットワークの見せ場はステップシークエンスしかない、リフトの多いプログラムです。リフトのためのプログラムであることは間違いないでしょう。ただ、リフト以外の場所にも本当に綺麗な滑りやステップシークエンス、スピンなどが入っていて、リフトのためだけというあざとさ下品さはまったく感じませんでした。リフトのひとつひとつがキング牧師のメッセージを象徴している、というような印象を受けます。結果論から言って、ある意味本当に五輪に相応しい、素晴らしいプログラムです。これは間違いなく二人の最高傑作。結果的にもそうなってくれることを祈ってやみません。

 

十二月一日・女子フリー

 この日は女子も大荒れでしたね。クリーンに滑った選手、ゼロだったと記憶しています。最初のマクドナフは、全米選手権の順位表で名前だけ見た覚えがありました。まだ若いのですね。最近の若い選手は、ジャンプもそこそこのものを飛ぶし、体も最初からかなり柔らかいけれど、そのぶん強烈な個性は無いかなという印象を持っています(と言っても私はジュニアの選手はあまりしっかりとはチェックしていないので、偉そうなことはいえませんが)。彼女もそんな感じですので、強い印象は残っていません。

 続いて村主さん。今年のFS「月光」は、滑りやスピンの美しさを強調した素晴らしいプログラムですし、彼女には是非ともソルトレイクに行って欲しいと願っているので、観ていて辛い演技でした。練習中からジャンプの調子が今ひとつで、不安な気持ちで観ていたら、何と得意な筈のルッツを失敗。苦手なループを決めて流れに乗るかとも思ったんですが、結局そのまま崩れてしまいました。高橋香奈子選手、カナダのベルマーレと、似たような状況の演技が続き、一体今日はどうしてしまったのか、本当に不安になりました。

 第二グループは恩田美栄さんから。私は彼女の地元名古屋に近い生まれなので、やはり彼女は応援してしまいます。ジャンプの出来はSPほどではありませんでしたが、彼女の舞台度胸は、このような日には強いですね。ジャンプのミスもありましたが、第一グループの選手に較べればささやかなもので、勢いを感じました。

 続いてニコディノフ。三週間前、スパルカッセンカップの最中にコーチのチェルカスカヤさんを亡くしたと聞きました。彼女自身、昨シーズンからチェルカスカヤコーチのもとで練習してかなりのステップアップを遂げたことで、コーチを信頼もし、慕ってもいたでしょう。辛い状況ながらSP終わってトップの彼女でしたが、FSは佐藤有香さん曰く「跳び焦り」が出て次々にジャンプを失敗してしまいました。スピンなどは、地味ながら独創的なものを取り入れて、きちんと滑れば綺麗な「ジゼル」だと思えるだけに、残念でした。

 ユリア・セバスチェンは、彼女自身調子の良かった00年の世界選手権の演技を観ています。その頃はポニーテールに民族衣装っぽいものを着て、フォークミュージックで滑っていましたが、雰囲気も演技も、随分大人っぽくなったものだと思います。曲は「仮面の男」。今年また、流行っているようですね。ただ、彼女もジャンプはいまひとつ、見せ場は今大会彼女にしか出来ないビールマンスピンですが、イーラやルシンダのものを見慣れてしまうと、どうもほかの選手のビールマンは、ラインが美しく見えません。

 リアシェンコも、ジャンプの調子は悪かったですね。「ピタンドロス」の印象的なピアノ曲に乗って、彼女らしい上半身を綺麗に使ったプログラムでしたが、やはりジャンプが決まらない。元々ジャンプは苦手な選手と言う印象がありますが、せっかくの表現力、もっと観たかったです。

 そして最終滑走はターシャ(本当は、タチアナだとターニャになるんでしょうけど、私は何故かマリニナのことはこう呼んでしまいます)。SP終わって三位、一位だったニコディノフ、二位だったリアシェンコが崩れたことで、優勝の可能性が出てきたと、俄に期待が出てきました。本当は村主さんにこそ優勝して欲しかったのですが、98年のNHK杯優勝をきっかけに活躍してくれたターシャ、日本を好きでいてくれて、毎年来てくれたターシャにも、是非表彰台をと思っていました。曲は「スウィート・ソロウ」、彼女によく似合う、静かなヴァイオリン曲です。ところが、最初のルッツでいきなりの転倒。ぎょっとしましたが、そこからはベテランの意地を見せ、元々綺麗なスケーティングや回転の速いスピン、組み入れ方はシンプルだけどひとつひとつはお手本のように綺麗なジャンプを存分に見せ、ルッツも終盤にコンビネーションで跳んで、三年ぶり二度目の優勝。心臓に悪い一日でしたが、本当に嬉しかったです。後で聞いたら、彼女自身本当に感激していたとのこと。本当に良かった。

 

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