01東京グランプリ・ファイナル――生まれて初めての生観戦でした。個人的な事情で東京に長居出来なかったので(地元に居ないといけなかった)、最終日前夜に東京入り、終わってすぐUターンという慌ただしい日程でした。休みなのに、東京に部屋借りてるのに、何でこんなんなんだ〜とぼやきつつの強行軍。でも楽しかったです。苦労してバイトして稼いだお金で買ったチケットだったので、特に。

そういうものがあるぞと知ったのが、チケット発売開始の前後になるのでしょうか、00年末。駅などにポスターが何枚か貼ってあったのを覚えています。でも当時私はTV観戦だけで満足できる幸せな人だったので、別にその気は起こさなかったんですが…NHK杯のビデオ、正直に言えばアニシナ&ペイゼラの「ベートーヴェンズ・ラストナイト」を観ていて、年が明けてからムラムラと「これは絶対、生で観るべきだ」という気を起こし、相当遅ればせながらチケットを取りました。そんなわけで二階席しか取れなかったのですが、それでもアニシナ&ペイゼラに会える、ブッテルスカヤにも会えるとわくわくしていたんですが…

結論から言うと、私の好きな選手ほど調子の悪い大会でしたね。最愛のアニシナ&ペイゼラは欠場。ブッテルスカヤも体調が悪く、ジャンプのミスが目立って四位。最終日のチケットを取ったのは、最終日、日曜日なら確実に東京に来られたのと、最終日に行けばEXがあるからみんなが見られるな、という理由から。それがあんな具合ですから、まず初日にアニシナ&ペイゼラの欠場を知って泣き、二日目にはブッテルスカヤの四位決定を知って泣き(グランプリファイナルは全員がEXやるんですが、あれって表彰台に上がらなければ出られないものだと勝手に思い込んでいたので)、テレビで観ていたぶんは本当に心臓に悪かったです。ドロビアツコ&ヴァナガスも危うく四位になるとこだったし、ベレズナヤ&シハルリドゼも二日目終わって二位だったし…

それでも代々木国立競技場へはすごくわくわくしながら行きました。行きにお花を買って、入り口でパンフレットとフィギュア関連の本を買って、嬉々として席に着いたら、リンクでは丁度、女子の選手たちがEXの練習をしていました。確か、クワン、スルツカヤ、ヒューズ、マリニナだったと思います。みんな黒のボディスーツみたいなのを着ていて、「そうか、練習ってああいう格好でするんだ」と無知な感心をしていたら、エッジの音が聞こえました。シャアッという鋭く澄んだ音。ああ、これ生なんだ、と感動したものです。

まずは男子シングルのファイナル。正直言ってゲイブルとジャネットの演技はあまり覚えていないんです。一番古い記憶は(笑)ウォーミングアップの時。プルシェンコが、確かトリプルアクセルの練習をしていて、何度かリンクの同じ位置で飛んでいたんですよ。そしたら、サヴォイがそのトレースをなぞっていって同じような位置で自分もジャンプをするんです。トリプルアクセルではなかったと思うんですが、当時まだジャンプの種類が見分けられなかったので…「君の相手はクリムキンだろーが!」と一人でつっこんでいました。

そのサヴォイですが、面白みはまだ無いけど、安定感のあるスケーターですよね。とりあえずミスが無いのは良いことです。でも、何と言うか、強烈な個性が無い。もう一癖あっても良いと思うのです。ファイナル2は、彼の勝ちでいいと思います。でも私はクリムキンの「ペトリョーシカ」の方が好きでした。最初に鶏の鳴き声から始まるんですよね。衣装もド派手だし、「え?何この格好は??コケッコッコーって、これから何が始まるの??」という感じ。蛍光オレンジと紫のピエロ衣装は、単体で見ると悪趣味なんですが、あの道化師然とした振り付けと可愛らしい音楽、クリムキンの独特な動きで見ると、本当に似合っていました。こんなもんです、好みって。

スーパーファイナル…これもちょっとした転機だったんです。私は以前は来日回数の多いプルシェンコを何となく応援していたのですが、この日以降、心の天秤が徐々にヤグディンに向いて傾き、世界選手権前にはすっかりヤグディンファンに化けていたという話がありまして…本当に、凄かったですよ!先行はプルシェンコ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」。これはNHK杯で観たことのあるプログラムでしたが、世界選手権の時よりこの時のほうが気迫があったんじゃないでしょうか。本当に、プルシェンコの気迫が会場全体を圧している感じでしたよ。ジャンプもNHK杯では四回転、四・三・二のコンボ、世界選手権では四・三・二とトリプルルッツでしたが、このときは四・三と四・三・二と、四回転をふたつともコンビネーションで飛んでましたし、とにかく攻めて、攻めている印象でした。対するヤグディンの「グラディエーター」はこれが初見。重厚で深い、ドラマチックな曲と演技です。最初の四・三を綺麗に入れたものの、次の四回転トゥで片手をつくミスがあり、「あ!」と思ったのですが、その「あ!」はステップの激しさに掻き消されて最後まで残りませんでした。どっちが勝つのか見当もつかず、爆発しそうな胸を抱えて画面に見入っているのに、点数がなかなかでない(テレビを見ていると、ヤグディンが笑っているシーンがありますが、このときのことでした)、本当にじりじりしたものです。結果はプレゼンテーションが同点、テクニカルメリットで差がついてプルシェンコの勝ちでした。でもこれは、NHKの森中アナも言っていたように、日本では最初で最後になるかもしれない巨頭対決。キス&クライで隣り合って座っている二人も、何だか両雄並び立つのか立たぬのかといった感じで素敵でした。この対決の場面に居合わせたことを幸せに思います。

続いてペアのファイナル。まずはペトロワ&ティホノフとアビトボル&ベルナディスのファイナル1。アビトボル&ベルナディスはお気に入りのペアなので、何としても最下位は避けて欲しい、その一心で観ていました。結果的にどちらもあまりいい滑りではありませんでしたね。ペトロワ&ティホノフが「四季」(でしたよね?!)、アビトボル&ベルナディスが「天使と悪魔」。どちらも好きなプログラムなので、出来さえ良ければ見ごたえがあったと思うだけに、残念。

ファイナル2は、ザゴルスカ&シュデクの「新世界」対申雪&趙宏博の「オリンポスの山」。ザゴルスカ&シュデクも悪くなかったんですが、お馴染みの曲のインパクトに比して、少し小さい印象だったかなと思います。一方の申雪&趙宏博は、初日のSPで「何でこの演技で三位にされなきゃいけないの?!」と憤っていたこともあり、溜飲が下がるような快心の演技。スロージャンプといい、ツイストリフトといい、この組は本当に投げ技系がダイナミックで大好きです。そしてこれ、実は昨シーズンのプログラムではないんですよね。二人は99−00シーズンと00−01シーズン、同じフリー「春の精」を使いましたから、素直に遡ればその前の「ムーラン」に戻るはずなんですが、長野オリンピックのシーズンのものまで戻しています。改めてビデオで見直すと、二人の進歩ぶり、特に全体の流れに目覚しい進歩があることに驚かされます。何しろ長野の頃は、ツイストを高く上げすぎて曲に戻れなくなるという、すごいミスの仕方をしていましたから、二人は(苦笑)。そういえばこのとき、隣席に中国人らしき家族連れ(というよりはむしろ一族郎党連れと言ったほうが正しいような大人数でしたが)がいて、彼女たちに熱狂的な応援をしていました。その時ふと、日本人選手が出場できなかったのを寂しく思いましたね。

スーパーファイナルは、ベレズナヤ&シハルリドゼの「感傷的なワルツ」とサーレ&ペルティエの「ある愛の詩」。えーと、私はサーレ&ペルティエはいまいち好きになれないんですが、この「ある愛の詩」はとても素敵なプログラムだと思っています。曲がいいし、ロマンチックで清潔感がありますよね。ローリー・ニコルって凄いコリオグラファーだよな〜としきりに感心してみたり、でもやっぱり、それを滑れるこの二人って、悔しいけどすっごく上手いんだわ、と思ったり。けっこう複雑な心境です。ベレズナヤ&シハルリドゼは文句無しに大好きなペア。滑りも、ジャンプの着氷もすごく柔らかいし、姿勢が綺麗でユニゾンが完璧(いや、サーレ&ペルティエもユニゾンは凄いですけど)。デュオスパイラルが特に好きなんです。でもこのときは、何だか全体に勢いがありませんでしたね。サーレ&ペルティエはサイドバイサイドジャンプの転倒があり、遠目にもミスをしたのが明らかでした。逆にベレズナヤたちは、ペアスピンやリフトでミスがあったのですが、これは遠目にはわかりませんでした。とはいえ、勢いというか、迫力の差は伝わるものですね。「多分、負けたな」と思いながら、でも祈りながら得点を待って、予想通りの結果が出ました。

EXに選手全員が参加すると知ったのは会場入りしてからです。ああブッテルスカヤに会えると一安心。でもあまり数が多いと、かえって覚えていないんでしょうか?特に前半。マリニナのEX「レット・ミー・フォール」はとても好きなプログラムなんです。繊細で儚げ、彼女のシャープなスタイルによく似合うと思っているんですが、練習の時の演技しか記憶にありません(泣)。あと、ゲイブルの「アメリカン・パイ」を曲だけ覚えているとか。ヴィンクラ−&ローゼの「タンゴ・アルゼンチーノ」は覚えています。これは好きなプログラムですし、演出やら振付けやら、わりと印象的なので。

そしてその次、ブッテルスカヤです。NHK杯の時と同じ「ポゼッション」を見せてくれるのかと思いましたが、SP「セーヌ・ダムール」でした。よほど体調が悪く、滑りなれたものを選んだのか、はたまた悔しかったのか、理由はわかりませんが、とりあえず転倒も無く、本当に本当に美しい演技でした。スピンの美しさ、手の動き、全身のラインがとにかく綺麗で、観られて本当に良かったと思います。サラ・ヒューズの「フォッシー」は凝った振り付けの素敵なプログラムですが、欲を言うともうちょっとスピードが欲しい。彼女は何を滑ってもそうですが、スローなんですよね。あの位の年の女の子は、彼女みたいに大人っぽくするよりタラ・リピンスキーくらいに、子供っぽくても勢いよくやるほうが好きです。前半最後はドロビアツコ&ヴァナガスの「アリアドネの糸」。最初に波の音がした瞬間から、もう作品世界の中に閉じ込められてしまいました。相変わらず色っぽい。衣装といい、振り付けといい、曲といい、緩やかに緩やかに、じっくり見せるプログラムだったと思います。

後半はベレズナヤ&シハルリドゼの「スムーズ」から。この二人には意外な線ですよね。カジュアルな感じの衣装で、エレーナもパンツだし、曲はラテン。振り付けも、相変わらず柔らかさを駆使しながら、それよりもラテン調の雰囲気作りに重点をおいている感じもしますし。でもこれも好きなんです。それからクワン、ロバチェワ&アベルブフと続いて、ヤグディン。「グラディエーター」のEX版です。普通このテのものは飽きてしまうというか、どうせ観るならフリーの方がいいや、という気分になってしまう場合が殆どなんですが、これだけは別格。本当に、良いプログラムです。一日に二回もあれを観たら、ファンにならなきゃ嘘でしょう、と後々言い訳をしたりしました。

サーレ&ペルティエの後にスルツカヤ。演技内容はいつものダブルビールマンスピンをハイライトにしたものだったと思うのですが、テレビにも映ったとおり、彼女はファンから一番大きなサイズのテディベアを貰ってましたよね。腕一杯に抱えた花束をどうしようと右往左往して、場内アナウンスの女性に呼ばれたリンクガールたちがそれを受け取ってくれたら、もうクマさんを抱えてダンス、ダンス!可愛かったですね。それからフーザル=ポリ&マルガリオ。最初は素直に観られなかったんです。「グェンとマリナが来ていたら、貴方たちは二位だったんだから、絶対」という気持ちがどうしてもあって。でも、この二人も素晴らしいアイスダンサーですよね。「ザ・マスク」、いつの間にか笑いながら手を叩いて見ていました。最後はプルシェンコの「パサディナ」、これもNHK杯で観たプログラムで、後から考えればこれが最後の披露だったと思うんですが、NHK杯よりエキサイトしてましたね、彼は。やはりヤグディンに勝つと嬉しいのでしょう。そしてお客さんも彼に一番盛り上がっていたようで、なかなか返してもらえずに、何度もジャンプを飛んでいました。

フィナーレで印象に残ったのは、三階席目掛けてカラーボールを投げていたヴァナガス氏の姿。リンクサイドの観客相手に忙しい選手が多い中、そんな姿にとても好感を持ったのですが、それよりもよく考えてみたら、物凄い腕力ですよね、三階までって…特にアイスダンサーは襟のつまったかっちりしたラインの衣装を着ることが多いので、中々体型がわかりませんが、やっぱり皆さん、鍛えてらっしゃるようです(グェンも、「エスメラルダ」の衣装で見ると、すっごくいいガタイしてますよね)。

何だかそこだけ現実から切り離されたような半日が終わり、そのまま実家へ帰ったわけですが、新幹線の中で落ち着いて手元を見てみたら、マニキュアはボロボロ、長めだった爪はバキバキ。私は一体、何をしていたんでしょう、掌の感覚も何だかおかしいし、と苦笑したのでした。

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